キャプチャー俳優が存在感を示した「巨獣大乱闘」(239)

【ケイシーの映画冗報=2018年5月31日】現在でも新作が準備されているSF映画「ターミネーター」(The Terminator、1984年)は、監督・脚本のジェームズ・キャメロン(James Cameron)が「炎の中から迫るガイコツのようなロボット」の悪夢を見たことをふくらませて、映画として仕上げていったそうです。

現在、一般公開中の「ランペイジ 巨獣大乱闘」((C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.)。制作費が1億2000万ドル(約120億円)で、興行収入が4億1270万ドル(412億7000万円)だった。1986年にアメリカで発売されたゲーム「ランペイジ(RAMPAGE)」が原作で、2009年にワーナー・ブラザース映画がミッドウェイゲームズから「ランペイジ」の映画化権を3300万ドル(約33億円)で購入した。

本作「ランペイジ 巨獣大乱闘」(Rampage、2018年)では、大企業エナジン社の所有する宇宙ステーションで事故が発生、遺伝子操作の研究によって生み出されたサンプルが地上に落下してきます。

サンディエゴの動物保護区に暮らすゴリラの“ジョージ”は白い体毛の珍しい存在でしたが、群れのボスとして君臨する一方で、霊長類学者のデイビス(演じるのはドウェイン・ジョンソン=Dwayne Johnson)と手話でコミニュケーションをとる知性ももっていました。

地球に落ちてきた遺伝子サンプルに触れた“ジョージ”は灰色グマも一撃で倒すほど狂暴化し、体躯はみるみる巨大化しはじめるのです。変貌していく“ジョージ”に困惑するデイビスに、遺伝子工学のケイト博士(演じるのはナオミ・ハリス=Naomie Harris)は、自分がエナジン社でおこなっていた研究が原因であると告げます。

異変は“ジョージ”だけではありませんでした。ワイオミング州では巨大化したオオカミ“ラルフ”、フロリダ州には変異したクロコダイルの“リジー”が出現します。
3頭の巨獣は、シカゴの市街地へなだれ込み、軍隊を相手に大暴れします。荒れ狂う“ジョージ”をなんとかしようと、デイビスとケイト博士は、解毒剤があるエナジン本社へと向かうのでした。

「炎の中に立つガイコツ型ロボット」に通ずるように「巨大な怪物が、破壊のかぎりを尽くす」というシンプルなゲーム「ランペイジ(Rampage =暴れ回る)」を原作とする本作は、アイディアのインパクトに対して、長編映画として成立させるのに不可欠なストーリーが希薄でした。

監督のブラッド・ペイトン(Brad Peyton )はこれをかえってチャンスだととらえたようです。
「でも物語性はとても少ない。その事実が僕ら自身の映画をつくり、僕ら自身の巨獣を創作し、僕ら自身のテーマを掘り下げていくことを可能にしてくれた」(パンフレットより)

主演で制作総指揮も兼ねたドウェイン・ ジョンソンもおなじような認識だったそうです。「ビデオゲームはとてもシンプルなストーリーだ。ただ破壊があって、モンスターが出てくる」(「映画秘宝」2018年7月号)

そう語るジョンソンはアメリカでもトップ・クラスのプロレスラーとなりながら、鍛え上げた195センチの巨躯とたしかな表現力で、ハリウッドでも評価を上げてきている人物で、初期の主演作「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown 、2003年)では、肉体派スターの先達アーノルド・シュワルツェネッガー(Arnold Schwarzenegger)から、「肉体派の継承」とも思える共演をしています。

そんなジョンソンと共演するCGキャラクターの“ジョージ”ですが、その存在を豊かなものとするため、動きの原型となる、パフォーマンス・キャプチャー俳優がスタジオで演じています。“ジョージ”を演じたジェイソン・ライルズ(Jason Liles)との撮影について、主演のジョンソンはこう述べています。

「ひとたびジェイソンがセットに入ると、まるで本物の動物なんだ。とてもパワフルで圧倒された」(パンフレットより)

すこし前に本稿でとりあげた本年のアカデミー作品賞、監督賞など4部門を受けた「シェイプ・オブ・ウォーター」(The Shape of Water、2017年)が、「モンスター映画」ということで、「アカデミー賞には不利」という下馬評を覆しての栄誉でしたが、それに匹敵するほど、重要な変化が今回のアカデミー賞であらわれました。

毎回、アカデミー賞では、最近の1年間に亡くなった映画人を追悼するフィルムを流すのですが、そのなかに日本人の中島春雄(なかじま・はるお、1929-2017)がとりあげられたのです。

ゴジラのスーツアクターを務め、世界中でミスター・ゴジラと呼ばれた中島春雄(画像はウイキペディアより)。

“顔出し”のお仕事はさほどない御方でしたが、その活躍は誰もが見ています。1954年の「ゴジラ」から12作品でゴジラを演じたのが中島春雄だったのです。ハリウッドの映画人に強烈な印象を残した“表現者”として足跡が評価されたのでしょう。

映像表現としてのCGキャラクターの根幹には、実演者としての俳優という存在は重要なようです。将来は“CGキャラクター”や“パフォーマンス・キャプチャー俳優”を顕彰するアカデミー賞が見られるかもしれません。次回は「デッドプール2」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:中島春雄は1929年山形県酒田市生まれ、1953年に「太平洋の鷲」で攻撃機航空兵役で、初めて身体に火をつけてのファイヤースタントを演じ(当時は「吹き替え」と呼ばれた)、この時期、数々の吹き替えをこなし、これをきっかけに1954年の「ゴジラ」から「ゴジラの逆襲」(1955年)、「キングコング対ゴジラ」(1962年)、「モスラ対ゴジラ」(1964年)、「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964年)。

「怪獣大戦争」(1965年)、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」(1966年)、「怪獣島の決戦 ゴジラの息子」(1967年)、「怪獣総進撃」(1968年)、「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」(1969年)、「ゴジラ対ヘドラ」(1971年)、「地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン」(1972年)まで12作のゴジラのスーツアクター(自称「ぬいぐるみ役者」)を務めた。

世界的に「ミスター・ゴジラ」と呼ばれ、アメリカのファンイベントなどで講演し、それらの講演料で家を建てたといわれている。2011年にアメリカ・ロサンゼルスより市民栄誉賞、2012年11月には酒田市より「第1回酒田ふるさと栄誉賞」を受賞した。

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