インドの感染者数、2万人を突破!マハラシュトラ州が最悪(8)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年5月1日】本日22日付で、インド全土の感染者数がついに2万人を超えた(2万0178人、死者645人)。この数日間、1日1500人前後で急増、予想したよりも早く、2万人台に乗ってしまった。

わが愛しのベンガル海。ロックダウンでひと月まみえず、恋しさは募るばかり。

西インドのマハラシュトラ州(Maharashtra、州都は巨大港湾都市ムンバイ=Mumbai)が最悪で5221人、日本とほぼ同人口だが、日本よりずっと速いスピードで日本の半分弱に達してしまった。ラッパーの息子が娯楽産業のメッカでもあるムンバイ(感染者3754人)に住んでいるので、気が気でない。

もちろん、ロックダウン(都市封鎖)下の今は、ライブもままならず、もっぱら作詞作曲の創作活動に籠城専念しているが、ボンベイ(Bombay、ムンバイの旧名)が本拠地のヒンディ映画界(ハリウッドをもじって「ボリウッド」と称される)でも、プロダクション中止で3000クロール(クロールは1000万の単位で、日本円にして約420億円)もの膨大な損失が出ているらしい。

金融ハブ、ムンバイはボリウッドはじめの巨大娯楽産業のメッカでもあり、ラッパーの息子はここを拠点に活躍する。現在、コロナ感染者数最悪の大都会で、籠城を強いられている。

ただでさえ浮き沈みの激しい芸人稼業、スーパー映画スターですら、コロナ禍でノーワークを強いられているのだから、息子の窮状が思いやられる。ムンバイはインド切っての物価高の大都会でもあるのである。

出稼ぎ労働者が多いことでも知られ、ロックダウンで失職、行き場を失った何万という巨大集団が臨時バスに鈴なりになって乗り込み、生まれ故郷の各州に移動、警官隊に消毒液の白い放水を浴びせかけられている光景は、動画チェックする当方をも震撼させた。まさに密も最大中の密、日本の居酒屋どころでない。おお、怖!

ムンバイには、アジア最大のスラム(Dharavi)もあり、既に感染者が101人も出ているが、6畳ひと間程の不衛生な空間に家族6、7人が押し込まれているのから、ゾッとする。

3月半ばに首都デリー(Delhi)で行なわれたイスラム集会の集団感染が各州に散らばった経緯から、ヒンドゥ教徒の中には、暗黙に犬猿の仲であるムスリムを責める空気も生まれており、インドはただですら問題だらけ、こういう危機下になると、日頃燻っていた火種が噴出する。

各地でコロナ暴動、出稼ぎ労働者がロックダウン延長に抗議したり、医療従事者への差別攻撃、小競り合いが頻発している。亜熱帯という土壌ゆえ、カッと頭に血が上り、手が出やすいのである。

ロックダウン下、負けずに動画2作をリリース、コロナ差別がテーマのヒンディラップが話題を呼んでいるわが息子のRapper Big Deal。

さて、ロックダウンだが、5月3日以降、また延期はありうるだろうか。世界最大規模のロックダウン実験、人口13億7000万人の全土の完全封鎖を試みたインド、巨象と畏怖される成長経済がストップしてしまったわけだから、痛い。

1日当たり日本円にして5600億万円(4000億ルピー)もの莫大な損失が出ているとも言われる。経済成長率も、米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)によると、コロナ後は1.6%との予想が出ており、前の予想の3.3%を下回り、なんと30年前に逆戻する低成長率だ。

それ以前にも、不景気で消費が冷え込み、花形産業である自動車業はじめの低迷が懸念されてきたインド。長年トップを独占してきた日本のスズキの子会社、マルチ・スズキ社(1981年の設立当初はインド政府との合弁会社だったが、2002年にスズキが子会社化、2006年にインド政府が株売却で民営化)でも販売台数が大幅減、このたびのコロナ禍が追い討ちかけて30%減産と、苦戦を強いられている。

近年の減速経済を鑑みると、人命優先で全土封鎖に踏み切ったインド政府としても、そういつまでも続けるわけにもいかず、グリーンゾーンでは、オープンか、若干緩める措置に出るのではないかと推測される(ただし、感染急増が止まらなければ、5月末までのロックダウンも十分ありえる)。

既に、コロナフリーのゴア(Goa、西インドの高名なビーチリゾート地)や、北東インドのマニプール州(Manipur)は解除に向けて動き出している。感染者数78人の当州も、全土に3日先駆けて封鎖に踏み切っただけに、グリーンゾーンの当地プリーは恩赦を期待したいところだ。

日課のベンガル湾散策を禁じられ、ストレスが溜まる一方の憐れな在留邦人に、州首相さま、何卒情状酌量を!(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家でホテルを経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは感染していません。また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長しました。4月30日現在、インドの感染者数は3万1787人、死亡1008人。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています)。