インドの2000万都市、感染爆発寸前の地から親子で脱出劇模索(13)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年5月15日】5月10日、インド全土の感染者数が6万人を突破(6万2939人、死者2109人)、2日前の8日に1日5000人以上と最多を記録したのに比べると、4000人以下とやや減少傾向にあるものの、今後の推移を見ないことには、増減のどちらに振り子が傾くかはわからない。

屋上から望むベンガル海は爽快、日頃滅多にルーフに昇らないが、長年忘れていた穴場、こんな近くに海が見える絶好の見晴らし場があったことに改めて感激、蒼く霞む真夏の海原に胸を衝かれるような郷愁を覚える。

全土の感染者数の3分の1を占めるレッドゾーンNo.1州が西インドのマハラシュトラ(Maharashtra)で、2万人を突破(2万0228人中、死亡者数779人)、特に2000万人都市ムンバイ(Mumbai、旧ボンベイ)が最悪、感染者の半数以上が州都に集中、赤も赤、どぎつい赤、真っ赤っ赤の危険度、感染爆発一歩手前と緊急事態宣言前騒いでいた東京を、比率から言っても、短期間で追い抜いてしまった。

金融ハブで巨大港湾都市のムンバイには、既に何度も触れているが、息子が住んでいるので、気が気でない。実は同市発の成田行き全日空便の母子とも航空券を所持しているのだが、現状では、どう見ても当日6月8日に飛ぶとは思えない。

仮に臨時便が運航されたとしても、日本での2週間の強制隔離や、公共の交通機関が使えないことを考えると、ためらってしまう。それに、この時期、海外帰りは敬遠されるだろうし、家族や友人にも迷惑をかけてしまいそうである。

あと、ホテルのことを考えると、ほっぽっといてオーナー母子だけさっさと逃げ帰ることにも、躊躇してしまう。スタッフの処遇も考慮に入れないといけないし、休業要請で無収入の今、オーナー代理の甥っ子のみにすべてを押し付けて、ハイ、サヨナラというわけにもいかない。

感染数最悪のムンバイでステイホームに徹する息子のラッパー、Rapper Big Deal。食品購入もネット越し、外出はATMでのキャッシュ化時のみ。

もちろん、最悪のケースを想定すると、やれ、ホテルだ、スタッフだのといっていられず、命の危険から身を守るため、サバイバル本能が働いて、日本への逃亡を余儀なくされることもありうるだろうが。

それともうひとつ、4月に予定していた便が欠航になりインドにとどまる羽目を余儀なくされたのは、現地在住者として最後までつぶさに見届けて日本の読者に報告しろということかとも思っているのだ。つまり、書き手としての使命、千載一遇の機会を逃さずに、在外者として実態観察、貴重な体験を日本に伝えるということである。

それならば、インドの感染爆発、しかと見届けてやるぞー、いぇーい!という気合いの入った、少し不謹慎なのだが、ジャーナリスト魂は面白がっている部分もあって、医療従事者にはこっぴどく叱られそうなのだが、歴史的異変にインドに居合わせたことを奇貨として、書き物に活かしたいと思う自分がいる。

それはさておき、日本国領事館から随時、コロナ関連情報が入っており、3月末から現在に至るまで、日本航空や全日空の往路のみの臨時便が、デリー(Delhi)やムンバイ、バンガロール(Bengaluru)から何便か出ており、今後も運航されることは間違いない。これまで、遠隔地の在留邦人には、ロックダウン(都市封鎖)で出港地まで飛ぶ手だてがないので、ハナから無理と思い込んでいた私だが、この間チャーター便を領事館でアレンジしてもらえることがとわかった。費用は無論、自分持ちだが。

以来、密かに脱出劇を目論み始めた私、東インドの当地プリー(Puri)は目下安全だが、感染最悪のムンバイにいる息子を救出しなければならないとの母性本能、子を守らんとする女親の防衛本能が働いて、推理作家よろしく、綿密に筋書きを練り出した。下手に動いたら危険との思いもある一方で、脱出劇に賭けるヤマっけも湧いてくる。

さて、無事母子の脱出なるか、わくわくスリルに満ちたドラマに乞うご期待!成功の暁には、臨場感ある脱出ルポを速やかにお届けしたい。

●当オディシャ(Odisha)州の感染者数は10日現在で294人、急増したのは、州政府が州外に出稼ぎに行ってロックダウン下、帰郷できなくなった多数の労働者を引き受けたせいである。次回に当州の現状についての詳細をお伝えしたい。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長することを決めました。これにより延べ54日間となります。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

5月13日現在、インドの感染者数は7万4281人、死亡2415人。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」と分類していますが、原稿では、日本向けなので、すべてを「ロックダウン」と総称しています。また、政府は12日に17日以降の3度目の延長の意向を発表しています)

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