インド、6300万人が感染?映画館が再開も、国際線10月末まで停止(42)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年10月13日】10月1日、新しい月が始まった。3月22日のインド全土に3日先駆けての当オディシャ州(Odisha)のロックダウン(都市封鎖)開始から、かれこれ190日以上、この半年に及ぶ長い間軟禁生活を乗り切ったことに、我ながらよくやったと、褒めてやりたい。

ベンガル湾沿いのプリーの風物詩、椰子樹。2019年5月のサイクロン後は、幹が曲がり、葉ももがれ、老残の禿げ親父のようだったが、コロナ下の大気汚染解消と、恵みの雨季で見違えるように蘇った。植物の生命力に驚かされる。人間も、このように若返えられたら、どんなにいいことか。

最初の4カ月程は文字通りの監禁生活、緊迫感もあったし、よく耐えたと思う。体調を崩した7月と、もう限界かと帰国願望に駆られた9月が一番きつかった。当初3カ月は、ホテルの休業要請で、経済的窮地にも陥った。その後、感染爆発都市ムンバイ(Mumbai)から息子が避難帰省したことで、生活は落ち着いたが、当州の感染拡大が進んだことで、不安な気持ちに駆られずにはおれなかった。

甥一家が休業中のホテルに、間を置いて2度避難、慣れない現地親族との共同敷地内生活にも、気を遣った。それにもどうにか順応して、10月のフェスティブシーズン、依然コロナ禍の渦中にあるので、何も目出度いことはないが、インド中央政府はこの度、「アンロックダウン」の指針を発表した。

映画館・展覧会、プールの開業問題だが、9月21日からオープンテアトル(屋外劇場)のみ許可されていたが、10月15日から50%の席数に限って、映画館の再開が認められることになった。ただし、西ベンガル州が既に開館を許可しているように、劇場の種類や展示規模は州の裁量いかん、また、プールはスポーツ選手の訓練用のみに使用が許可されることになった。しかしながら、国際線の再開は末まで停止、学校も当面休校が続く。

28州9連邦直轄領からなる人口13億人以上の広大な亜大陸、中央政府も、権限が強い州政府を統率するのは大変、州ごとに方針がまちまちで、感染抑制にも、中国の共産党政権のように強権発動できず、効果が上がらない。

3階のバルコニーから俯瞰する地上は、雨上がりの青空が広がり、孵化したトンボや、鳥・蝶が舞っていた。雨季も終盤で、秋の兆しの空は高く、椰子林が生き生きと美しい。これから絶好シーズンなのに、観光客の到来を期待できないのが残念。

医療体制が脆弱な地方だけに、南や東にどんどん感染拡大し、当州の南隣のアンドラプラデシュ州((Andhra Pradesh、感染者数68.7万人だが、回復者数62.2万人と高く、死者は5780人)など、最悪のマハラシュトラ州(Maharashtra、137万人中、回復者107万人、死者3万6181人)に次ぐ感染規模で、急増中の当オディシャ州(22.3万人中回復者18.6万人、死者859人、隔離義務ほかのルール違反者には、懲役2年もしくは10万ルピー=約14万円までの罰金と罰則強化案通る)も、安穏としていられない現状だ。

1日現在、インド全土の感染者数は631万人、しかし、1日の感染者数は8万人超と減っており、一時期はこの分では10万人台に達するのではと懸念されたが、まずはこの傾向が続いて欲しいと祈るばかりだ。

回復率が83%以上と高く、1日の回復者数も53万人近いことも吉報だ。9月が最悪だったと、あとで振り返って言えるような状態に落ち着いてくれるといいんだが。予断は許さないが、やっと、天井が見えてきたとほっとひと息つける事態に進展することを、祈るばかりだ。

●コロナ余話/公式発表の10倍が感染?

インド医学研究評議会は9月29日、国内での新型コロナウイルスの抗体検査の結果、これまでに6300万人超の国民が感染した可能性があることを発表した。検査は全国700以上の村落地帯に住む2万9000人余を対象に実施され、10歳以上の住民の約15人に1人が陽性反応を示したという。

インドの感染状況を巡っては、公式発表よりもはるかに深刻ではないかと指摘されてきたが、5月からロックダウンを解除し始め、経済再開にかじを切ったことは時期尚早だったとする専門家の声も出ていた。10月以降、お祭り目白押しのシーズンを控え、感染防止対策のよりいっそうの強化が求められる。

●身辺こぼれ話/カード占いに凝る

最近、タロットカードや、オラクルカード占いの動画にハマっている。最初は、退屈しのぎだったが、馬鹿にしたもんじゃない。これが意外とよく当たるというか、核心を突いたメッセージだったりする。

仕組みは簡単、関連動画をチェックして、画面に見える3枚のカードのうちから、気に入りの1枚を選ぶ。そうすると、リーダーが、選択に応じて占ってくれる。

おすすめは、宇宙の愛の光さん。ブータン在住の日本女性で、VIPのスピリチュアルカウンセラーをやっていたらしいが、仕事でベトナムに出張、コロナ禍でブータンが国境封鎖したため、帰れなくなり、ベトナムにとどまる羽目を余儀なくされたという、異色の経歴の持ち主。

ブータンや、ベトナムの小話も挟んでのカードリーディング、よく当たりますよ。興味ある方、お試しあれ。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

10月5日現在、インドの感染者数は654万9373人、死亡者数が10万1782人、回復者が550万9966人、アメリカに次いで2位になっています。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」。

18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類し、現在も「5.0」が続いています)