中央の百貨店9月、5店とも2桁増、増税前駆け込みで

【銀座新聞ニュース=2019年10月2日】中央区とその周辺の主要百貨店の9月売上高(速報値、店頭ベース)は、日本橋三越、日本橋高島屋、大丸東京店、銀座三越、松屋銀座の5店ともプラスで、いずれも10%を超える2桁増だった。

9月の売上高で4カ月ぶりに前年を上回った松屋銀座店。

9月は10月からの消費税増税を控えて駆け込み需要により、5店とも10%以上のプラスとなった。5店がプラスとなるのは今年3月以来、6カ月ぶりとなる。ただ、訪日外国人観光客売上高(免税売上高、インバウンド)はJ.フロントリテーリングを除いて、各社とも前年割れだった。

三越伊勢丹ホールディングスの日本橋三越(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は前年同月比29.4%増(8月速報値10.5%増、確定値7.9%増、小型店舗と恵比寿三越、ソリューション統括部を含む、確定値ベースでの店舗別売上額は5月から未公表)と店頭ベースでは2カ月続けて前年を上回った。

一方、銀座三越(中央区銀座4-6-16、03-3562-1111)は同13.1%増(同速報値1.1%増、確定値1.1%増、但し空港型免税店の売り上げを除く)と2カ月続けてプラスとなった。

三越伊勢丹ホールディングスでは、「首都圏の基幹店舗では、8月の新宿店宝飾売場や婦人靴売場、日本橋店時計売場などのリフレッシュオープンと増税前の需要の相乗効果により、時計、宝飾、美術、ハンドバッグ、財布、婦人靴などのカテゴリーが売り上げを大きく伸長した。しかし、訪日外国人観光客売上高は一部の店舗では前年を上回るものの、為替などの与件による買い控えも見られ全体では伸び悩んだ、としている。

日本橋高島屋(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は同53.7%増(同速報値14.2%増、確定値13.8%増)と5カ月続けて前年を上回った。日本橋店は2018年9月からレストラン街の運営を子会社の東神開発に移管し、百貨店としての売場面積が縮小している。

店頭売り上げは、増税前の駆け込み需要で月後半にかけて売り上げが伸長したことに加え、前年の台風影響の反動により、前年実績を大きく上回った。訪日外国人観光客売上高は前年比1.1%減だった。

17店舗ベースの商品別では、全商品群が前年を上回り、特に宝飾品、特選衣料雑貨については、消費増税前の駆け込み需要の影響もあり、大きく売り上げを伸ばした。

J.フロントリテーリングの大丸東京店(千代田区丸の内1-9-1、03-3212-8011)は同13.8%増(同速報値0.2%増、確定0.2%増)と2カ月続けて前年を上回った。

百貨店事業は、消費増税を控え、宝飾品が前年の約2.4倍、ラグジュアリーブランドが約7割増、化粧品が約5割増となるなど大幅に売り上げを伸ばし、月末が近づくにつれて婦人雑貨、紳士服飾、リビング関連でも売り上げの伸長が見られたとしている。また、大丸松坂屋百貨店合計の訪日外国人観光客売上高(速報値)は前年比約20%増(客数同10%増、客単価同9%増)だった。

J.フロントリテーリングでは2017年4月から「不動産事業」を独立させて、確定ベースで伸び率を公表しており(速報値ベースは未公表)、8月の「ギンザ シックス(GINZA SIX)」や「上野フロンティアタワー」などの家賃収入は同4.3%増だった。

松屋銀座店(中央区銀座3-6-1、03-3567-1211)は同18.4%増(同速報値0.6%減、確定値0.6%減)と4カ月ぶりに前年を上回った。

銀座店は、10月からの消費税率の引き上げに伴い、1)防寒衣料など(国内外デザイナーなどの婦人ロングコート17%増、紳士特選スーツ23%増)、2)ラグジュアリーブランド(高価格帯の婦人靴・バッグなど17%増)、3)時計44%増、宝飾74%増などに代表される、前倒し需要、かつ、高価格帯商品などが9月第3週以降に大幅に売上高を伸ばした。

また、松屋創業150周年を記念した松屋カード所有者などを招待した「松美会・秋の感謝祭」では、秋物商材の早期提案が奏功し、2日間開催で15億円超の売上高となった。一方、訪日外国人観光客売上高については、元安の急激な進行なども要因となり、売上高は一般品・化粧品を軸とした消耗品ともに前年を下回った。

