インド、感染者数鈍化で地元ホテル街、眠りから覚めるも客はまばら(47)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年11月17日】10月22日から、ドゥルガー女神(Durga)大祭、通称プジャ(Puja)がスタートしたが、観光聖地プリー(Puri)は予想通りガラガラ、現地生活歴32年で初めての異例のプジャ、例年ならホテルはどこも大混雑、車や人で狭いメインロードはごった返すのに、寂しいばかりだ。

アマゾンから届いたオショー禅タロット。私自身故オショーの信奉者て、過去にかなりな数の小冊子を読破している。インドの駅のキオスクで売られている安価なペーパーバックは、今のインドの若い層にもポピュラー。タロットカードは高名聖者ならではのメッセージの込められたオリジナル版。

が、本日24日、周辺ホテルの客の入り具合の偵察がてら、浜に出ると、そう多くはないものの、ツーリストが群れていた。観光客向けのラクダや馬、ゴーカートも見られ、海を目前にする砂浜に持ち出されたリクライニングチェアで寛ぐローカル旅行者の姿が目立った。

20数人が密になって群れている場もあり、少ないながら、観光客が戻りつつあるのを、実感した。背後の三ツ星ホテルのパーキングには、30台くらいの車が停められており、羨ましいことに、ルーム占拠率は50%以上と見た。州内または隣州からの自家用車で訪れた富裕層にちがいない。

中堅どころのホテルも、2室から5室に灯りが点っている。うちと変わらぬ規模のホテルも、いくつかは、客が1、2室入っているようだ。我がホテル・ラブ&ライフも2日前から7カ月ぶりに営業再開したが、まだお客さん第1号をゲットしていない。

少し焦ったが、気長に客足の回復を待つしかないと自分に言い聞かせる。まだ空ホテルが大多数だ。需要が供給に追いつくまでには、長い時間がかかるだろう。

インドのリカーショップ(通称ワインショップ)は、コロナ禍で初期休業していたが、オープン以降は盛況、飲兵衛どもが押しかけている。盗難防止用に鉄格子を嵌めたり、写真のような策を設け、厳重警備、コロナ下の今は、ワインは入手しにくい。

これまでは、このシーズン、満室になるのが当たり前で、いちいち気を揉まなくても客は自動的に来たが、こうなってみてお客さんのありがたみをひしひしと感じる。新客の到来がこれ程にも待たれる、待ち遠しく思うのも、初体験だ。今まで、何と傲慢だったことかと、反省させられる。

町は長い長い眠りからようやく覚めたように、活気に息づきだした。屋台でシシカバブを焼く香ばしい匂いが、マスク越しに鼻孔に流れ込み、7カ月ぶりのホテル・レストラン街の目覚めが感慨深かった。まだ、半睡状態だが、少しずつ完全な目覚めへと、動き出すだろう。

本日24日の全土の感染者数は781万人だが、1日あたり5万4000人超と鈍化傾向を維持、人口がインドの4分の1のアメリカが中西部の拡大で8万5000人超と、はるかに上回った。インドの実質患者数はミリオンから下落し、80万人を切った。最悪州のマハラシュトラ(Maharashtra)も、実質数18万人と、減少傾向にある。

夕刻、ベンガル海に出ると、引き潮の浜は、波打ち際が広範囲に現れ、残照を反映し、美しかった。

●身辺こぼれ話/オショー禅タロットカード届く

動画のタロットカード占いにハマっていた昨今、自分でもカードが欲しくなり、調べた末に、インドの聖者オショー(旧名バグワン・シュリ・ラジニーシは1970年代から1980年代、西洋信者の間で一世を風靡した聖者で、1990年没、西インドのプーネ(Pune)にアシュラム在)の名前が冠されたオリジナルデッキを見つけ、レビューがよかったので、Amazonで購入した。

新品だと、日本円にして1万5000円もするので、セカンドハンドの1200円のものにしたのだが、1週間程たって届いた品は、カード79枚のほかに、ミニガイド付きだった(オショーにまつわる印刷物その他を一手に請け負うオショー国際財団発行)。

早速、シャッフルし、任意に1枚選んでみたら、「クリエイティビティ(creativity)」のカードが出た。低調だった先月に比べ、創作意欲が高まり、小説も捗るので、的を得ている。初心者ゆえ、指針書を読んでの研究が必要だが、当面は、任意の1択を楽しむことにした。ちなみに、息子に選んでもらったら、「ラバーズ(lovers)」か出た。

●極私的動画レビュー/故根津甚八ドラマ「もどり橋」

動画にアップされている無料邦画や日本ドラマに暇さえあれば耽溺しているが、最近観て面白かったのは、故根津甚八(ねづ・じんぱち、1947-2016)と樋口可南子(ひぐち・かなこ)コンビのNHKドラマスペシャル、「もどり橋」(1988年)だ。

主演が、昔ファンだった根津甚八で、脚本家が好みの故市川森一(いちかわ・しんいち、1941-2011)というので、これは見逃せないと思った。

期待通りの出来栄えで、京都の一条戻り橋にまつわる蘇り伝説をモチーフにした幻想的で美しい作品は芸術級、根津甚八の個性ある演技が光った。唐十郎(から・じゅうろう)主宰の状況劇場出身だから、演技力には、定評がある。樋口可南子も可愛らしくて、入浴シーンのオールバックヌードは、美しくて見とれた。

根津甚八は晩年、難病に苦しみ、鬱も患ったようだが、死の1年前の2015年、「Goninサーガ」(石井隆=いしい・たかし=監督)で銀幕復帰、俳優人生に思い残すことなく幕引きできて、吹っ切れたようだ。

俳優にとっては命の顔を、右目直筋下肥大の手術を受けたことで失い、整形を繰り返すが元に戻らず、2010年の引退に繋がる不遇の晩年を送った故人、二枚目俳優としてもてはやされた絶頂期からの転落と、彼の人生そのものが、芝居を上回るドラマチックさだった。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

10月30日現在、インドの感染者数は776万1312人、死亡者数が11万7306人、回復者が694万8497人、アメリカに次いで2位になっています。アメリカの感染者数は840万7702人、死亡者数が22万3032人、回復者が335万3056人です。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。また、インドでは3月25日から4月14日まで「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日まで「ロックダウン2.0」、5月1日から17日まで「ロックダウン3.0」。

18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類し、現在も「5.0」が続いています)