離れた親子を描き、物語にもインパクトのある「ピカチュウ」(263)

【ケイシーの映画冗報=2019年5月16日】1990年代、日本のテレビゲームを翻案とした映像作品がいくつも生まれました。おおくはゲームと親和性の高いアニメーションとして作られましたが、なかにはアメリカで実写企画として映画化され「ハリウッドを本気にさせちゃった」という刺激的な宣伝コピーの作品もありましたが、その評価はさほど大きくありませんでした。

現在、一般公開されている「名探偵ピカチュウ」((C)2018 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved.(C)2018 Pokemon)。

この時期、ゲームの映画化が不首尾であった最大の理由が「手がけた映画人に、原典であるゲームが理解されていなかった」ことだったとされています。新興勢力が既存のメディアと重なるとき、こうした無理解はしばしば発生します。

これを解決する一番有効な方法は「作ることをやめない」ですが、利益を求める商業メディアにとっては、「作り続けるリスク」もまた、避けねばならない課題でもあります。

不採算とされてきたゲームの映像化が、商業的にも成功を収めるのは、今世紀になってからです。キャストやスタッフにテレビゲームを楽しみ、ファンを公言する世代が増えてきたことがプラスに寄与しはじめたのです。原典に理解があり、作品を愛するかれらによって、映画作品としての地位が固まっていきました。

また、2001年の「アメリカ同時多発テロ」によって、現実味のあるストーリーの企画が忌避されたという説もあり、単純に「(映画の企画として)ゲームが認められた」のではないという意見もあることも、付記しておきます。

本作「名探偵ピカチュウ」(2019年、Pokemon:Detective Pikachu)で、青年ティム(演じるのはジャスティス・スミス=Justice Smith)は、ふしぎな生き物ポケモン(ポケット・モンスター)を自在に操るポケモントレーナーに憧れた過去を封印して、保険会社で働いていましたが、悲しい連絡を受けます。離れて生活している父ハリーが事故死したというのです。

ティムはハリーが探偵をしていたライムシティに向かいます。ライムシティは世界でここだけというヒトとポケモンが一緒に生活しているという町でした。ティムがだれもいない父の部屋にはいると、言葉をしゃべるポケモンのピカチュウ(声の出演はライアン・レイノルズ=Ryan Reynolds)に遭遇します。

なぜかティムとだけ話ができるピカチュウは記憶を失っていましたが、自分が探偵であり、「ハリーの死には大きな謎がある」と宣言し、むりやりティムをパートナーにして、「捜査」を開始します。

この事件を追っているという記者見習いの女性ルーシー(演じるのはキャスリン・ニュートン=Kathryn Newton)の助力もあって、ティムとピカチュウはハリーの死の真相に迫っていきますが、これはライムシティ全体に影響を与える、大きな陰謀につながっていくことにもなってしまいます。

アメリカ版の予告編で「WORLDWIDE PHENOMENON(世界的な現象)」と紹介されるポケモンは、誇張ではなく、世界的なキャラクターとなっているのは間違いありません。アメリカで一番ヒットした日本の映画は1998年の「劇場版ポケットモンスターミュウツーの逆襲」(Pokemon:Mewtwo Strikes Back!)で、この記録(興行収入8000万ドル、およそ80億円)はいまでも破られていません。

さらに、アメリカ最大のイベントとされ、放送時のCM料金が世界一高額(30秒でおよそ5億円)といわれるアメフットの頂上決戦「スーパーボウル」で、2016年にもっとも人気だったのが「ポケモン20周年」のCMだったそうです。ちなみに、本作のワンシーンは、この時のCMが原型となっていると思われます。

監督・脚本(共同)のロブ・レターマン(Rob Letterman)は、アニメと実写映画で監督作品があり、対立しがちなふたつのジャンルに理解のある人物です。

「僕の子どもたちがポケモンの大ファンなんだ」(パンフレットより)と語るレターマンは自身がファンではありませんが、主演のスミスは「小さい頃からポケモンの大ファン」(パンフレットより)ということですし、ヒロインを演じたニュートンも親しみを持っていたとのことです。

しかし、本作は単なるキャラクター人気を当てこんだ作品ではありません。前回の「シャザム!」と同様、離れてしまった親子の関係が丁寧に描かれ、ストーリー的にも大きなインパクトを受けました。この部分はいわゆる「ネタバレ禁止」をつよく願うレベルのものです。

さいごにすこし、ハッピーなエピソードを紹介します。2001年の11月、アメリカ同時多発テロの被害で打ちひしがれたニューヨークの子どもたちを応援するように、ピカチュウの巨大バルーンが登場しています。本作のクライマックスの源泉はこのイベントなのだと思います。次回は「空母いぶき」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

コメントは受け付けていません。