「サメ対人間」作品で「ジョーズ」を超えた「MEG」(247)

【ケイシーの映画冗報=2018年9月20日】地球の最深部といわれるマリアナ海溝の海底(とされている)に到達した人間は現在のところ3人ですが、とうぜん、潜水艇の乗ったままであり、艇外に出たわけでありません。いまでも新種の生き物が発見されている深海は、宇宙以上の未知の世界といえるでしょう。

現在、一般公開中の「MEG ザ・モンスター」((C)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.,GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY,AND APELLES ENTERTAINMENT,INC.)。制作費が1億3000万ドル(約130億円)で、興行収入が9月16日現在で5億529万ドル(約505億2900万円)。

そんな深海に太古の巨大ザメが生き残っていたらというのが本作「MEG ザ・モンスター」(The Meg)です。

沈没した原子力潜水艦の救助活動中、なぞの巨大生物に襲われたレスキュー・ダイバーのジョナス(演じるのはジェイソン・ステイサム=Jason Statham)は、救出できなくなった仲間を見捨てるという経験から世俗を離れ、家族と疎遠になってしまいました。

5年後、海上に置かれたマナ・ワン研究所で、研究者のミンウェイ博士(演じるのはウィンストン・チャオ=Winston Chao)とその娘スーイン(演じるのはリー・ビンビン=Li Bingbing)は、世界最深部であるマリアナ海溝の海底を調査し、未知の空間があることを発見します。

その直後、なぞの生物に襲われた海底調査船が深度1万メートルで行動不能となってしまい、引退したとはいえ、世界最高峰の技量を持つジョナスに声がかかります。

犠牲を払いながら海底調査船を救出したジョナスたちでしたが、事故の原因が5年前の事件を同じだと、ジョナスは確信しました。200万年前に絶滅したはずの巨大なサメ「メガロドン=MEG(メグ)」が現代に存在しているということです。

「すべてのものを喰いつくす」〈メグ〉が中国沿岸の海水浴場をめざしていることを知ったジョナスたちは、「地球で最強の肉食動物」を阻止することができるのか。

スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)監督の出世作「ジョーズ」(Jaws、1975年)が世界的ヒットを飛ばした結果、さまざまな生物が人間を襲う「動物パニック」というジャンルが映画界に生まれました。海ではシャチや大ダコ、陸ではワニやクマ、ほかにも巨大グモや殺人バチ、ゴカイ(!?)も人類に襲いましたが、一番人気はやはりサメで、本作のパンフレットでも、「サメ対人間」を題材とした映画のコラムがあるほどです。

「サメ対人間」の映画すべてを鑑賞しているわけではありませんが、スピルバーグ監督の「ジョーズ」は、このジャンルの先駆者であり、また決定版でもあるといえるでしょう。「動物パニック」の多くが「ジョーズ」の影響下にあり、なかには露骨に「ジョーズ」のシーンやストーリーを連想してしまう作品もすくなくありません。

監督のジョン・タートルトーブ(Jon Turteltaub)も、「『ジョーズ』は映画が持つ潜在的な価値観、重要さ、素晴しさをという点における監督としての視点を変えてくれた作品だ」(パンフレットより)と、その影響を素直に認めています。

その一方では、制作にあたっては「今、現存するサメの巨大版にはしたくなかった。(中略)動きに関してもいろいろリサーチして、メガロドンのすべてをVFXで創造したんだよ」(「映画秘宝」2018年9月号)

こうしてクリエイトされた全長23メートル、20トンの〈メグ〉と対決する主人公ジョナスを演じたジェイソン・ステイサムにとって、撮影はハードだったようです。
「僕らは一日中海にいて、とても寒かった」(パンフレットより)

モデルから映画スターとなったステイサムですが、もともとはダイビング競技の経験者なので、泳ぎは達人クラス、肉体も鍛え上げており、スキューバ・ダイビングの経験も豊富ということなので、レスキュー・ダイバーには、ピッタリのキャスティングです。タートルトーブ監督によれば「ジェイソンは映画スターのあらゆる要素を備え」(パンフレットより)ているということです。

そういえば、すこしまえに本項でとりあげた「ランペイジ 巨獣大乱闘」(Rampage、2018年)でも、巨獣と対峙するのは元プロレスラーのドウェイン・ジョンソン(Dwayne Johnson)で、こちらも見事な体躯です。

