主人公の死生観によりインパクトを強めた「イコライザー2」(249)

【ケイシーの映画冗報=2018年10月18日】かつて、「(主人公)マッコールの再登場に期待するのは筆者ひとりではないでしょう」という一文で締めくくった映画「イコライザー」(The Equalizer、2014年。2014年11月6日に掲載)ですが、個人の妄想におわることなく、監督のアントーワン・フークワ(Antoine Fuqua)と主演のデンゼル・ワシントン(Denzel Washington)のコンビで実現したのが本作「イコライザー2」(The Equalizer2)です。

現在、一般公開中の「イコライザー2」。制作費が6200万ドル(約62億円)、興行収入が世界で4282万ドル(約42億8200万円)。第1作の「イコライザー」は制作費が5500万ドル(約55億円)に対して、興収が世界で1億77万ドル(約100億7700万円)。ちなみに日本では3億9700万円だった。

前作でボストンのロシアン・マフィアを壊滅させた元CIA工作員のマッコール(演じるのはデンゼル・ワシントン)は、タクシー運転手として生活しながら、時には海外へと赴き、世にはびこる犯罪者と対決していました。

自身の記録を消し去ったマッコールですが、彼の過去を知るCIAの幹部スタッフであるスーザン(演じるのはメリッサ・レオ=Melissa Leo)から有形無形の支援を受けつつ、「世直し活動」をおこなっています。

そのスーザンがある事件の捜査中に殺害されたことを知り、マッコールはかつての仲間であるCIAのデイブ(演じるのはペドロ・パスカル=Pedro Pascal)と連絡を取り、協力を求めます。

「死んだことになっていた」マッコールへの助力を快諾したデイブですが、マッコールは殺し屋に襲われ、からくも敵を倒しますが、その相手が自分と同じような訓練を受けていることを悟ります。

今回の敵は単なる犯罪者ではなく、自分と同じ元CIAのチームだったのです。かつての同僚たちに向かって、殲滅(せんめつ)を宣告するマッコール。猛烈なハリケーンの中、工作員同士の熾烈な戦いが展開されていきます。

知識と教養にあふれ、ひとあたりも良い好人物のマッコールが、ひとたび悪と対峙したおりには、まさに殺人マシーンと化し、文字どおり相手をなぎ倒していく・・・。
文章にしてしまうと陳腐になるかもしれませんが、アカデミー主演男優賞(「トレーニング デイ(Training Day、2001年)に輝き、悪漢から正義の味方、実在の人物まで巧みに演じるデンゼル・ワシントンの手にかかると、知性と蛮性をあわせもつマッコールが、なんとも魅力的な人物として、スクリーンに映えるのです。

前作で披露した「自分で戦う時間を予測し、そのあと、経過時間を冷静に分析する」という名シーンも健在で、ストップ・ウォッチをスタートさせた瞬間に、はじまるアクションは、見応え充分で、アクション映画の神髄もいえるでしょう。

その一方で、若者をただしく導くという「メンター(指導者)」としての振る舞いもまた、マッコールという人物の魅力となっています。

前作では売春に手を染めていた少女を陽の当たるところに返し、本作では犯罪組織に組み込まれそうになる黒人の青年を救い出します。

ギャング集団から引きはなした画家志望の青年マイルズ(演じるのはアシュトン・サンダース=Ashton Sanders)に、マッコールは自分の持っていた銃を持たせ、「自分を撃ってみろ」、「(引き金を引くのは)5ポンド(約2.3キロ)だ。さあ撃てよ、ギャングスター」ときびしい口調で迫ります。

マイルズが躊躇すると彼の手から銃を取り上げ、こんどはマイルズの顔に銃を突きつけます。「“男(MEN)”のスペルは“銃(GUN)”じゃない」、「チャンスは生きているときに使え」、そして、こうつけ加えます。「お前は死を知らない。死がどんなものかを」。

このセリフは、前作ではあまり効かなかったはずです。2作目であるこの作品で、戦い続けているマッコールが自身のもつ死生観を語ることで、よりインパクトのある表現となって成功していると感じました。

なお、銃器に精通した知人によると、このとき、マッコールが持っていた銃は、「すぐには撃てない状態」だったそうです。細かい部分ですが、ディテールにも意識が配られていたのですね。

また、さりげないシーンですが、気に入ったシークエンスがあります。マッコールが行きつけにしていた書店に行くときと帰るとき、歩調やしぐさが変化しています。「(店を)閉めるつもりだったが続ける」という吉報が、マッコールの足どりを軽くしているのです。

前述の「トレーニング デイ」でワシントンにアカデミー主演男優賞をもたらしたフークワ監督とは4作目で息もピッタリ、マッコールの人物造型には、ワシントンも多くのアイディアを出しているそうです。

また、勝手なのですが、ワシントンとフークワ監督の「イコライザー3(仮)」、現状ではまったくアナウンスがありませんが、おおいに楽しみにしています。次回は「億男」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。