インド、100万人突破予想も、2段階で緩和進む(26)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年7月7日】7月3日、無事、山車祭の帰社祭が終わった。コロナ下、よくぞ敢行したものである。これで当地プリーの名高い伝統行事は来年以降も催行継続と、守られることになった。

「ホテルラブ&ライフ(Love & Life)」の別棟のビル2階のコーナールームで、ムンバイ帰りの息子は隔離義務を遂行中。休業要請106日に突入し、起死回生の望みも薄まる中、すこぶる元気な息子の全館貸切だ。

しかし、当オディシャ州の感染者数は増大の一途を辿り、ついに8000人を超えてしまった(8106人中死者29人、回復者5502人)。

前回のコロナ余話で触れたグルガオン(Gurgaon)帰りのスーパースプレッダーによる集団感染が87人に広がったのをはじめ、ヘルスセンター(保健所)での感染が相次ぎ、1日561人の最多記録を更新、今月中に1万人台に達するのは避けらない見通しとなってきた。救いは何度も言っているように、当州は回復率が高めなことで、実質的な患者数は2500人ちょっとである。

インド全土においては現在、65万人近い勢い(64万8700人)、死者も1万8000人を超えた(1万8655人)。ワースト3は、マハラシュトラ州(Maharashtra、18万7000人)、タミルナドゥ州(Tamil Nadu、10万3000人)、デリー(Delhi、9万2175人)である。

来月中には、ミリオン超えは間違いなく、動画なら、祝ミリオン突破!でおめでたいことだが、汚名の勲章である。

1日最多2万人超の記録を更新したばかりだが、救いは回復者もほぼ同数、相殺されていることで、致死率も他国に比べ低い。

ここまで来たら、感染者数が跳ね上がるのは、止められない、いかに死者数を最小限に食い止めるかだけの問題、である。

ローカル衛星放送局(カリンガTV)にインタビューされる息子、ラッパービッグディール(Rapper Big Deal)、オディシャ州では、有名な人気ラッパーだ(2017年2月)。コロナ禍を乗り越えて、またテレビ取材される日がやって来るだろうか。

中央政府は5月末に一旦ロックダウン(都市封鎖)を解除し、段階的緩和措置に入っており、今もアンロック(封鎖解除)は続いている。7月6日には、ウッタルプラデシュ州(Uttar Pradesh)政府が中央政府の緩和策よりひと月遅れて、アーグラー(Agra)のタージ・マハル(Taj Mahal、世界七不思議のひとつとして名高い17世紀のイスラム妃廟)も4カ月ぶりに営業再開するとの速報も伝わっている。

ただし、国際線が再開されていないので、あくまで国内旅行者向けに、人数を制限してのことである。感染拡大が止まらないさなか、一体、物見遊山のローカル旅行者がどれくらい訪れるものか。

とはいえ、観光業に携わる当方にとっても、大変に鼓舞されるニュースではある。

各州ごとに、方針が違うので、ロックダウンを再導入した都市もあるし、当州に限っは、緩和措置も夜間外出禁止令がやや緩められたくらいで、7月末までロックダウン延長みたいなもんである。

ホテルの営業再開の目処もたっていない。唯一明るいニュースといえば、息子が感染ワースト都市ムンバイから無事帰省したことで、すこぶる元気、現在別棟のホテルで隔離9日目に突入し、5日後には、私邸に迎え入れられることである。

●コロナ余話1、ワクチン実用化に向けて人体実験開始
インドで、「コバキシン(Covaxin)」という新型コロナウイルスのワクチンがバーラト・バイオテック社によって開発され、話題になっている。同社はこれまで、豚インフルエンザやロタウイルスなどのワクチンを開発し、世界中に40億万本を供給してきた実績がある。

インドは世界首位のワクチン製造国て、ジェネリック医薬品製造大国でもあるのだ。ポリオ、肺炎、結核、はしか、おたふく風邪などのワクチンを世界中に送り出している産出大国である事実は、意外に知られていない。

動物実験で免疫効果と安全性が認められたというインド独自のコバキシンに、期待が高まっている。

●コロナ余話2、バッタの大群で食糧危機?
6月、首都デリー近郊のグルガオン(Gurgaon)でのサバクトビバッタの繁殖が話題になった。空を埋め尽くすバッタの大群、4万5000匹の襲撃により、3万5000人分の食糧が食い尽くされると言われており、州政府は、ドローンで殺虫剤散布と対応を迫られ、コロナ禍で臨戦体制下、二重に頭痛の種に。動画で観たが、東アフリカ渡来の空を覆う害虫の氾濫は壮観だった。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

7月6日現在、インドの感染者数は69万7413人、死亡者数が1万9693人。すでにイギリス、ロシアを抜いて、アメリカ、ブラジルに次いで3位になっています。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決めています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。また、タージ・マハルも開放する方針を撤回して、引き続き閉鎖されています)