巨大な生物と鍛えた肉体は相性がよいのでしょうか。「わけあって絶滅しました」(丸山貴史著)によると「メガロドン」が絶滅した理由は地球全体が寒冷化したことと、主食だったクジラ類が大型化してエサが不足してきたこと(異説あり)だそうですが、本作の〈メグ〉は、サメ映画のマスターピース「ジョーズ」を興行成績で呑みこんだそうです。

9月7日時点で全世界興行収入は4億7353万ドル(約474億円)で、「ジョーズ」の4億7065万ドル(1975年の為替は1ドル=約290円なので、これで算定すると約1365億円)を超えたとのこと(各種報道より)。映画界での生存競争に、本作の〈メグ〉はどうやら勝ち残れたようです。次回は「散り椿」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、「マリアナ海溝(Mariana Trench)」は、北西太平洋のマリアナ諸島に位置する、世界でもっとも深い海溝で、最深部は「チャレンジャー海淵」と呼ばれている。深さについてはいくつかの計測結果があるが、最新の計測では水面下1万911メートルとされ、地球上でもっとも深い海底凹地(海淵)である。これは海面を基準にエベレストをひっくり返しても山頂が底につかないほどの深さで、地球の中心からは6366.4キロメートル地点にある。

マリアナ海溝の測深は、英国のチャレンジャー号探検航海 (1872年から1876年) の海洋調査によって初めて行われた。1875年、このときの測鉛線による測深記録は、8184メートルであった。当時の最深を記録したこの地点は、現在のチャレンジャー海淵であった。

日本によるマリアナ海溝の調査は、20世紀に入って行われ、1925年、日本の測量船「満州号」が重りのついたケーブルをおろして測定する方法(鋼索測深)により水深9814メートルを記録した。

英国海軍の測量船「チャレンジャー8世号」が1951年に測定に成功した最深部分はその名にちなんで「チャレンジャー海淵」と呼ばれ、このとき、チャレンジャーは反響した音波を測定する方法(音響測深)で北緯11度19分、東経142度15分において水深1万0900メートルを記録した。その後、手動計測による誤差を除去したことにより、現在ではより厳密な1万0863メートルという値に修正されている。

1960年1月23日、アメリカ海軍の協力のもとに開発された潜水艇「トリエステ号」がマリアナ海溝深部をめざし、到達した深度については諸説あり、確証が得られていない。スイスの海洋学者、ジャック・ピカール(Jacques Piccard、1922-2008)とアメリカ海軍の中尉だったドナルド・ウォルシュ(Donald Walsh)さんの2人は海溝の底に到達したといい、その時バチスカーフ内部の水深計が示していたのは3万7800フィート (1万1521メートル、後に3万5800フィート=1万0912メートルと修正)だったと主張している。

1962年には調査船スペンサー・ベアード号が水深1万0915メートルを記録した。1984年に日本の調査船「拓洋」が最新式のナローマルチビーム測深機を用いて測定を行い、1万0924メートル(厳密には1万0920メートル±10メートル)という値を得た。1995年5月に日本の無人探査機「かいこう」が水深1万0911メートルを記録した。

2009年5月、アメリカのウッズホール海洋研究所の無人探査機「ネーレウス」が1万0902メートルに到達した。「ネーレウス」は10時間以上チャレンジャー海淵の海底に留まり、深度1万0902メートルを測定していた。

2012年3月26日(チャモロ標準時)、映画監督のジェームズ・キャメロン(James Francis Cameron)は一人乗りの潜水艇「ディープシーチャレンジャー」(全長7メートル、重量約12トン)に搭乗し、約2時間をかけて深さ1万0898メートルへの潜行に成功した。有人でのチャレンジャー海淵への潜行は「トリエステ」以来52年ぶりで、単独での潜行は初となる。

3月26日5時15分頃に降下を開始し、7時52分にチャレンジャー海淵の海底に到達し、降下時間の2時間36分で記録された水深はチャレンジャー海淵に着地した時の1万0898.4メートルだった。キャメロンはおよそ6時間近くを海底付近の調査に費やす予定だったが、わずか2時間34分後に海面への浮上を開始した。海底での滞在を切り上げた理由はマニピュレータアームを制御する油圧配管から油が漏出したことで観測窓からの視界が遮られたからとされている。

12時ころにディープシーチャレンジャーのウェブサイトは90分かけて海面に浮上したと伝え、マイクロソフト社共同創業者だったポール・アレン(Paul Gardner Allen)のツイートによると、浮上までの所要時間はおよそ67分だったとされる。

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