アクションと親子関係にフォーカスした「新アントマン」(246)

【ケイシーの映画冗報=2018年9月6日】本年で90回をむかえた、世界でもっとも大規模な映画のイベントであるアメリカのアカデミー賞において、次回から「人気映画部門」が新設されることになりました。

現在、一般公開中の「アントマン&ワスプ」((C)Marvel Studios 2018)。「マーベル・コミック」の実写映画を、同一の世界観のクロスオーバー作品として扱う「マーベル・シネマティック・ユニバース」シリーズとしては第20作品目となる。

ここ数年、最高峰であるアカデミー作品賞に輝いても、アメリカ本国での「ヒット」の目安である興収1億ドル(約100億円)を記録しておらず、収益と受賞が連動していないということへの対応策だといわれています。

このアカデミー賞の新設に大きな影響を与えたのが、アメリカのコミック・ブランドのマーベルが2008年にスタートさせた「マーベル・シネマティック・ユニバース(Marvel Cinematic Universe、以下MCU)」ではないでしょうか。

今回の本作「アントマン&ワスプ」まで20作をかぞえるシリーズは、アメリカでの興収1億ドルをすべての作品がクリアしているという意味では十分な成功作なのですが、“映画賞”のレースで作品を見ることがありません。

原作がコミックであることや、莫大な制作費(最低でも1億3000万ド=約130億円=で、中には3億ドル=約300億円=オーバーの作品も)から、「大ヒットが義務づけられている」といった意見もありますが、観客は「見たい映画を見ている」はずなので、ヒット作であることはまちがいないのです。

優秀なシステムエンジニアながら前科持ちの泥棒で前妻とは離婚、現在も執行猶予中で自宅に軟禁状態のスコットことアントマン(演じるのはポール・ラッド=Paul Rudd)は、一人娘との面会を楽しむほかには引きこもり状態の単調な生活を送っていました。

前作「アントマン」(Ant-Man、2015年)でスコットにアントマン・スーツを託した天才科学者で、物質の質量を自在に変化させる“ピム粒子”を発見、実用化させた初代アントマンのハンク・ピム博士(演じるのはマイケル・ダグラス=Michael Douglas)は娘のホープ(演じるのはエヴァンジェリン・リリー(Evangeline Lilly)とともに量子の世界に入る“量子トンネル”の研究に没頭していました。

30年前、核ミサイルの爆発を防ぐため、限界を超えて微小化し、量子界に姿を消した妻である初代ワスプを助け出すためで、ときにはホープが2代目ワスプとなって、非合法的な手段で量子トンネルの実用化に必要な物資を調達していましたが、闇の武器ディーラーに非合法活動をかぎつけられ、スーパーパワーを秘めた“ピム粒子”の研究ラボが狙われてしまいます。

さらに、“ピム粒子”の影響で異常な細胞分裂をおこし、実体をなくすことで物質をすり抜ける謎の敵ゴースト(演じるのはハンナ・ジョン=カメン=Hannah John-Kamen)も登場し、“ピム粒子”と量子トンネルをめぐる戦いは、家族を救うというハンクとホープ、自身の生存が“ピム粒子”にかかっているゴースト、金儲けが目的の武器ディーラーの一味。かれらのなかで一人娘との平穏な生活をねがうスコットの活躍は。

前作も自在に体を縮小させるアントマンの軽快かつトリッキーなアクションが楽しめましたが、本作では仲間のアリに乗らなければ飛べないアントマンに対し、ワスプは飛ぶための羽を持ち、さらには物質のサイズを自在に操れるビームも装備し、アリ(アント)とハチ(ワスプ)の対比を表現し、さらに巨大化から縮小化という映像表現も加えています。

前作も監督したペイトン・リード(Peyton Reed)は、「人間を小さくできるなら、車や建物だって小さくできるはずだと考え、それをさらにクレイジーにやってみよう」(「映画秘宝」2018年10月号)という嗜好で本作のアクションシーンは構成されています。

パワードスーツや改造された超人兵士、神様(!?)といったスーパーヒーローがひしめきあうMCUの世界でもアントマンは全長1.5センチという“最小のヒーロー”です。
正体であるスコットも天才(優秀なエンジニアではありますが)でも、大富豪でもなく、失敗しては悔やみ、娘と全力で遊ぶうちに仕事を忘れれしまうといった、ごく一般的な“娘にとって理想のパパ”をめざしている人物です。

じつは、このシリーズは家族、とくに父と娘という関係にフォーカスした物語でもあります。スコットと小学生の娘、おなじ研究者でありながら父子であるというハンクとホープ、そしてゴーストにも養父とも呼べる存在があるなど、単なる派手なアクションではなく、ストーリーの核となる部分もしっかりと確立しています。

アクションと家族、この両者がしっかりとかみ合った本作は、ビジュアルとストーリーを楽しめる作品となっています。次回は「MEG(メグ)ザ・モンスター」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

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