インド、相当数の貧民にコロナ抗体?秋に第2波の予測も(9)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年5月4日】当オディシャ(0DISHA)州は本日4月24日でロックダウン32日目に入った。当地プリー(PURI)タウンに関しては、今のところ感染者は出ておらず(初期に30キロ離れたプリー地方のピプリで一人、既に回復)、封鎖当初東浜のメインロードから車や人が消えて、緊張が走ったのに比べると、バイクや自転車の行き来も増えており、通行人もちらほら見かけるようになった。

著者お気に入りの居酒屋チェーン・鳥貴族(大阪が本社だが、首都圏進出で人気に火がついた)。日本の友人たちと旧交を温めるのに利用、息子も東京・六本木店のヤキトリが大好物だった。お通しを出さず、全品298円(税別)の格安さが人気の秘密。今、直営全394店が5月6日まで臨時休業を強いられている(画像は東久留米店で、ウイキペディアより)。

ただし、州全体では90人と増加、北隣の西ベンガル(WEST BENGAL)州から持ち込まれたもので、厳重な警戒網を抜けて森林地帯から侵入されたのでは、州政府もお手上げである。

さて、人間はどのような環境にも慣れるもので、私もひと月余過ぎて敷地内から一歩も出られない事態に順応、こうなったら新型コロナとの共存の道しかないかとの諦観(ていかん)に至っている。

インドよりひと月早く始まった日本は、新型コロナ一色に辟易(へきえき)している人もいるはずだ。私の知人友人の中にも、あまり気にしないという人もいる。どんな環境下であろうも、人は日常生活を営んでいかねばならず、生きていくためには、ケ・セラ・セラも必要だ。

スウェーデンのように、ロックダウン(都市封鎖)なしで集団免疫を作ってしまおうという大胆な試みをしている国もあり、60万人もの感染者が出るリスクと背中合わせというが、自由を剥奪(はくだつ)されていない同国民に一抹の羨望も覚える。

著者は日本一長命のバンド「アルフィー」(The ALFEE、1973年結成、1983年に「メリーアン」がヒット)のファンで郷里福井で行われたコンサートにも参加したが(写真はその会場となった福井市内のフェニックス・プラザ、2015年春)、今年の春ツアーは5月中旬まで中止、以後は状況を見て決めていくようだ。ライブ回数史上最多の2700回以上を誇るおじんバンド、リーダーの高見沢俊彦(たかみざわ・としひこ)さんの華麗なエンジェルギター演奏は痺れる。

世界最大規模のロックダウン実験に踏み切ったインドにしてみれば、13億人以上の人口密度からも言っても、考えられない真逆の試みだが、日頃から伝染病が蔓延(まんえん)している不衛生な環境下、その分、免疫力は強いはずで、相当数の貧民に新型コロナ抗体が既にできているとも、推測される。

インド全土で2万3000人以上という数字は氷山の一角で、発熱症状があっても、路上生活者や貧民には、医者にかかる金もないし、検査漏れは膨大な数に上るはずである。インドに渡航歴のある人なら、口をそろえてこの数字は信じられないと言うはずだ。

何せ、日本の外務省のインドへの渡航勧告は、まだレベル2、不要不急の渡航は避けてください、程度なのだ。

ちなみに、アメリカの調査によると、新型コロナは湿気や紫外線に弱いという結果も出ており、5月からインドは酷暑本番に入るだけに、もし、これがほんとなら朗報だ。こちらのメディアでも、来たるモンスーン(雨季、6月初旬から)が新型コロナを一掃するとの報道もあって、最初は、湿気があるとかえってバイ菌が繁殖しやすいんじゃないかと信じられなかったのだが。ひょっとして当地に感染者が出ていないなのは高湿度のせいもあるんだろうかと、かすかな希望を持ったりする。

ミュージシャンにとっては、試練のとき。ライブもままならない新型コロナ下、Rapper Big Dealはめげずに、オンライン・ライブを開催中。

日本のとある見識者の予言によると、6月には一旦収束して3カ月は大丈夫だが、秋にまた繰り返し、各国は再ロックダウン、スペイン風邪のように第3波まで来て、世界は開けたり閉めたりの繰り返し、経済は無論大打撃、2022年あたりまで続いて、もう元の世界には戻らないと言うのだが。

居酒屋で友人と一杯も今後は望めないのだろうか。安心して皆と会えた当たり前の日常がいかに貴重だったか。海が見れないこと、夫に未来永劫(えいごう)に会えないこと、いつでもそこにあると当然視してきたことが叶わない今、普通がいかに平和だったかと、いまさらながらしみじみ感じ入る。これまでのように、日印自由に行き来できなくなるのも辛い。これから2年間はどちらかの国に縛られ、自由に動けず、忍耐を強いられるということか。

新型コロナ戦は、表の激闘だけでなく、個々人の内面に否応なく問いかける、インナーウォーも強いているようである。命の大切さを身を持って知る緊急事態下、限られた時間の中で何をしていくか、自分にとって一番大切なことは何か、日常にあっては埋没して目を背けていた人生の真の意味を探る喫緊(きっきん)の要に迫られている。

予言が当たらないことを祈っているが、直感力に秀でたベストセラー作家氏、先にオリンピック中止と東京封鎖も的中させていたし、私個人は結構信じているので、内心戦々恐々なんである。
(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家でホテルを経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは感染していません。また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長することを決めました。これにより延べ54日間となります。5月3日現在、インドの感染者数は3万7776人、死亡1223人。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています)