中央の百貨店11月、5店ともマイナス、2カ月ぶり、幅も拡大

【銀座新聞ニュース=2020年12月2日】中央区とその周辺の主要百貨店の11月売上高(速報値、店頭ベース)は、日本橋三越、日本橋高島屋、大丸東京店、銀座三越、松屋銀座店の5店ともマイナスだった。5店舗とも減少するのは9月以来、2カ月ぶり。

11月の売上高で減少幅が30%以上に拡大した銀座三越。

10月は前年10月の消費増税後の需要減の反動で、日本橋三越と日本橋高島屋がプラスに転じたが、11月は日本橋高島屋を除いて、4店舗とも10%以上のマイナス幅だった。「新型コロナウイルスの感染が再拡大した地域においては入店客数が減少した影響」(三越伊勢丹ホールディングス)があり、「感染症第3波の影響が拡大したことにより月後半に減速した」(J.フロントリテーリング)としている。

ただ、「ラグジュアリーブランドのハンドバッグ、宝飾、時計などの高額品が引き続き堅調」(三越伊勢丹ホールディングス)、「特選衣料雑貨、宝飾品が前年実績を上回り」(高島屋)、「ラグジュアリーブランドや美術宝飾品が引き続き好調に推移」(J.フロントリテーリング)、「海外ラグジュアリーブランドへの強いニーズが全体を牽引」(松屋)するなど、高額品が堅調としている。

また、年末のおせちの予約も、三越伊勢丹ホールディングス、J.フロントリテーリング、松屋が好調に推移している。

三越伊勢丹ホールディングスの日本橋三越(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は前年同月比10.0%減(10月速報値4.2%増、確定値3.4%増、小型店舗と恵比寿三越、ソリューション統括部を含む、確定値ベースでの店舗別売上額は2019年5月から未公表)と店頭ベースでは2カ月ぶりに前年を下回った。

同じく40%以上の減少となった大丸東京店。

一方、銀座三越(中央区銀座4-6-16、03-3562-1111)は同31.7%減(同速報値26.9%減、確定値26.9%減、但し空港型免税店の売り上げを除く)と10カ月続けてマイナスとなり、減少幅が10月よりも悪化した。

三越伊勢丹ホールディングスでは、首都圏と札幌など特に新型コロナウイルスの感染が再拡大した地域においては入店客数が減少した影響で、国内百貨店の売り上げは前年マイナスとなったとしている。

また、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店では、ロイヤリティの高いお客を中心にラグジュアリーブランドのハンドバッグ、宝飾、時計などの高額品の売り上げが引き続き堅調で、年末の家の中の時間を充実させたいニーズを受けて、クリスマスケーキやおせちの予約販売も好調という。

さらに、オンライン売り上げは特に歳暮や冬物ファッションアイテムへの関心が高く、前年比約1.4倍だった。ただ、訪日外国人観光客売上高(インバウンド、免税売上高)は、首都圏店舗の売り上げ前年比が先月より下回った影響で、国内百貨店(既存店計)の売り上げも伸び悩んだとしている。

日本橋高島屋(中央区日本橋2-4-1、03-3211-4111)は同7.5%減(同速報値17.6%増、確定値17.3%増)と2カ月ぶりにマイナスとなった。

高島屋としては引き続き外出を控える動きや訪日外国人観光客売上高の大幅な減少が継続している影響により、前年を下回ったとしている。訪日外国人観光客売上高は前年比90.4%減、訪日外国人観光客売上高を除いた店頭売上は7.9%減だった。2019年11月比では、店頭売り上げは16.5%減(既存店計15.0%減)、訪日外国人観光客売上高を除いた店頭売り上げは11.2%減(同9.5%減)となっている。

商品別売上高(15店舗ベース)では、特選衣料雑貨、宝飾品が前年実績を上回り、一方で、紳士服、紳士雑貨、婦人服、婦人雑貨、リビング、食料品などは前年に届かなかった。
J.フロントリテーリングの大丸東京店(千代田区丸の内1-9-1、03-3212-8011)は同40.7%減(同速報値24.2%減、確定24.0%減)と昨年10月の消費税増税以降、14カ月続けて前年を下回り、やはり減少幅も拡大した。

ラグジュアリーブランドや美術宝飾品が引き続き好調に推移したが、新型コロナウイルス感染症第3波の影響が拡大したことにより月後半に減速した。ただ、家の中で過ごす時間を充実させたいというニーズから、おせちの予約は前年を上回る好調な推移を見せている。

訪日外国人観光客売上高(速報値)は前年比95.9%減(客数99.6%減、客単価813.4%増)となった。また、11月の大丸松坂屋百貨店合計の国内売上高(訪日外国人観光客売上高の本年と前年実績を除く)は11.9%減だった。

J.フロントリテーリングでは2017年4月から「不動産事業」を独立させて、確定ベースで伸び率を公表しており(速報値ベースは未公表)、10月の「ギンザ シックス(GINZA SIX)」や「上野フロンティアタワー」などの家賃収入は同5.2%減だった。不動産事業がマイナスとなるのは、8カ月連続となる。

松屋銀座店(中央区銀座3-6-1、03-3567-1211)は同28.6%減(同速報値13.2%減、確定13.2%減、4月は5月の確定値段階で91.4%減と公表)と10カ月続けてマイナスとなり、やはり減少幅も拡大した。

11月は、「ゴー・トゥ(Go To)トラベル」などの各種施策で銀座エリアへの来街者が増える中、引き続き、海外ラグジュアリーブランドへの強いニーズが全体を牽引し訪日外国人観光客売上高を除く国内のお客の売上高は前年に対して4割増の伸びを示した。

