インドも日本もコロナ差別を許すな、ウイルスも撲滅せよ(6)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年4月24日】本日18日(投稿日4月18日)でロックダウン28日目、さすがにひと月近くになると、気も緩んでくるようで、夕方バイクや、自転車で繰り出す人が増えた。

名高いヒンドゥ聖地プリーのシンボル、ジャガンナート寺院に祀られたユニバース・ロード、ジャガンナート神は原住民の崇めていた土着神に遡り、手足のないまん丸目玉のユーモラスな風采だ。

向かいの家からは呑気(のんき)に、大ボリュームの現地ミュージックが流れてきて、おいおい、ちょっと緩みすぎじゃないかと、警告したくなる私、聖地の住民の常で神頼み、当地プリー(Puri)のシンボルともいうべき、宇宙の主、ジャガンナート神(Jagannatha、化身のひとつがブッダの平等を標榜するユニバース・ロード)は我々をお見捨てにならないと、固く信じ込んでいるのだ。

昨年5月のスーパーサイクロン直撃の教訓を忘れるなかれ、神頼みで油断してると、ガツンと来るぞ。そういえば、見回りのパトカーもサボっているようで、初期2週間ほどのように、耳障りなサイレンを鳴らして、警告することがない。

心配症の私は、無症状のキャリアがばらまく可能性を考えると、ひやひや、インド全土で1万4792人(死亡488人、4月18日現在)、急カーブで上昇中、すぐに2万人を突破するだろう。東京の2倍の人口の、西インド・マハラシュトラ(Maharashtra)州の州都ムンバイ(Mumbai)は2000人を超え、息子が同市に住んでいるだけに気が気でない。

3月半ばに彼が帰郷したとき、ムンバイに戻らせるべきじゃなかったと今更悔いても遅い。前稿でも少し触れたが、息子はインドでは5本の指に入るラップミュージシャン、芸名は「ラッパー・ビッグディール(Rapper Big Deal)」、ロックダウンでライブもままならない中、時宜を得たコロナ差別がテーマの最新作(ヒンディ語)を、動画でリリース、話題を呼んでいる。

ラップがブームのインドで、ミリオン突破の動画を連発している、息子の「Rapper Big Deal」。

ジャパニーズフェイスの息子は、スクール時代から異端視され、いじめに遭遇してきたが、今回のコロナ禍でも、中国人に間違えられ差別を受け、このたびの新作発表となった。

まだ欧米が今ほど猖獗(しょうけつ)を極めてなかった頃、アジア出身というだけで、コロナと蔑(さげす)まれた事例が幾つも報告されていたが、インドより日本の方がひと月早くコロナ禍に見舞われたため、当初インド政府の反応は日本人向けのビザ停止措置に走り、入国を禁じてしまった。でなければ、親日家で経済先進国である日本を日頃敬いこそすれ、退けるなんてありえながったんだが、コロナはころっと態度を豹変させた。

大歓迎の日本人が敬遠されるにいたったのである。今は世界中に蔓延(まんえん)して、インド本国も他国を感染国と差別待遇できないどころか、自らも敬遠される立場になってしまった。

今、日本では、医療従事者への差別が問題になっているが、尊い人命を救う立場の白衣の天使が感染を危惧され、差別待遇を受けるなんて、嘆かわしいことだ。

インドでも、医療従事者への暴力沙汰は起きている。そのために、モディ(Narendra Modi)首相は医療従事者に拍手を送ろうと、自らビデオで鼓舞表明、国民にクラップを促したのであった。

防護服も十分でない中、命がけの臨戦態勢で治療にあたっている医療現場の人々、身内に医者がいるだけに、こういう理不尽な差別は、真っ向から糾弾されてしかるべきだと思う。

まったく、こうした危機時ほど、人間の真価が問われることはない。命の大切さを身に染みて痛感するとき、自らの危険を顧みず、一人でも多くの命を救おうと奮闘している医療従事者は、称揚されてこそしかるべきで、差別待遇を受けるなんて、言語道断だ。

最後に、Rapper Big Dealのコロナ差別がテーマの新作動画(ヒンディー語・英訳付き)を掲げておく(youtube.com/watch)。

「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家でホテルを経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは感染していません。また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長しました。4月23日現在、インドの感染者数は2万1797人、死亡681人。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のまま載せています)。