志門で手漉き紙に描く、塩路明子、田辺修ら14人

【銀座新聞ニュース=2019年3月11日】ギャルリー志門(中央区銀座6-13-7、新保ビル3階、03-3541-2511)は3月11日から16日まで「手漉きアート展」を開いている。

ギャルリー志門で3月11日から16日まで開かれている「手漉きアート展」のフライヤー。

「手漉き紙(てすきし)」は日本の和紙をはじめ、中国、韓国、ヨーロッパ、タイ、ネパールなど世界中に独自の原料を使った手漉きの紙が存在する。浅野庚一(あさの・こういち)さんらが独自に選んだ「手漉き紙」を使って描いた作品を展示している。

今回、出品しているのは、浅野庚一さんのほか、右近多恵子(うこん・たえこ)さん、置鮎早智恵(おきあい・さちえ)さん、鎌田(かまた)りんさん、桟敷一寿美(さじき・いずみ)さん。

塩路明子(しおじ・あきこ)さん、田辺修(たなべ・おさみ)さん、中島史子(なかじま・ふみこ)さん、彦坂和夫(ひこさか・かずお)さん、深沢修(ふかざわ・おさむ)さん。

フジモトアキコさん、増田勝彦(ますだ・かつひこ)さん、増田(ますだ)みづほさん、山内慶子(やまうち・けいこ)さんの14人。

株式会社紙舘島勇によると、手漉き和紙の作り方は、まずは紙の原料である繊維質を含んだ植物の「楮(こうぞ)」や「三椏(みつまた)」を煮て、紙漉きに必要な繊維質だけを取り出す。これを「煮熟(しゃじゅく)」という。

繊維質をさらに細かくほぐし、O字型をしたプールに水と煮熟した原料を混ぜ、かくはんしていく。原料が水に対し5%から3%になるまで叩解(こうかい)し、叩解した原料は、一度脱水する。その後、再度水に溶かし、「とろろあおい(黄蜀葵)」を混ぜる。

とろろあおいは葵科の植物で、黄色い大型の花をつけ、晩夏に咲く植物で、このとろろあおいの根を使う。とろろあおいを混ぜた溶液を「船」(木枠とすだれからできている)と呼ばれる、独特の形をしたものに流し込み「紙を漉く」という作業を行う。

昔は船の下にある溶液槽へ船を沈め、船を持ち上げることで溶液から紙の素をこして紙をすいた。和紙のサイズが全判(約138センチx70センチ)のように大きな紙になると、均等の厚みで漉くことが難しくなる。船が少しでも傾くと溶液が偏り、1枚の紙で左と右で厚みが違うこともでてきてしまう。

現在では、船を固定して、上から溶液を流し込み、溶液が船に均一に流れ込むよう工夫されているため、熟練の技を要することがなく、製品として完成する。流し込まれた溶液は船の上で水分と原料に漉し分けられ、すだれに紙の素が残る。

1枚の紙が均一に漉くことができる機械に手作業で水を流し込む。足元に溶液を流し込む口を開けるスイッチがあって、踏んでいる間、口が開いている。すだれに漉し残った紙の素を1枚ずつ重ねるが、この時点の紙の素は、豆腐のような感じで、とろろあおいによって結びついているにすぎない。

熟練の漉き手は1日に3000枚から4000枚漉くが、1日中立ち仕事のうえ、集中力が必要となり、しかも水は冷水を使う。すだれで漉すために、紙自体に簾目(すのめ、すだれの跡)が透かしのように残り、この簾目が手漉き和紙の象徴となっている。

豆腐状の紙の素は一晩中、放置して水抜きをする。さらに圧さく機で脱水した後、天日で乾燥させ、固い板状になるまで10日間ほど放置する。乾燥の目的は1枚ずつの紙の中で、繊維同士の結びつきを強くするためで、漉きあがった状態で乾燥させると、繊維の結びつきが弱く、破れやすくなってしまう。

固く乾燥した紙の素は、1枚1枚はがせるようになるまで水に浸すが、浸しすぎると、はがす時に破れ、水が足りないとはがれなくなる。ひとつの塊から4000枚近くをはがして、乾かす。

タテ2メートルヨコ4メートルほどの鉄板をバーナーで熱し、そこに紙の素の塊から1枚ずつはがしながら貼り付けていく。こうしてでき上がった和紙は、1枚1枚品質を確認し、製品ごとに裁断される。裁断は、人力で行なっていたが、今は機械で行う。

コトバンクによると、植物の繊維をおもな原料として、手づくりで紙を作る技術は,日本以外でも、中国、韓国、台湾、インド、ネパール、ブータン、タイなどのアジアやイタリア、フランス、イギリスなどのヨーロッパ、近年、新しい手づくり運動の一環として紙漉きが盛んなアメリカなどで行われている。

開場時間は11時から19時(最終日は17時)、入場は無料。