また、前月同様、「イエナカ消費」などを反映したリビング関連などの好調に加え、高価格帯の「おせち」の予約は2桁増、歳暮ギフトも「自家需要」として購買される動向が加わり、前年に対して2割増となるなど、コロナ禍を反映したカテゴリーが伸びた。しかし、婦人、紳士ともに衣料品が苦戦、訪日外国人観光客売上高がほぼ消滅したことで、売上高はマイナスとなった。

日本百貨店協会(中央区日本橋2-1-10、03-3272-1666)によると、国内73社196店舗(総従業員5万9790人)の10月売上高(店舗調整後)は前年同月比1.7%減の3753億5741万円で、13カ月続けてのマイナスとなった。

10月は、昨年10月の消費増税や台風の影響があった前年(17.5%減)の反動で押上げ効果は見られたが、入国規制による訪日外国人観光客売上高の消失(91.8%減、9カ月連続、シェア0.6%)が、引き続き大きなマイナス要因となっている。

一方、国内市場に限定すると、富裕層を中心に高額品が好調のほか、各社が徹底した感染予防対策の下で展開した物産展や会員施策などの企画催事に加え、「ゴー・トゥ(GoTo)トラベルキャンペーン」などが集客に寄与し、4.8%増(13カ月ぶり、シェア99.4%)とプラスに転じた。

地区別では、地方(10都市以外の地区)は4地区(関東、中部、近畿、中国)で計3.4%増と13カ月ぶりにプラスだったが、訪日外国人観光客売上高比率の高い大都市(10都市)は3.6%減だった。ただ、4都市(仙台、横浜、名古屋、神戸)では前年を上回った。

商品別では、ラグジュアリーブランドや宝飾・時計などの高額商材(美術、宝飾、貴金属:52.7%増)が牽引し、身のまわり品(8.4%増)と雑貨(4.0%増)が前年を上回った。また、家の中の暮らしを充実させる傾向から、調理用品や家具、家電を含む家庭用品(13.9%増)も高い伸びを示した。

しかし、衣料品(4.1%減)は、依然としてビジネス需要が低迷しているが、カジュアル衣料や気温低下による防寒商材などが動いた。食料品(6.8%減)はマイナスだったが、人気の食品催事が堅調で、おせちやクリスマスケーキの予約はECの高伸もあり、好調な滑り出しとしている。

全国の百貨店の10月の営業日数は前年より0.4日増の30.9日、101店舗の回答によると、入店客は11店が増え、82店が減ったとし、79店舗の回答によると10月の歳時記(秋物商戦、秋の行楽)の売り上げについては7店が増え、54店が減ったとしている。

東京地区(12社25店)の10月の売上高(店舗調整後)は同4.3%減の999億334万円と13カ月続けてのマイナスとなった。

国内89店舗の訪日外国人観光客需要の10月の売上高は同91.8%減の約21億円と9カ月続けてマイナスとなり、国内の百貨店に占めるシェアが0.6%としている。

このうち、一般物品売上高は同90.1%減の約14億1000万円で、9カ月続けて前年を下回った。化粧品や食料品などの消耗品売上高が同93.9%減の6億9000万円、購買客数が同98.7%減の約5000人と9カ月続けてマイナスとなり、1人あたりの購買単価が同549.6%増の42万円で、11カ月続けて前年を上回った。

人気のあった商品は1位が化粧品(2018年1月から2020年9月まで1位)、2位にハイエンドブランド(2018年1月から2019年4月まで2位、5月3位、6月から2020年9月まで2位)で17カ月連続で2位、3位が婦人服飾雑貨(2018年1月3位、2月4位、3月3位、4月5位、5月3位、6月から2019年7月まで4位、8月3位、9月から5月まで4位、6月から9月3位)で、5カ月続けて3位だった。

4位が食料品(3月、4月は6位以下、5月4位、6月6位以下、7月と8月4位、9月3位)で、ワンランク下がった。5位が婦人服・用品(2020年1月から2月5位、3月6位以下、4月5位、5月3位、6月4位、7月から9月5位)で4カ月連続で、同じく子ども服・洋品(2020年7月5位)が3カ月ぶりに5位に浮上した。

免税手続きカウンターの来店国別順位は1位が中国本土(2018年1月から2020年9月まで1位)、2位は台湾(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から2019年1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と2020年1月3位、2月2位、3月4位、4月3位、5月から9月2位)で、6カ月連続だった。

3位は韓国(2018年1月4位、2月から6月2位、7月3位、8月から10月2位、11月から2019年1月まで3位、2月から6月2位、7月4位、8月2位、9月から2月まで4位、3月3位、4月2位、5月3位、6月3位、7月と8月4位、9月6位)で、6月以来4カ月ぶりに3位に戻した。

4位はシンガポール(2018年1月から10月6位、11月と12月5位、2019年1月から8月6位、9月5位、10月から2月まで6位、3月5位、4月から7月7位、8月6位、9月7位)で、順位を上げた。5位は香港(2018年1月と2月3位、3月4位、4月3位、5月から1月4位、2月3位、3月から6月4位、7月3位、8月4位、9月から11月2位、12月と1月2位、2月3位、3月2位、4月、5月4位、6月5位、7月3位、8月と9月5位)が3カ月連続だった。

6位はタイ(2018年1月から10月5位、11月と12月6位、2019年1月から8月5位、9月6位、10月から2月まで5位、3月7位、4月から7月6位、8月7位、9月4位)で下げ、7位はマレーシア(2018年1月から2020年2月まで7位、3月に6位、4月、5月5位、6月と7月4位、8月と9月3位)で同じく下げた。