資生堂ギャラリーで荒木悠展、ロティの風景と現代のズレ

【銀座新聞ニュース=2019年4月3日】国内化粧品業界首位の資生堂(中央区銀座7-5-5、03-3572-5111)は4月3日から6月23日まで資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3、東京銀座資生堂ビル地下1階、03-3572-3901)で荒木悠さんによる新作映像展「LE SOUVENIRS DU JAPON ニッポンノミヤゲ」を開く。

4月3日から6月23日まで資生堂ギャラリーで開かれる荒木悠さんの新作映像展「ル・スーベニール・ドゥ・ジャポン(LE SOUVENIRS DU JAPON)ニッポンノミヤゲ」に展示される作品「ビヴァルヴィア(Bivalvia):Act1」(2019年、ウクライナのピンチュク・アート・センター)。

2018年にオランダ・ロッテルダム国際映画祭でタイガ・アワード(Tiger Award)を受賞した映像作家の荒木悠(あらき・ゆう)さんの新作による個展で、世界各地への滞在、制作などを通して、文化の伝播と誤訳、その過程で生じる差異や類似などに着目し、社会・歴史を背景にした映像作品を制作している。

明治期の1885年と1900年から1901年の2度にわたり日本を訪れ、小説を残したフランス人の作家、ピエール・ロティ(Pierre Loti、1850-1923)に着目し、その著作である短編集「秋の日本(Japonerie d’Automne)」(1889年)を作品の素材のひとつに選んで、荒木悠さんが作品を制作している。

メインとなる映像作品が「秋の日本」のなかの「江戸の舞踏会」の章で、1885(明治18)年に鹿鳴館で催された舞踏会を訪れたロティが、35歳の自身の視線でその様子を描いた見聞録という。これをもとに作家の芥川龍之介(あくたがわ・りゅうのすけ、1892-1927)が「舞踏会」(1920年)を書いている。

今回、このふたつを原作として東洋と西洋の「まなざし」がワルツを軸に同じ時空間のなかで交差する情景を作り出している。もうひとつの映像作品は、「秋の日本」に収録されている「聖なる都・京都」、「日光霊山」、「江戸」の章でロティが記録した場所を荒木悠さんが撮影し、100年以上前と現在とのズレから、映像に写らない「風景」を描写することを試みている。

荒木悠さんは1985年山形県生まれ、2007年にアメリカ・ワシントン大学芸術学部彫刻科を卒業、2010年に東京芸術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修士課程を修了、2013年にスペイン・ボティン財団の招へいにより、タシタ・ディーン ワークショップに参加し、2017年から2018年にかけて、ゲスト・レジデントとして韓国・光州の国立アジア文化殿堂、オランダ・アムステルダムのライクスアカデミーに滞在している。

主に映像を表現媒体としており、自身の体内を記録した初期作品から近年のアジアやヨーロッパをはじめさまざまな国や地域のコミュニティーに潜り込み、「未知なる領域」を探求している。

開場時間は11時から19時(日曜日、祝日は18時)、月曜日は休み。入場は無料。