インドの日系密集地グルガオンの邦人、脱出するも帰印できず、苦慮(10)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年5月6日】現地コロナルポも、10回目を迎え、ここらでわが居住地プリー(Puri、東インド・オディシャ州=East India・Odisha)のみならず、日本の読者諸氏にも、興味を持ってもらえそうな首都圏切っての経済特別区(SEZ=Special Economic Zone)、デリー(Delhi)から30キロ西に離れた衛星都市・グルガオン(Gurgaon District、ハリヤーナ州=Haryana=所在、現在は地方語読みのグルグラム、人口150万人、日本の港区くらいの大きさ)のコロナの現状について、報告したい。

地元デベロッパーのDLFが開発したサイバーシティの巨大ビルには、大手IT企業が多数入居している。

というのも、グルガオンは日系企業が最大数進出している、インド屈指の経済発展都市として、つとに名を馳せているからである。代表的なものでは、パナソニック、オムロン、ダイキン工業、ユニ・チャームなどの製造業が目立つが、他に物流、建設、金融、サービス、食品他450社以上が多岐にわたる業種を展開、ここに現地本社や、支社・拠点、工場を構えているのだ。

日系企業だけでなく、コカコーラやペプシ、IBMなど錚々(そうそう)たる外資系大企業も拠点を持ち、地元デベロッパー、DLFが東京ドームの約26倍の広大な敷地に開発したビジネス・商業区画、サイバー都市も形成されている。最新のビル設備を誇る同サイバーシティには、世界のトップ企業がひしめいているのである。

元々、荒れた農業区だったのを、州政府がリライアンス財閥(Reliance Industries Limited、主要産業は石油開発)と組んで共同開発、日系企業の一番手は、1970年代早々と生産工場新設に乗り出した軽自動車のスズキだった。

DLFサイバーシティは、緑との調和の美しい近代的に開発されたコーポレート・パークで、フォーチュン500社にランクインされるようなトップ企業が拠点を持ち、未来都市のようなモダンな様相はインドの経済成長の象徴とされている。

整備されたオフィス街と並んで、商業地区も発展が行き届き、買い物にも便利、外国企業から見れば願ってもない職住環境で、拠点として人気が高いのもうなづける。その他の未発展の地方から見たら、正夢のような、別世界の新興都会なのである。

高層の高級マンションを根城に、インド全土の在留邦人(9838人)の半数近く(4805人)が、ここに暮らしているという。首都のインディラ・ガンディー国際空港までメトロで繋がり、車だとたったの30分という地の利や、ショッピングにも便利、日本食レストランや日本食材店も揃っているようだ。ただし、暮らし向きは快適のようだが、発展都市の宿命で、大気汚染に関しては悪名高い。

さて、4月29日現在、ハリヤーナ州(人口2500万人)の感染者数は296人(グルガオン51人)、州内の9のホットスポットゾーン(containment zoneとbuffer zoneに分けられる)の住民は自宅に封じ込められ、買い物にも行けない食料配給制、4月17日には、全家庭訪問の強制スクリーニング・システムまで導入された。

隣接するデリー準州(人口2175万人)が現在、感染者が4000人以上と最悪のマハラシュトラ州に次ぐ規模、首都帰りの人が持ち込むせいで増え、州境は既に封鎖された。インド2位の感染悪州に隣り合わせるだけに、ハリヤーナ州政府も神経を尖らせざるを得ない。何せ、売りの経済特区を抱えているから、守り抜かなくてはならない。

グルガオンの日系企業によっては、在宅勤務を取り入れはじめ、急遽、社員を帰国させたところもあるようだが、インド政府の政策で、一旦出国させてしまうと、当分入国が叶わないため、全員を帰すことはできず、苦慮を強いられているようだ。

知人のインド赴任歴2年の駐在員氏は、4月1日に日本航空の臨時便でかろうじて出国、グルガオンの自宅マンションから車で空港に向かったが、途上パトカーが何台もサイレンを鳴らしながら、物々しい雰囲気で通り過ぎ、デリー準州との州境では、駐インド日本大使の移動許可を特別要請する親書を提示して、通行を許されたという。

インド政府は既に、国際便を停止していたため、日本政府が特別要請した往路のみの臨時便だっただけに、空港はガラガラだったそうな。

4月3日からの自国政府による2週間の強制隔離を間一髪で免れ、無事帰国の途に着いた氏、なんともラッキーなことではあった。しかし、いつ現地に戻れるかわからないというジレンマ付きで、インドに残してきた部下の采配にリモートで指示の日々が続く。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長することを決めました。これにより延べ54日間となります。5月5日現在、インドの感染者数は4万2836人、死亡1389人。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています)

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