大丸松坂屋画廊で「もの派」関根伸夫展、より開かれた領域へ

【銀座新聞ニュース=2017年10月12日】大手流通グループのJ.フロントリテイリング(中央区八重洲2-1-1)傘下の大丸松坂屋百貨店(江東区木場2-18-11)が運営するアートギャラリー「Artglorieux GALLERY OF TOKYO」(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3572-8886)は10月12日から25日まで、関根伸夫さんによる新作展「空相-皮膚」を開く。

大丸松坂屋百貨店のアートギャラリー「アールグロリューギャラリーオブトーキョー(Artglorieux GALLERY OF TOKYO)」で10月12日から25日まで開かれる関根伸夫さんの新作展「空相-皮膚」に出品される「空相-皮膚 52」(2016年、アクリル、キャンバス、木枠、合板)。

「アールグロリューギャラリーオブトーキョー(Artglorieux GALLERY OF TOKYO)」は「銀座シックス(GINZA SIX)」の中核企業の大丸松坂屋百貨店が直営する画廊で、今回は現代美術家、彫刻家で、多摩美術大学客員教授、アメリカ・カリフォルニア州で制作している関根伸夫(せきね・のぶお)さんが制作する新作「空相-皮膚」シリーズを展示する。

関根伸夫さんは「もの派」ムーブメントの原点として位置づけられる「位相-大地」(1968年)制作以降、さまざまな絵画、彫刻作品を生み出し、ロサンゼルスに拠点を移した現在も精力的に制作を続けており、その作品の根底には「位相幾何学の空間認識」が存在する。

1978年に発表された「位相絵画」シリーズでは絵画を「厚みを持たない連続した皮膜」として捉え直し、そのすべてが連続する空間的なものであり、個々の絵画はその断面、すなわち一つの相に過ぎないことを提示している。

関根伸夫さんは「『空相』というタイトルはフェーズ(Phase)が開かれているとの意味で、相が無限定で広く開かれ、まったく自由で束縛がないこと」としている。

同じく出品される「空相-皮膚 85」(2016年、アクリル、キャンバス、木枠、合板)。

関根伸夫さんによると、「空相-皮膚」の制作については、キャンバスを用いることで、より作家によるコントロールから離れ、作家の行為と素材の動きがより近いものになり、「空相-皮膚」は空間認識を視覚から体感、そして精神的な領域にまで展開するだけでなく、絵画そのものがより柔軟性と伸縮性を帯びた「相」となり、より開かれた領域へと鑑賞者を導くという。

ニコニコ大百科によると、「位相幾何学(トポロジー=topology)」は幾何学の中でも新しい分野であり、「やわらかい幾何学」とも呼ばれる。最大の特徴は図形の扱いの「やわらかさ」であり、言い換えれば図形の扱いの抽象性であるといえる。

トポロジーにおいては連続的に変形が可能な図形はすべて同一視され、穴を開けたり、千切ったりする操作なしに変形できる図形同士は同じものとみなす。

例えば、トポロジーの考え方ではドーナツの形状(トーラス)とコーヒーカップの形状は同一であるとされる。一方、球はどのように変形しても穴を開ける操作なしにトーラスになることはできない。つまり、連続的な変形が不可能なため、球とトーラスは同一ではない。ゆえに、トポロジーとはこのような「やわらかい」図形の共通する性質や特性を研究する数学分野とされる。

トポロジーの考え方が応用されている物の中でもっとも日常的に目にするものは、電車などの路線図が挙げられる。路線図においては「駅間の距離」や「実際の線路のカーブ」は無視(連続的に変形)されており、地図上の路線配置をトポロジーの考えに基いてやわらかく変形したものといえる。

ウイキペディアによると、位相幾何学は、空間、次元、変換といった概念の研究を通じて、幾何学および集合論から生じた分野で、17世紀に「位置の幾何」(ゲオメトリア・シタス=geometria situs)および「位置の解析」(アナリシス・シタス=analysis situs)を見越したゴットフリート・ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz、1646-1716)にまでさかのぼる。

レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler、1707-1783)の「ケーニヒスベルクの七つの橋」の問題および多面体公式がこの分野における最初の定理となっている。「トポロジー」は19世紀にヨハン・ベネディクト・リスティング(Johann Benedict Listing、1808-1882)によって導入されたが、位相空間の概念が起こるのは20世紀で、20世紀中ごろには、位相幾何学は数学の著名な一分野となっていた。

関根伸夫さんは1942年埼玉県さいたま市(旧大宮市)生まれ、1966年に多摩美術大学油絵科を卒業、1968年に多摩美術大学大学院油絵研究科を修了、同年に神戸須磨離宮公園現代日本野外彫刻展で「位相-大地」を発表し、「もの派」誕生のきっかけとなり、同年に「長岡現代美術館賞展」で大賞を受賞、1970年にベネチア・ビエンナーレで「空相」を発表し、これ以後2年間、ヨーロッパで制作する。

帰国後の1973年に「環境美術研究所」を設立、現在に至るまで東京都庁舎シティーホール前の「水の神殿」をはじめ、さまざまなモニュメントやプロジェクトを実現し、ランドスケープ、モニュメント、位相絵画を制作している。現在、アメリカ・ロザンゼルスに拠点を移し、制作している。

開場時間は10時30分から20時30分(最終日は18時)まで。入場は無料。