日本百貨店協会(中央区日本橋2-1-10、03-3272-1666)によると、国内78社215店舗(総従業員6万5852人)の8月売上高(店舗調整後)は前年同月比2.3%増の4200億0528万円で、5カ月ぶりのプラスとなった。

8月は「気温上昇で主力の衣料品を中心に盛夏商材が好調に推移した他、引き続き輸入時計やラグジュアリーブランドなど高額品が高伸した」としている。季節催事やセールなど各種施策も好評だったという。

また「大都市旗艦店では、一部商品に増税前の駆け込み消費も見られた。西日本では台風や大雨による休業や営業時間短縮などマイナス要素もあったものの、前年比で休日が2日増えたこともプラスに寄与した」としている。

顧客別では、訪日外国人観光客売上高(シェア6.1%)が0.7%減(256億円)と7カ月ぶりにマイナスだった。購買客数(7.1%減、3カ月連続)は前月より3.4ポイントダウンした。一方、国内市場(シェア93.9%)は2.5%増と10カ月ぶりにプラスとなった。

商品別では、衣料品(14カ月ぶり)、身のまわり品(2カ月ぶり)、雑貨(7カ月連続)、家庭用品(44カ月ぶり)の4品目で前年実績を超えた。高額品(美術・宝飾・貴金属、23.8%増、7カ月連続)や、家具(11.5%増、2カ月連続)、家電(22.8%増、3カ月連続)が2桁増と大幅な伸びを示したとしている。

また、紳士服・洋品(7.1%増、2カ月ぶり)、その他衣料品(4.2%増、46カ月ぶり)、化粧品(4.4%増、53カ月連続)も好調だった。一方、食料品(1.5%減、4カ月連続)は、帰省などの手土産需要で菓子(0.2%増、7カ月連続)が堅調だったが、不振の生鮮を含む合計では前年には届かなかったという。

全国の百貨店の営業日数は前年同より0.3日少ない30.4日、122店舗の回答によると、入店客は43店が増え、36店が減ったとし、うち87店舗の回答によると8月の歳時記(夏休み、お盆)の売り上げについては13店が増え、12店が減ったとしている。東京地区(13社25店)の8月の売上高は同4.7%増の1159億0605万円と5カ月ぶりのプラスとなった。

国内93店舗の訪日外国人観光客需要の8月の売上高は同0.7%減の約256億6000万円と7カ月ぶりにマイナスとなり、国内の百貨店に占めるシェアが6.1%としている。日本百貨店協会では「円高や諸外国の国際情勢による訪日客数の減少が要因」と分析している。

このうち、一般物品売上高は同5.8%減の約139億1000万円で、2カ月ぶりに前年を下回った。化粧品や食料品などの消耗品売上高が同6.1%増の117億5000万円、購買客数が同7.1%減の約38万1000人と3カ月続けてマイナスとなり、1人あたりの購買単価が同6.9%増の6万7000円で、7カ月続けて前年を上回った。

人気のあった商品は1位が化粧品(2018年1月から2019年7月まで1位)、2位にハイエンドブランド(2018年1月から2019年4月まで2位、5月3位、6月、7月2位)が3カ月連続、3位が婦人服飾雑貨(2018年1月3位、2月4位、3月3位、4月5位、5月3位、6月から2019年7月まで4位)と前月の4位から上がった。

4位が食品(2018年1月4位、2月3位、3月5位、4月3位、5月4位、6月から2019年4月まで3位、5月2位、6月3位、7月3位)とひとつ下げた。5位に美術・宝飾品が3月以来5カ月ぶりに上がった。

免税手続きカウンターの来店国別順位は1位が中国本土(2018年1月から2019年7月まで1位)、2位は韓国(2018年1月4位、2月から6月2位、7月3位、8月から10月2位、11月から1月まで3位、2月から6月2位、7月4位)が上がり、3位に香港(2018年1月2位、2月4位、3月3位、4月4位、5月と6月3位、7月2位、8月と10月3位、11月と1月2位、2月4位、3月から6月3位、7月2位)が下げり、4位も台湾(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位)が下がった。

5位にタイ(2018年1月から10月5位、11月と12月6位、1月から7月5位)、6位にシンガポール(2018年1月から10月6位、11月と12月5位、1月から7月6位)、7位がマレーシア(2018年1月から7月まで7位)と変わらなかった。