隠し味を盛り込んだ荒唐無稽なスパイ映画「新キングスマン」(229)

【ケイシーの映画冗報=2018年1月11日】新年明けまして、おめでとうごさいます。本年も楽しく映画をご紹介できるよう、あいつとめます。今年最初の1本は「キングスマン:ゴールデン・サークル」です。

現在、一般公開中の「キングスマン:ゴールデン・サークル」((C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation)。

ロンドンの高級テーラー“キングスマン”。その真の姿は、影ながら世界の平和を守る秘密組織でした。前作で大量殺戮(さつりく)をもくろんだ大富豪を倒し、世界を壊滅の危機から救った“キングスマン”の若きエージェントであるエグジー(演じるのはタロン・エガートン=Taron Egerton)は、映画の冒頭から敵に襲われますが、なんとかこれを撃退します。

しかし、これは、悪の組織“ゴールデン・サークル”のリーダーである女性麻薬王ポピー(演じるのはジュリアン・ムーア=Julianne Moore)による、“キングスマン”殲滅(せんめつ)を狙った巨大な罠でした。ミサイル攻撃によって、大切な仲間や友人を失ったエグジーは、アメリカに存在するという秘密組織“ステイツマン”に身を寄せます。

“ステイツマン”のトップであるシャンパン(演じるのはジェフ・ブリッジス=Jeff Bridges)は、生き残った“キングスマン”のメンバーへの助力を約束し、そこで、エグジーはもうひとつ、驚愕(きょうがく)の事実に直面します。

制作費は1億400万ドル(約104億円)で、興行収入が世界で3億9552万ドル(約395億5200万円)。

彼を“キングスマン”に引きこんだ大先輩で恩人ですが、前回の作戦で凶弾に倒れたはずのハリー(演じるのはコリン・ファース=Colin Firth)と再会するのです。ところが、銃撃の影響でトップ・エージェントであったころの記憶をハリーは失っていました。とても戦力になるとは思えませんでしたが、エグジーはハリーの現役復帰を信じつつ、“ゴールデン・サークル”との戦いに挑んでいくのです。

監督(共同で脚本も)のマシュー・ヴォーン(Matthew Vaughn)は、前作「キングスマン」や、女子小学生(!?)が凄腕の暗殺者として活躍する「キック・アス」(Kick-Ass、2010年)といった作品で知られています。これらの作品はCGや特殊撮影を駆使したケレン味たっぷりのアクションが話題となっていますが、そのじつ、現実世界のアイロニーやユーモアもちりばめられています。

「キック・アス」では、極悪非道なマフィアのボスが息子を溺愛していたり、妻を殺された復讐とはいえ、実の娘を殺戮マシーンに育ててしまう元警官の父親といった、どこかズレ(まくっている?)ている親子関係が描かれていました。前作の「キングスマン」で悪役は「増えすぎた人類が地球に害悪である」という発想から、インターネットを使って殺人衝動電波を世界中に伝播させるIT長者でした。

本作でエグジーらと対決する“ゴールデン・サークル”の謀略は、「薬物汚染された人間を人質として麻薬の合法化」を要求するというものです。一見荒唐無稽ですが、じつは世界的に「麻薬の個人使用については犯罪としない」という流れがあります。

アメリカでも州によっては大麻が「薬」として合法化されていますし、処方される鎮痛剤としての効き目は良好ですが、薬物乱用の主因のひとつというオピオイド系鎮痛剤が深刻な社会問題にもなっています。つまり、薬効が悪いのではなく、絶大な効き目であるからこそ、犯罪集団の資金源としての麻薬ビジネスが成立してしまっているという事実があるわけです。

劇中には、“ゴールデン・サークル”の世界的悪事を合法的に利用しようとするキャラクターが登場しますが、ある意味では号風敵に強権をあやつる彼らこそが、じつは犯罪者よりもタチが悪いのでは?とも思わせます。

こうした対比はストーリーだけではありません。エグジーたち“キングスマン”が英国紳士然として仕立ての良いスーツに武器が兵器を仕込んだ傘やアタッシュ・ケースですが、“ステイツマン”はカウボーイブーツにテンガロン・ハット姿で、旧式のリボルバーや投げ縄といったカウボーイの必需品を駆使しています。言葉にはあまり自信がないのですが、セリフも英国英語とアメリカ英語でコントラストを描いているように感じました。

悪役である麻薬女王ポピーも、その倒錯ぶりは過激というより痛快ですらあります。1950年代風のウェイトレス姿に満面の笑みを浮かべながら部下を粛清し、強烈な料理(ぜひ劇場で)をふるまうポピーは、監督によれば「間違ったアメリカのスウィートハート」ということで、それを2014年のアカデミー主演女優賞のムーアが魅力的な演技で魅せるのですから、かなりのインパクトです。

ケレン味の効いた荒唐無稽なスパイアクション映画(もちろん、この要素もあります)に巧みに盛り込まれた隠し味をぜひスクリーンで楽しんでください。次回も未定とさせていただきます(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません。なお、ケイシーさんは現在、自宅療養中で、こんごの予定は未定になっています)。

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