【銀座新聞ニュース=2020年4月9日】「緊急事態宣言」が出されて2日目となる4月9日、午前中は地方のアンテナショップを中心に歩いてみた。東京交通会館ではわかやま紀州館とむらからまちから館が営業していたが、ほかのアンテナショップは休業だった。
むしろ、1階の三省堂書店も休業しているのだが、その近くで靴磨きの職人3人がせっせと靴を磨いていたのは、時期が時期だけに違和感があって、不思議な雰囲気を醸し出していた。緊急事態宣言が出た後に「不要不急の外出」については、政府が自粛要請を出しているのだが、靴磨きが「必要な外出」になるのだろうか、と一瞬、頭をよぎった。
しかし、靴磨きの人にとっては、生活がかかっているので、客がいてくれることに感謝しているだろう。また、会館内の2階では東京都パスポートッセンターが9日から休業したため、パスポート用の写真撮影やバッグ類の販売などで稼いでいる近くの店は、開店休業になってしまい、手持ち無沙汰にしていた。パスポートの発行を抑えることで、海外旅行者を減らせるという目算があるのだろう。だが、パスポートや海外旅行など需要で、生活してきた店にとっては、死活の問題だろう。
会館内には小さな飲食店やアパレル店が多く入っているが、それらの多くは営業を継続していた。ただ、やはり利用客は限られていた。
また、近くの東京国際フォーラムも普通に開いており、人出は多くないものの、昼食を販売するケイタリングカーも複数の「店」が軒を並べていた。しかし、近隣地区は日本でも最大規模のビジネス街、丸の内があるため、今や大手企業では在宅勤務が増えており、弁当のニーズは減らないのだろうか。
外堀通りを歩いていると、以前は「プランタン銀座」という名称だった「マロニエゲート銀座2」は5月15日から1階から4階まで「ユニクロ」がオープンするため、現在改装中だが、工事のため囲んでいる壁には5階と6階を占めている「ニトリ」がなぜか「営業中」というお知らせを貼っているのだが、脇に臨時休業と貼り出しをしており、店内の混乱が表に出ているのが珍しい。
それにしても、銀座で働く30歳前後のOLを対象にした店作りをして健闘してきた「プランタン」が店名を変えて、ユニクロとニトリの店になってしまうのは淋しい気がしてしまう。その裏には「無印良品銀座」があり、営業時間を変更しながらも営業を続けている。
午後は銀座の裏通りを歩いてみたが、銀座通りに面している大型店舗が休業している中で、裏の店はそれなりに営業している。居酒屋のチェーン店では3丁目の「さくら水産銀座三丁目店」も営業している。また、松屋の裏にあるスターバックス銀座松屋通り店は休業しているが、その隣のコーヒー店は営業しているので、チグハグなところが「緊急事態宣言」の限界を表しているのだろうか。
3丁目には「立ち飲みバー」があるが、やはり、営業している。他方で、写真家の林忠彦(はやし・ただひこ、1918-1990)の撮影で知られる太宰治(だざい・おさむ)がイスの上で足を組んで飲む姿で知られる5丁目のバー「ルパン」はなぜか13日まで休業している。
欧米系の大手のグランドメゾンはいずれも休業中だが、4月8日からの休業は明示しているが、「当分の間休業する」という言い方がほとんどで、「5月6日まで」と明記していないのは、途中で事態が変われば、いつでも再開することを示唆しているのだろうか。
もっとも面白いのは、銀座の中心というべき、4丁目交差点には、銀座三越、和光本店、三愛ドリームセンター、ニッサンクロッシング(NISSAN CROSSING、銀座プレイスビル)の大型ビルが構えるが、いずれも休業中だ。以前はこれらの建物の前で待ち合わせたりして、立ち止まっている人が目立ったが、今はただ前を通り過ぎるだけで、待ち合わせる姿はない。しかも、人の数が圧倒的に少ない。むしろ、晴海通りを走る車の数が多いのは不思議な気がする(「宣言」は緊急事態宣言が出された後の銀座と周辺の風景を随時、掲載します。また宣言は7日深夜に発令されましたが、実際に影響を及ぼしたのは8日朝からなので、8日を「初日」としています)。