丸善日本橋で宮本忠夫・雅夫親子が「九谷」展、雅夫が来場

【銀座新聞ニュース=2020年11月25日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は11月25日から30日まで3階ギャラリーで宮本忠夫さんと宮本雅夫さん親子による「九谷」展を開く。

丸善・日本橋店で11月25日から30日まで開かれる宮本忠夫さんと宮本雅夫さん親子による「九谷」展に出品される宮本忠夫さんの「九谷色絵鶴亀文珈琲碗皿」。

石川県無形文化財保持者で、佳作によりその作品が「幻の九谷」と呼ばれる、九谷焼の陶芸家で、「真生窯」を主宰する宮本忠夫(みやもと・ただお)さんと子息の宮本雅夫(みやもと・まさお)さんが作品を展示する。「一切の妥協を許さない二人の作品、そして、父から子へ伝え継ぐ心と技」を鑑賞してほしいとしている。

ウイキペディアなどによると、九谷焼は石川県南部の金沢市、小松市、加賀市、能美市で生産される色絵の磁器で、大聖寺藩領の九谷村(現石川県加賀市)で、良質の陶石が発見されたのを機に、加賀藩の命により、藩士の後藤才次郎(ごとう・さいじろう、1634-1704)を佐賀・有田へ技能の習得に赴かせ、帰藩後の明暦初期(1655年ころ)、藩の殖産政策として、江沼郡九谷村で開窯したのが始まりとされる。

しかし、約50年後(18世紀初頭頃)突然、廃窯となり、窯跡は加賀市山中温泉九谷町にあり、1号窯、2号窯と呼ばれる2つの連房式登窯と、19世紀に再興された吉田屋窯の跡が残っており、この間に焼かれたものは、現在「古九谷(こくたに)」と呼ばれている。

古九谷の廃窯から、約1世紀後の1807年に加賀藩が京都から青木木米(あおき・もくべい、1767-1833)を招き、金沢の春日山(現金沢市山の上町)に春日山窯を開かせたのを皮切りに、数々の窯が加賀地方一帯に立った。これらの窯の製品を「再興九谷」という。

同じく宮本雅夫さんの「緑彩真麗線文鉢」。

同じ頃、能美郡の花坂山(現小松市八幡)で、新たな陶石が発見され、今日まで主要な採石場となった。これらの隆盛を受け、それまで陶磁器を他国から買い入れていた加賀藩では、1819年に磁器を、1820年に陶器を、それぞれ移入禁止にした。

1832年ころに小野窯に陶匠として招かれる、寺井村(現能美市寺井町)生まれの九谷庄三(くたに・しょうざ、1816-1883)は能登の火打谷(現志賀町)で、能登呉須と呼ばれる顔料を発見し、後の九谷焼に多大な影響を与え、1840年ころに故郷に戻り、寺井窯を開いた。ヨーロッパから入った顔料を早い時期から取り入れ、彩色金欄手を確立し、庄三風と呼ばれる画風は後にヨーロッパに輸出される九谷焼の大半に取り入れられることになる。

明治時代に入り、九谷焼は主要な輸出品となり、1873年のオーストリア・ウィーン万国博覧会などの博覧会に出品されると同時にヨーロッパの技法も入り込んだ。1872年ころから型押しの技術が九谷焼にも取り入れられ、1892年ころから、獅子を始めとする置物の制作が盛んとなり、大正時代になると型が石膏で作られるようになり量産化が進んだ。

また、明治維新による失業士族の授産施設として1872年に誕生した金沢区方開拓所製陶部は、砂子吉平(すなこ・きちへい、生没年不詳)、初代諏訪蘇山(すわ・そざん、1851-1922)らの参加を得て成果を上げ、1876年には「石川県勧業場」と名を改めた。1887年に金沢工業学校(現石川県立工業高校)が開校し、次代の陶芸家が育成されるようになった。

現在、九谷焼は陶器と磁器があり、上絵付けを九谷でしたものを「九谷焼」と呼んでいる。陶器は原料が陶土(粘土)で、温かみがあり、全体に厚くぽってりした感じで、指ではじくと、鈍い音がする。一方の磁器は原料が陶石(石の一種)で、白く堅い感じがあり、薄くて軽くて丈夫で、指ではじくと「チン」と金属質の音がする。

宮本忠夫さんは1928年京都府京都市生まれ、1950年に石川県無形文化財保持者の2代松本佐吉(まつもと・さきち、1905-1988)に師事し、1979年に第26回日本伝統工芸展で初入選、1990年に第13回伝統九谷焼工芸展で優秀賞、1991年に日本工芸会の正会員に認定され、現代作家美術展(旧五都展)に委嘱出品、2001年に「伝統からの創造21世紀展」に委嘱作品を出品している。

宮本雅夫さんは1971年石川県小松市生まれ、1996年に東京芸術大学美術学部を卒業、日本伝統工芸展に出品し、初入選(以降、ほぼ毎年出品し、2020年まで毎回入選)、1997年に長三賞ビエンナーレで入選、1999年に日本工芸会の正会員に認定され、2002年に兼六園大茶会公募展で優秀賞(2016年に最高賞、2018年に石川県知事賞)、2005年に文化庁派遣新進芸術家在外研修員としてイタリアで研修し、伝統九谷焼工芸展で優秀賞(2006年に優秀賞、2010年に北国新聞社賞、2014年に大賞、2018年に優秀賞)を受賞している。

2010年に小松空港到着ロビー陶壁「五箇山」を制作、2013年に陶美展で入選(2015年に入選)、2016年に石川の伝統工芸展で奨励賞(2017年、2018年、2019年に入選)、全国伝統的工芸品公募展で経済産業省製造産業局長賞(2017年に全国商工会連合会会長賞)、2018年に第11回現代茶陶展でトキ(TOKI)織部奨励賞、四日市万古陶磁器コンペでグランプリ、第47回北海道陶芸展で最優秀新人賞、日本伝統工芸士会作品展で東武百貨店賞、第65回日本伝統工芸展出品作が宮内庁買い上げ(2019年の第66回の出品作も宮内庁買い上げ)となっている。

期間中、毎日11時から19時まで宮本雅夫さんが来場する。

開場時間は9時30分から20時30分(最終日は15時)、入場は無料。