インド、感染鈍化で挙式需要回復へ、ホテル街も活気づく(52)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年12月18日】インドの新規感染者数は1日3万人台まで落ち込み、何地域かを除いては、鈍化維持、本日12月7日の総感染者数は968万人だが、実質陽性者数は54万人と、世界のワースト5カ国中、死者数(14万1000人)共々もっとも少ない。

2012年12月3日、当地プリーにて我が弟の現地挙式、ヒンドゥ式に則って、婚礼プジャ(祈祷儀式)が、日本からの親族友人14人が見守る中、厳かに執り行われた(写真は、華麗な結婚衣装に着飾った新郎新婦)。

第3波中だった首都デリー(Delhi)も新規感染者数が5000人超に上り詰め(7日現在総数59万2000人、回復者数55万8000人、死者数9643人)、懸念されていたが、2700人台まで落ち込んだ。

当オディシャ州(Odisha、人口4600万人)は、総感染者数32万人を突破したが、実質陽性者数は4000人弱、新規感染者数はピーク時4000人から5000人だったのが、400人以下と急落、死者数は1700人超だ。ワクチン製造に励んでいるバーラト・バイオテック(Bharat Biotech、本社ハイデラバード)の支社が州都にあって、予想以上に早く、市場に出回りそうとの朗報も伝えられている。

今後の推移を見ないとなんとも言えないが、今のところ当州に限っては、収束に向かいつつあると言っていい。

ベンガル湾に面する保養聖地・プリー東浜のホテル街も、結婚式を請け負うなど、徐々に活気を呈しだし、当ホテル・ラブ&ライフも、団体さんの予約が入るなど、喜ばしい。

毎年、11月から2月の冬期は結婚シーズンで、例年なら、大型・中堅ホテルは式場と化し、豆電飾や花できらびやかに飾り立てられるのだが、コロナ下式需要も激減、それでも州政府が200人制限の挙式を許可したせいで、延期を余儀なくされたカップルが、収束に向かいつつある今、待ってましたとばかり、予約に詰めかけているようだ。

新婦の両掌は、ヘナと言われる髪を染めるにも使われるハーブ染料で精妙な模様が施されるのも、インド独特の慣習だ。

海辺の大型リゾートホテルは連日式場に早変わり、とはいえ、平常時に比べると、派手さ控えめで、電飾も少なめだ。参列者200人制限なんて多すぎる、インドらしいゆるさで、会食での感染リスクは避けられないが、7カ月も休業要請を強いられただけに、背に腹はかえられぬといったところ、リベンジ請け負いだ。

初期に感染爆発都市ムンバイ(Mumbai)で五つ星ホテルのスタッフが感染、日本だって「Go To」で宿の従業員の感染が伝えられているから、同業者としてははらはら、その一方で、徐々に正常に戻りつつあるのだと思うと、ほっとして喜びも覚える。

年末が近づくにつれ、お客さんも少しずつ増えるかもしれない。9カ月振りの団体予約は何よりのクリスマス・プレゼントだ。

●ニュース/農夫の抗議デモ

11月27日、農業改革に反対する農家の人々が「デリー・チョロ」(デリーに行け)のスローガンを掲げ、首都に集団で向かい、阻止せんとする警官隊が催涙ガスや放水で応酬、揉み合いになり大混乱に陥った。

インドではこれまで、農作物は州管轄の市場て保証価格で販売されてきたが、今年可決された法案で、農家が相手問わす、自由に販売できるようになった。

モディ首相(Narendra Damodardas Modi、与党インド人民党)は、投資や近代化を促進する、画期的農業改革と持ち上げたが、野党・国民会議派が牛耳る北部パンジャブ(Punjab)出身が多いデモ参加者たちは、民間企業に搾取されると反発、野党に扇動された形で首都行進のデモ抗議に及んだ。

農家の貧困は長年の社会問題で、気候的変動による不作で、負債理由に自殺に走る農夫が跡を絶たなかった。

折悪しくコロナ下、デリー準州とハリヤーナ州(Haryana)の州境7カ所が封鎖されたが、最大密による感染拡大も懸念されている。

●極私的動画レビュー/ドラマ「テロリストのパラソル」

YouTubeにアップされている往年のドラマ「テロリストのパラソル」(フジテレビ「金曜エンタテイメント」枠、1996年)を観た。題名を聞いただけで懐かしく思う世代もあるはずだ。

それもそのはず、原作は1995年、史上初の江戸川乱歩賞と直木賞をダブル受賞した、電通出身の作家・藤原伊織(ふじわら・いおり、1948-2007)による時代を超えて生きる傑作だからだ。

主演は、ショーケンこと、萩原健一(はぎわら・けんいち、1950-2019)で、アル中の中年バーテンダー役で、「テロリスト」役は、根津甚八(ねづ・じんぱち、1947-2016)、2人がかつて学生闘争家だった頃の恋人役には、高橋恵子(たかはし・けいこ)と、文句なしの豪華キャストだが、ショーケン以外は出番が少なく、3人の絡みも充分に描かれず、不満が残る。

2時間弱という制限の中では、致し方ないのかもしれないが、刑事による捜査場面や、テレビの爆弾テロ事件を報じるニュースシーンに割かれ、肝心の人間ドラマが薄くなった。改めて原作を読み直してみると、細部を失念していたせいで、超面白く引き込まれていった。

原作のずしりとした重み、深み、読ませる手応えある充実感に比べると、ドラマは上っ面だけを撫でた薄っぺらなもので、ショーケンもそれほど役に入り込んでいるとは思えない。通り一遍の熱演だが、特筆に値すべきものではない。むしろ、根津甚八の演技の方が、個性的で際立つが、あまりに出番が少ない。高橋恵子に至っては、刺身のつまだ。

それに、ドラマでは、ホームレスの老いた元医師が省かれている。非常にユニークな人物造型でキャラが立っているだけに、ドラマで描かれていないのが、物足りなかった。

原作を読み返した後で、再鑑賞してみると、画面が明るすぎるのも、違和感が残った。特に主人公が勤める新宿のスナックシーンは、もっと暗くていい。私のイメージでは、原田芳雄(はらだ・よしお、1940-2011)なんだなあ、何故か。警察から逃げ回る元学生活動家、この役柄は、原田芳雄に演じてもらいたかった。

蛇足ながら、私はショーケンのファンである。根津甚八や高橋恵子のファンでもある。それだけに、3人の絡みがもっと欲しかった。深くどろどろした人間ドラマは、原作で楽しまれることをお薦めする次第だ。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

12月11日現在、インドの感染者数は979万6744人、死亡者数が14万2185人、回復者が929万0809人、アメリカに次いで2位になっています。アメリカの感染者数は1561万1014人、死亡者数が29万2141人、回復者が598万5047人です。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています)。