インド、コロナ後の新時代に向けてサバイバルをめざす(4)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年4月20日】新型コロナウイルスが全世界的に猛威を振るっている昨今、それにしても、34年近いインド生活において、まさか自宅に軟禁を強いられ、母国に帰ることがままならぬ事態に追いやられようとは、予想だにしなかった。

2019年5月の「サイクロン・ファニ」で甚大な損傷を食らったわか宿(HOTEL LOVE&LIFE)の後方のロッジ、風速200キロに窓が吹き飛んだ。

ほぼ毎年のごとく帰っていて、金沢市に中古のワンルームマンションを購入した5年前からは、年2度、春と秋に帰るのが恒例となっていたのだ。

出入国自由の永住ビザを持っているせいで、イミグレーションもフリーパス、インド人配偶者を持つ特権を満喫してきたのだが、まさかOCI(Overseas Citizenship of India、海外インド市民権)カードによるビザ免除措置が無効になろうとは夢にだに思わなかった。

期限付きとはいえ、いつ解除されるかメドがたたず、要人や外交官を除いては、インドに入国できないのである。そのうち国際便まで停止になってしまい、にっちもさっちも行かなくなってしまった。

日本政府がインド政府に特別要請して、日本航空と全日空の臨時便(往路のみ)が3月末から4月初旬にかけて何便か運航されていたが、以後、デリーとムンバイ発は5月末まで運休、各国のロックダウン(都市封鎖)政策で私のように身動きの取れなくなった在留邦人はどれくらいいるんだろうかと考えると、身につまされる。愛する家族と否応なく引き裂かれてジレンマに陥っている人たちもいるだろう。

早く収束してほしいと焦るが、悪党コロすけとの闘いは、人間にとっては、かなり分の悪いもので、先が見えない。治療薬やワクチンが開発されるのは1年先だというし、それまでタイラント(暴君)よろしく思うがままにたちの悪いバイ菌を撒き散らされ、バタバタ倒れていくままに任せるしかないのだろうか。

「サイクロン・ファニ」で裏庭の椰子も葉がもがれ、痛々しい惨状に。

どこかの時点で特効薬が見つかって敗者復活戦を期待したいが、このままではやられっぱなしだ。

そもそもは、環境破壊に因(もと)があるのだと思う。鳥インフルエンザとか豚インフルエンザなどのウイルスが近年跋扈(ばっこ)しているし、自然破壊で生態系が狂っているのだろう。自宅隔離や社交距離で抑える対症療法では一旦収まっても、第2波がやって来そうだし、根本の原因を取り除かないことには、また形を変えて別の問題が起きそうな気がする。

昨年5月、当地プリーを直撃した前代未聞規模のスーパーサイクロンといい、10月に日本に甚大な被害をもたらした台風19号といい、オーストラリアの山火事や、今回が極めつけのウイルス、ついに地球規模の流行という末期症状を呈してしまった。人間の欲で破壊され尽くした地球の瀕死のあえぎが聞こえできそうだ。

私が今唯一抱くのは、新型コロナ後の新未来の兆し、たくさんの人が亡くなって、世界経済が崩壊して、たくさんの倒産があって、その後に開ける世界、コロナ前の経済優先社会と違って、人がもっと共有し合える、環境に優しい世界、自然と共存していく、そんな希望に満ちた、人間らしい社会、生き残った人類たちはきっと、そんな新時代を築いていけると信じたい。

ラップがブームのインドで、ミリオンの視聴を獲得した動画を連発し、スター街道を走るラッパー、ビッグディール(Big Deal)。モハンティ三智江さんの息子だ。

思えば、これほどにもドラマチックな事件、歴史上に残るであろう画期的な出来事もないわけで、時代の節目に居合わせたことを奇貨として、インド在住作家として目撃した現地事情を能うる限り記録にとどめたいと願うばかりだ。拙文を読んでくださっている読者諸氏、共にサバイバルして、新時代を迎えましょう(4月16日現在、インド全土の感染者数は1万2000人を超えた。当オディシャ=0DISHA=州は60人)。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家でホテルを経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは感染していません。また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長しました。4月20日現在、インドの感染者数は1万6166人)。