女性やマイノリティの苦労を背景にした「ワンダーウーマン1984」(305)

【ケイシーの映画冗報=2020年12月24日】「新型コロナウィルスは、日本映画界にも深刻な影響を及ぼした。2020年の興行収入は、過去最高の約2611憶8000万円を記録した昨年から一転、00年以降で最低の1350億円前後になる見通し」(2020年12月18日付「読売新聞夕刊」)

日本ではすでに公開されているが、アメリカでは12月25日に公開される「ワンダーウーマン1984」((C)2020 Warner Bros. Ent.All Rights Reserved TM&(C) DC Comics)。

絶頂期から一気に最低へと落ち込んだ日本の映画界ですが、本稿でもとりあげた邦画「スパイの妻」がベネチア映画祭で監督賞(銀獅子賞)を受け、またテレビシリーズを引き継いだアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』」が、日本で上映された映画として歴代最速となる、10日間での興収100億円突破を記録、社会現象となるなど、邦画には一定の“巻き返し”がはじまっています。

ところが、外国映画の復調には時間がかかりそうです。新型コロナの影響が深刻なアメリカでは、ハリウッド産の作品の多くが公開延期や劇場での公開をネット配信に切り替えたりと、「映画館で上映作品を楽しむ」状況にはいまだになっていないのです。

本作「ワンダーウーマン1984」(Wonder Woman 1984)も、本年6月の日本での公開予定から2度の延期を経て、ようやくの劇場公開となっています。

1984年のアメリカ。女神のスーパーパワーと長寿を持つ戦士ワンダーウーマンことダイアナ(演じるのはガル・ガドット=Gal Gadot)は、博物館のスタッフとして働きながら、ひそかに悪と戦っていました。

ダイアナの勤める博物館に、盗難されかけた古美術品が持ち込まれます。同僚のバーバラ(演じるのはクリスティン・ウィグ=Kristen Wiig)が鑑定をはじめたところ、“すべての願いをかなえる”という秘宝が見つかります。

半信半疑ながら願いを託してまうダイアナとバーバラ。すると、ダイアナの前には死んだはずの恋人スティーブ(演じるのはクリス・パイン=Chris Pine)が姿を見せ、バーバラはダイアナ(ワンダーウーマン)のようなスーパーパワーを身につけます。

戸惑いながらも“願いがかなったこと”を受け入れるダイアナとバーバラ。そこにもう一人“願いがかなう秘宝”をねらう実業家マックス(演じるのはペドロ・パスカル=Pedro Pascal)があらわれ、強欲な願いをかなえてしまいます。破産寸前だったマックスはたちまち富と名声を得ますが、やがては自身の欲望を暴走させてしまい、世界は滅亡の危機にさらされます。

監督・原案・脚本(共同)のパティ・ジェンキンス(Patty Jenkins)は、作品の舞台に1984年を選んだ理由をこう述べています。
「80年代といえば西洋文明の絶頂期で、現在にも繋がっている時代」(パンフレットより)

世界情勢としては、旧ソ連が指導する東側とアメリカを中心とした西側が対決姿勢だった“東西冷戦”がたけなわとなる一方で、ビデオの普及や大量生産、大量消費が定着していたころで、自社への投資をテレビで訴えるマックスのように、投資にも、一般市民がより簡単に参加できるようになっていった時代です。

本作の主要人物で、1984年を生きるダイアナ(ワンダーウーマン)とバーバラは女性で、この時代には制約が現在よりも大きかったはずです。マックスもマイノリティ(社会的少数者)を思わせる描写があります。演じるペドロ・パスカルがチリ出身なのも、出自にマイノリティをイメージさせるためのキャスティングではないでしょうか。

ジェンキンス監督も女性で、長編映画のデビュー作である「モンスター」(Monster、2003年)から一貫して、女性が主人公の作品を作っています。

女性の権利がかなり認められているアメリカでも、映画界はまだ保守的だといわれていて、いまだにハリウッドでの男女格差は、収入や待遇面で顕著だとされています。

人種や宗教といった差別も、長い年月で少しずつ、解消されてきているのですが、長年の労苦を知らない若い世代には“あたりまえ”なことが、以前は不可能だったことへの理解が難しいことは、必然といえます。

生まれながらの超人であるワンダーウーマンに対し、スーパーパワーを“いきなり得た”バーバラやマックスは、やがて、その力に取りつかれてしまいます。最初にバーバラは“あこがれのダイアナ(ワンダーウーマン)のような美貌と力を、マックスは、成功者として胸を張って息子に会うための成功を欲しただけでしたが、強力すぎた力は自身でも制御できなくなってしまったのです。

「たとえお金があっても、使い方を知らないと不幸になるだけですよ」、若い友人がこう言っていたのを思い出しました。さはさりながら、莫大でなくてもいいですから、“お年玉”はいただきたいですね。年齢をかさねても。次回は「燃えよデブゴン TOKYO MISSION」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:「ワンダーウーマン1984」は2017年に公開された「ワンダーウーマン」(Wonder Woman)の続編で、ワーナー・ブラザースが2013年から展開する「DCコミックス」を原作とするメディア・フランチャイズ及びシェアード・ユニバースだ。

2013年に「マン・オブ・スティール」、2016年に「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」と「スーサイド・スクワッド」、2017年に「ワンダーウーマン」と「ジャスティス・リーグ」、2018年に「アクアマン」、2019年に「シャザム!」、2020年に「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY」と「ワンダーウーマン 1984」を公開している。2021年には「ザ・スーサイド・スクワッド」が公開される予定。

コメントは受け付けていません。