丸善日本橋で南木曽ろくろ細工展、木地師の技

【銀座新聞ニュース=2020年4月5日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は4月8日から14日まで3階ギャラリーで「南木曽ろくろ細工 工芸展」を開く。

丸善・日本橋店で4月8日から14日まで開かれる「南木曽ろくろ細工 工芸展」に出品される作品。

南木曽(なぎそ)ろくろ細工とは長野県木曽郡南木曽町周辺で作られている木工品のことで、18世紀前半に誕生した伝統工芸品で、ろくろ細工という特殊な技によって制作されている。その魅力は、木目の美しさで、厳しい木曽の気候に幾百年を耐えた古木だからこそ生まれる年輪の妙としている。

どう生かすかは木地師(きじし)の腕の見せどころで、磨き抜かれた手技で生まれる製品は、どれをとっても世界でたった一つの商品で、大人数の盛り合わせの皿や普段使いに、と生活のさまざまなシーンで便利な道具として利用できる。

「工芸ジャパン」によると、南木曽(なぎそ)ろくろ細工とは長野県木曽郡南木曽町周辺で作られている木工品のことで、18世紀前半に誕生した伝統工芸品で、ろくろ細工という特殊な技によって制作されている。

ろくろ細工とは、輪切りにした原木を、ろくろの上で回しながら、カンナで挽いて、白木製品と呼ばれる木工品を削りだす手法をいう。この方式は、手作業によって行われるため、職人には高度な技術が必要となり、木を知り尽くした木地師(きじし)と呼ばれる職人によって作られている。

南木曽ろくろ細工の特徴は、このろくろ細工によって生み出される木目を、自然の美しさをそのままに引き出している点で、木地鉢(きじばち)、茶櫃(ちゃびつ)などが主に作られるが、木の木目や木質、全体の雰囲気などを観察し、木によって作る製品を決めていく。

南木曽ろくろ細工の盆などの木地製品が、名古屋や大阪に出荷していたことが記録されていることから、18世紀前半からはじまったとされるが、木地ろくろ細工を作る木地師たちは1500年代には、当時発行された木を切るための免状が残っていることから、すでに存在していたと考えられている。

当時の近江国(現滋賀県)が発祥の地とされ、日本全国で木地師たちはろくろ細工を作るために原料となる名木を切り、白木の製品を作成していた。彼らが、南木曽にもやってきたことで、現在の南木曽工芸品が有名になった。

江戸時代中期に、白木の挽き物が作られていたことも記録されている。南木曽にはその後、木地師たちが集まって集落ができ、木地師の里と呼ばれるようになった。近代化の流れとともに、機械を使わずすべてを行う職人は少なくなり、現代では電動ろくろを用いて作業することが一般的となった。

南木曽ろくろ細工はすべての工程を1人の職人で行う。まずは、選木からはじまり、原木に使用される木は、トチ、ケヤキ、セン、カツラなどの木曽で育つ木々から選ばれる。作る製品は木の質によって変化するため、原木を選び出す作業は入念に行われる。原木の皮をはいだら、道具を使って汚れを落とし、木口面や表面を細部まで観察することで、伐採時期や成長過程、木のもつ特徴を探していく。

選木が終わると、玉切りという、原木を輪切りにする工程になる。輪切りにしたら、切った面を上にして挽き割りを行う。挽き割り後の木材は、丸めという円形、楕円形にする工程で、木目を生かすように気をつけながら外側を切り落とす。最後はろくろを用いて、厚めにカンナで荒挽きを行う。

荒挽きしたら、木材の堅さを上げるために時間をかけて乾燥させ、不要な水分を出す。ストーブやいろりを設置した場所に、木材を並べ、3カ月ほどかけて乾かす。大きさによって乾燥させる時間は異なり、大きい木材になってくると3年という長期間を費やすこともある。乾燥させる時間は含水度で判断するため、頃合いを見て計測し10%になれば乾燥を終えて、自然の中に置き、外気ならしをする。含水度が12%まで戻ったら完了する。

含水度が戻ったら、ろくろで仕上げ面を滑らかにする作業になる。カンナを用いて削っていくが、この工程は鍛錬された技術が求められる。ろくろに当てる刃の角度や削り方は、長い経験の積み重ねでしか習得できない。また、カンナにもさまざまな種類があり、木地師の職人たちは、一つひとつ挽く製品に合わせて、カンナを自ら造っていく。

荒仕上げで形を大まかに削るためのカンナや、仕上げ挽きで用いるカンナ、最後の仕上げで使うシャカカンナなどをバランスよく使用し、カンナで仕上挽きされた木材には、最後に紙やすりでしっかりと整えていくことが重要になる。

カンナと紙やすりで整えたら、最後にトクサ磨きというトクサやスグキワラを用いる水磨きか、天然漆で磨いていく漆拭きのいずれかを行う。漆拭きでは漆拭き製品、トクサ磨きでは木目を生かした白木製品となる。滑らかな表面はろくろ挽きでしか味わえない特徴で、造られた茶びつや椀、盆などは、木のぬくもりを感じさせてくれる。

開場時間は9時30分から20時30分(最終日は17時)まで。ただし、土・日曜日、祝日は11時から18時。