万人受けしない主人公が声優まで務める「デップー2」(240)

【ケイシーの映画冗報=2018年6月14日】特殊部隊の元隊員であったウェイドは、違法な人体実験によって、驚異的な治癒能力と身体能力を持った赤い全身スーツ姿の“デッドプール(死亡予告=殺し屋)”として蘇り、自身を改造した組織への復讐を果たします。

現在、公開中の「デッドプール2」((C)2018 Twentieth Century Fox Film Corporation.All Rights Reserved)。制作費が1億1000万ドル(約110億円)、興行収入が5億2961万ドル(約529億6100万円)。

その2年後、本作「デッドプール2」(Deadpool 2、2018年)の主人公“デッドプール”(演じるのはライアン・レイノルズ=Ryan Reynolds)は、世界各地の闇組織と戦いながら、恋人との充実した日々を過ごしていましたが、彼女の死によって、大いなる喪失を課せられます。

そのころ、サイボーグ兵士“ケーブル”(演じるのはジョシュ・ブローリン=Josh Brolin)が、ミュータントとしてスーパー・パワーを持つ少年を抹殺するため未来からあらわれます。善行を決意した“デッドプール”は、“ケーブル”から少年を守ろうと決意し、類まれな強運を持つという美女“ドミノ”(演じるのはザジー・ビーツ=Zazie Beetz)らと“最強鬼ヤバチーム”の「Xフォース」を結成し、“ケーブル”との決戦に挑みますが、事態は思わぬ展開となっていくのでした。

2016年に公開された「デッドプール」(Deadpool)は、世界興収が7億8000万ドル(約780億円)という、視聴者の年齢制限がもうけられたR指定の作品でありながら、異例の大ヒットとなりました。

2本の日本刀と2丁拳銃を使い、敵は斬り刻むか撃ち殺し、マスクの下では皮肉と暴言に加えて他作品へのコメントを放ち、時には観客に向かって話しかけるという(いわゆる“第四の壁”)もアッサリとクリアーしてしまう“デッドプール”は、まさにヒーローにあるまじき“禁じ手”を駆使するキャラクターで、キャッチ・コピーとなっている“無責任ヒーロー”という表現そのままで、品行方正が前提なはずのアメコミヒーローのなかでも異質な存在です。

“デッドプール”を演じるだけでなく、製作(共同)と脚本(共同)と作品全体に関わっているライアン・レイノルズは、「デッドプール観」をこう述べています。

「デッドプールは1人の子どものために命を懸ける人だが、『地球を救わなければならない!』と宣言するような人ではない。(中略)スーパーヒーローの世界のカウンターカルチャーだから面白い。僕はそのせいで彼が大好きなんだ」(「映画秘宝」2018年7月号)

レイノルズをはじめ、スタッフとキャストの多くが前作からそのままシフトしていますが、監督は前作の視覚効果出身のティム・ミラー(Tim Miller)から、スタントマンで、アクション演出に定評のあるデヴィッド・リーチ(David Leitch)となっています。

リーチ監督は、「あれだけヒットしたシリーズのDNAにも忠実にしなければならないと思う」とプレッシャーを感じたようですが、その一方で「監督をするときには(中略)思いっきりかっ飛ばし、挑戦的にならなければならない」(いずれもパンフレットより)と、決意を述べています。

ここしばらく、本稿には、どちらかというとマイナーなジャンルへの映画愛から生まれた作品が増えています。自分自身もそうした嗜好があるのは否めませんが、これらの作品が高い評価を受けたり、観客の反応もよく、また興行的な成功をおさめているのには、やはり時代をとらえていることも重要なポイントです。

とはいえ、「造りたい者が造りたいモノを造る」というのは、表面的には納得させやすいですが、すべてにおいて正しいとはかぎりません。これまでも造り手の暴走や過度の思い込みなどから、作品が破綻(はたん)してしまったり、興行的な失敗作などの例も少なくありません。

「ひとつのアクションシーンにどのぐらいの予算をかければ、全体の予算内に収められるか、といった問題さ。実際、スタジオには許可されていないものを黙って撮影したりもしたけど、予算内に入っているからなんとか隠せたようなものだ」(前掲誌)と、制作サイドでの苦労をレイノルズは語っています。

製作費1億1000万ドル(約110億円)という、日本では考えられない超大作でありながら、コストとの戦いはかの地でも同様らしく、主演のレイノルズが、予算の関係から「声の出演」として、役の掛け持ちをするなど、“大作らしくないネタ”もありますが、そうした部分も含めて、“デッドプール”は多くの観客に受け入れられ、次回作への期待も高まっています。

「真のファンは、その対照の欠点も含めてファンである」ということを、日本のある小説家が述べていました。万人受けするキャラクターではない“デップー”ですが、次回は「主役ではない」というコメントも出ていますが、“楽しく激しい”存在であることは間違いないでしょう。次回は「オンリー・ザ・ブレイブ」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。