インドで封鎖解除後初のベンガル湾散策、街は活気なく廃墟?(28)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年7月21日】当オディシャ州(Odisha)の感染増大が懸念される中の7月11日(112日目)、珍しく早起きしたので、思い切って浜に出てみることにした。

東西に真一文字に伸びる海岸線は清々しく、壮大、ほとんど無人の浜はコロナ下の散策にもってこいだった。

ムンバイ(Mumbai)から帰省した息子は依然、別棟のホテルで隔離義務を遂行中だが、早朝の散歩を日課に取り入れているらしく、すこぶる健康だ。先月から、外出禁止疲れに夏バテが加わり、雨季の低気圧症にもやられ、青菜に塩状態の私は、見習って体調改善のため、朝の散歩を日課に取り入れることにしたのである。

12日の2日目、周辺のホテル街もざっと視察を済ませたが、長いロックダウン(都市封鎖)下、町には活気がなく、休業要請を強いられ続けているホテルは大小問わず、閉館状態で寂れた感じ、同業者として同病相憐れむ感を禁じ得なかった。

普段通り客が入っていれば、早起きのインド人達で活気を呈するはずなのだが、どのホテルの窓も閉め切ったままで、客が顔を覗かせたりすることもない。いつもなら、界隈のレストランも、朝食へと繰り出したローカル旅行者で賑わうはずなのだが、レストランも閉め切ったまま、まるで町一帯が廃墟と化したような寂しさだった。

人気のないベンガル海は壮麗、雨季の荒波で白く泡立っていた。素足を浸したベンガルの潮はひんやりと心地よかった。

これが、私が33年暮らしたプリー(Puri)の東浜のホテル街とは信じられない。昨年5月のサイクロンの後だって、地元民は不屈の精神で倒木で塞がれた路上に繰り出し、後片付けに精出し、被災後も活気に満ちていたものなのに。

荒んだ気持ちになるのを禁じ得なかったが、およそ4カ月ぶりに目の当たりにしたベンガル海は、数える程しか人がいないせいで、壮大、変わりない美しさが、そこにあった。折柄、雨季に突入しており、オリーブグレーの澱んた大海は、錆がかった白波を豪快に押し寄せ、波飛沫で海はもやっていた。

波打ち際で漁師の少年が竿のない糸のみを海中に投げ入れる簡易漁で、小魚採りにいそしんでいた。沖には10艘ほどの漁船が出ており、 雲に隠れた太陽から薄ら陽が水平線に反映して光った。

3ツ星ホテル「ホリデーリゾート」のベーカリーもシャッターを下ろしたまま(アップルパイが美味だった)。背後の5階建てホテルは、結婚シーズンともなると、華やかな盛況に満ちていたのに、閑散と静まり返っていた。

40分程の散歩中、出会った地元民は10人かそこら、これだけ人が少なく、静まり返っているなら、短時間の早朝散歩は問題ないだろうと、思った。

これまで自分に厳格に外出禁止を強いてきたのは、ひとつには、外国人居住者で、それも年配者、感染症に地元民ほど免疫力がないという理由があった。

何せ、マラリア、赤痢、肝炎(2度)体験者、である。近年は、院内感染でウイルス性肺炎にも罹患している。

インドに移住以降、すっかり虚弱体質になってしまった当方ゆえ、人一倍自衛本能が働いてついつい神経質にならざるをえなかったのである。

しかし、息子が戻ったことがいい刺激になって、4カ月近くに及ぶ外出禁止をようやっと解くことができた。

12日現在、インド全土の感染者数は85万人(死者数2万2674人)、当オディシャ州は1万3121人(死者数64人)である。

●コロナ余話/映画界のファースト・ファミリーの感染

インドの国民的スーパースター、ムンバイを本拠地とするヒンディ映画界・ボリウッドのベテラン名優、アミタブ・バッチャン(Amitabh Bachchan)の陽性が発覚し、話題を呼んいる。子息でやはり俳優のアビシェク(Abhishek Bachchan)も感染、父子は市内の私立病院に入院中、ツィッターで公表した2人に、ファンからの見舞いコメントが多数寄せられた。幸いにも、症状は軽いらしく、ファンもひと安心、一刻も早い全快を祈るコメントも殺到した。

ムンバイ市内の高級住宅地にあるバッチャンファミリーの大豪邸は封じ込め(containment)ゾーンと化し、アミタブの妻で元女優・議員のジャヤ(Jaya Bachchan)、嫁のミス・ワールド優勝の美人女優アイシュワルヤ(Aishwarya Rai Bachchan)も、自宅隔離中とか。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

7月16日現在、インドの感染者数は96万8857人、死亡者数が2万4914人、回復者が61万2768人、アメリカ、ブラジルに次いで3位になっています。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、さらに30日に7月31日までの延長を決めました。著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。また、タージ・マハルも開放する方針を撤回して、引き続き閉鎖されています)

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