子役の演技も楽しいが、シャザムの演技が素晴しい「シャザム」(262)

【ケイシーの映画冗報=2019年5月2日】日本のダンスパフォーマンス集団「World Order(ワールド・オーダー)」が昨年3月にリリースした「レッツスタート(Let’s start)WW3」に、現在のアメリカ大統領を表現した歌詞があります。

現在、公開中の「シャザム!」((C)2019 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.)

「お金持ちで背も高く プロレスもできて頭もいい 映画に出てくるような 本物のヒーロー」と礼賛しますが、こう続きます。「Let’start World War3 (さぁ、第3次世界大戦だ)」

たしかに190センチの長身で資産31億ドル(およそ3100億円)、試合はしませんでしたが、プロレスのリングでチームを結成し、名門大学出身のドナルド・トランプ(Donald Trump、1946年生まれ)大統領ですが、複数のアメリカ在中の方からうかがったところ、かれの英語はひどく稚拙(ちせつ)で、知性と品性に難点があるのだそうです。「まるで体の大きな小学生ですよ」

本作「シャザム」(Shazam!、2019年)の主人公、フィラデルフィアに住む14歳の少年ビリー(演じるのはアッシャー・エンジェル=Asher Angel)は、幼いころに母親と離ればなれとなってから、数十回も里親を変える生活を送っていました。今回の里親は両者とも施設で育ったというバスケス(Vasquez)夫妻のグループホーム。高校生から小学生まで、5人の男女を育てる家庭で、ビリーは同い年で足にハンディキャップのあるフレディ(演じるのはジャック・ディラン・グレイザー=Jack Dylan Grazer)と同部屋になります。

暖かく迎えられたビリーですが、「ずっとひとり」でやってきたことから、濃密な関係に不慣れで、夜の街へ足を向けると、不思議な砦に迷い込んでしまいました。そこには年老いた魔術師(演じるのはジャイモン・フンスー=Djimon Hounsou)がいて、ビリーに「勇者になれ。シャザムと言うんだ」と命じます。するとビリーは稲妻に貫かれ、シャザム(演じるのはザッカリー・リーヴァイ=Zachary Levi)になっていました。

外見は銃弾もはじき返す鋼鉄の大男ながら、中身は14歳というシャザム=ビリーは、自身の姿と能力に戸惑ってしまい、とりあえず「ヒーロー物が好き」というフレディに助けを求めます。

疎遠だったふたりは、「スーパーパワー」という共通の話題から友人となることができました。はしゃぎまくるふたりでしたが、彼らとフィラデルフィアの町に危険が迫っていました。

ドクター・シヴァナ(演じるのはマーク・ストロング=Mark Strong)が悪魔の助力を得て、シャザム=ビリーからそのスーパーパワーを奪おうと実力行使をはじめたのです。

「見た目はオトナ 中身はコドモ」というキャッチ・コピーの「シャザム!」は、主人公が14歳ということもあって、コミカルなシーンがおおく、事件も一都市でのできごとに終始しています。いわば「ご近所ヒーロー」ともいえる存在で、おなじくティーン・エージャーの高校生が正体である「スパイダーマン」にも通じるものを感じました。

こうしたヒーロー作品には、魅力的な悪役(ヴィラン)が欠かせません。本作のドクター・シヴァナは実の家族に憎悪と復讐心をいだき、私欲に取りつかれた人物ですが、その原典は家族による圧迫と、少年期の鮮烈な体験に裏付けられたもので、悪の道へと向かうものも、ストーリー的に理解できるものでした。

監督のデビッド・F・サンドバーグ(David F.Sandberg)はスウェーデン出身で、これが長編映画3作目という、映画監督としてはニューフェイスです。短編アニメと自主映画がキャリアの多くを占め、本格的な商業作品がホラー映画の2本しかない人物に、大作ヒーロー映画の監督を任せたことについて、製作のピーター・サフラン(Peter Safran)はこう語ります。

「みんな、ジャンル監督を軽く見ているんじゃないの?それは大間違いだ。彼らは映画が大好きで、豊富な知識がある。しかも低予算から出発しているからアイデアの宝庫だ」(「映画秘宝」2019年6月号)

「好きこそ物の上手なれ」を地でいくキャラクターに、どしどし機会を与えていくのがハリウッドの特色だと思います。たしかに、目を覆いたくなるような悲惨な仕上がりも散見されますが、どんな名工にも「筆の誤り」はありえるのです。

ビリー役のエンジェルや親友フレディ役のグレイザーのような芸達者な子役陣の演技も楽しいのですが、やはりシャザムのザッカリー・リーヴァイの演技は素晴しいもの があり、「オトナコドモ(コドモオトナ?)」を魅力的に演じており、スーパーパワーを使ったイタズラのシーンなどは秀逸です。

とはいえ、スーパーパワーを持つコドモはフィクションにとどまっていただきたいですね。次回は「名探偵ピカチュウ」を予定しています(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、「シャザム(Shazam)」は「キャプテン・マーベル(Captain Marvel)」としてDCコミックスの出版するアメリカン・コミックスに登場する架空のスーパーヒーローで、スーパーマンと並ぶ地上最強の男とされた。

1940年2月発行の「ウィズ・コミックス」第2号(出版社はフォーセットコミックス)の掲載されたのが初登場で、1939年にC. C.ベック(Charles Clarence Beck、1910–1989)とビル・パーカー(William Lee “Bill” Parker、1911–1963)によって創造され、「思春期の幻想を生かす」という前提に基づき、ビリー・バットソン少年のオルター・エゴ(別人格)としてキャプテン・マーベルは設定された。

フォーセット・シティに住むビリーの職業は、ウィズ・ラジオのアナウンサーで、時空を超えた永遠の岩(ロック・オブ・エターニティ)に住む魔術師シャザムにより、善の戦士に選ばれた若者ビリーは、「シャザム」という呪文を唱えると魔法の稲妻に打たれ、6人分のスーパーパワーを持った大人のスーパーヒーローに変身する。

メアリー・マーベルとキャプテン・マーベル・Jrのように幾人かの友人や家族もビリーの能力を共有しており、マーベル・ファミリーという仲間を有している。メアリーも変身の際には同じキーワードを使用するが、キャプテン・マーベル・Jrの場合は「キャプテン・マーベル!」という。

「キャプテン・マーベル」と「マーベル・ファミリー」はともに「スーパーマンの盗作」とDCコミックスから訴えられ、1950年代には売り上げが落ち、廃刊となっている。DCが版権を取得したのは1970年代であり、この時マーベル・コミックが社名などでマーベルを商標登録していたため、「キャプテン・マーベル」の使用を避け、「シャザム(Shazam!)」に改題され、2011年より開始したDCコミックスのリニューアル展開New52ではヒーローの名称も「シャザム(Shazam!)」に改められた。

「シャザム!」はDCコミックスのクロスオーバー作品「Cエクステンデッド・ユニバース」の7作目として制作されている。

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