インド、感染者1000万超も新規は2万超に鈍化、わが州は収束へ(54)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2020年12月29日】インドの累計の感染者数は12月19日に1000万人を超えたが(21日付け統計ては1010万人、死者数14万6000人)、回復率が目覚ましいせいで(新規2万4000人超を、回復者2万5000人超が上回る)、実質の陽性者数は現在50万人を切り(49万人)、人口13億人以上だから、比率換算すると、日本の実質数より若干多いくらいだ。

コロナ禍で汚染解消したせいか、鮮やかな紫のハマヒルガオが満開に。長い移住生活でも初見で、美しさに感激。

ほぼ同じ数字でインドはホッとし、日本は第3波と騒いでいるわけだか、それ以前の経緯と比較してのことなので、感染爆発が止まって鈍化維持のインドが、胸を撫で下ろし、ここに来て急増している日本がすわっとなるのも致し方ないかもしれない。

しかし、総感染者数がアメリカに次ぐワースト2位のインドで推移を見守ってきた在住者から見ると、日本の第3波はさしてパニックに陥るほどのものでない。まだ、本格的爆発には、余力があるということで、かといって油断していいというわけではないが、東京も新規1000人台に達さないうちは、まぁ、大丈夫なのではないかと、あくまで個人的見解だが、推測する。

唯一、憂慮すべきは、日頃、無菌環境で感染症対策部門が脆弱な日本の医療崩壊リスクである。が故に、重症者を極力出さないようにと東京都が神経質になるのもやむをえず、ついに「Go To トラベル」一時停止を余儀なくされた政府についても、遅きに失した感はあるが、英断と評価したい。

浜を観光用のラクダが往く。今日は客日照り、空の鞍で軽々と。

経済を回さなければならないとの板挟みの振興策だったから、窮地に陥っていた飲食店並びに観光業者は一時的にも需要が回復して息をつけたと思う。どこの国でも、経済と感染対策のバランスは難しく、インドも例外でないが、在外邦人としては内心、人が動けば、感染リスクが高まるので、危ないなぁとは思っていた。

振り返るに、インド東部の当オディシャ州(Odisha)は、3月22日から全土に先駆けて厳格なロックダウン(都市封鎖)を開始、まだ、全国的には感染者数は微々たるもので、コロナ政策模範州と褒めそやされていた初期から、厳しい対策を州民に強いてきたわけである。経済は完全ストップ、救済措置皆無、観光業者は7カ月もの長い長い休業要請を強いられることになった。

6月からは、膨大な移民労働者の流入で感染者数がうなぎ上り、初期の模範州は、国内で8位の感染悪州の汚名を着せられた。以後4カ月で累計感染者数は32万人突破、が、長い間の努力がようやく実って、9月末には、全土共に歯止めがかかり、今現在は、人口4600万人で実質陽性者数は3000人ちょっと(死者数は1800人超)、新規数は1日300人台まで急落した。

インド移住33年目で初めて醤油を切らし、日本円にして1000円以上払いオンライン購入。今まで年1、2度は帰っていたので、その度に日本食を調達、醤油は切らしたことがなかった。しかし、コロナ禍で帰国延期を余儀なくされ、やむを得ず、4倍以上高値のKikkomanを購入する羽目になった。

一番ホッとしているのは、ひたすら厳格な措置を州民に敷いた州政府、経済・救済無視の苛酷な犠牲を強いてでも、人命優先を最重要視した州首相、ナヴィーン・パトナイク(Naveen Patnaik)であろう。

あまりに厳しすぎる政策に、ホテル業に従事する在留邦人としては、不満が高まることもあったが、結局、州首相の英断は間違っていなかったと思う。

収束に向かいつつある当州に比べ、未だに感染抑制が十分とはいえぬ西の発展州グジャラート(Gujarat)、マハラシュトラ(Maharashtra)を避けて、民間投資も殺到しているからだ。10月末時点で日本円にして5500億円と、コロナ元年にもかかわらず、6年連続の高額をマーク、元々資源豊かな州として注目され、近年州都の発展は目覚ましかったから、投資額が半減した西部州をしり目に、ちゃっかりパイを横取りした感じだ。

現時点で唯一ミリオン突破のワースト州マハラシュトラは回復率も一番低く(現在総感染者数190万人、死者数4万8000人超)、実質陽性者数もいまだ11万人もいるだけに、年末年始の集団外出を警戒し、州政府が12月22日から1月5日までの2週間、23時から6時までの夜間外出禁止令を敷いたほどなのだ。

抑制に成功し、ホッと息をついている東部に比べ、西はいまだ最大警戒の中、インド亜大陸は広大なので、各州のコロナ情勢も、天地の格差、まさに悲喜こもごもで、年末年始と浮かれるわけにもいかない都会州はお気の毒だ。

こちとら、嫌というほど、長いロックダウンを強いられたので、再発令されたら、うんざりを通り越して、失意のどん底だ。田舎州定住でしみじみよかったと思う。

来年1月3日には、当地プリー(Puri)のシンボル的ヒンドゥ寺院、ジャカンナート・テンプル(Jagannath Temple)も開院予定で、高名なメインテンプルがオープンすれば、年始のローカル参拝客も増えて、ホテル街も巡礼旅行者で賑わうはずだ。

師走も下旬に入り、車の往来もとみに増えて、けたたましいクラクション、大ボリュームで流される音楽、工事音など、以前の騒音地獄とまではいかずとも、騒々しい日常が戻りつつある。ここしばらくの平和な静けさがかき乱されるようで遺憾、手放しで喜べないものもあるが、街が活気に息づくことは、ノーマルに回帰しつつあるということて、快哉を叫ばなければならないのだろう。

大型ホテルは連日の挙式需要に賑わっている。当ホテルもぼちぼち客が戻りつつあるが、平常時にはほど遠い。ホテル格上げプランもよぎるこの頃、高まる式需要に応じられるだけの設備を整えた再建案である。

今は第2波の懸念はせずに、長いこと耐えた我が身を労って、楽しいクリスマス、希望に満ちた新年を迎えたい。この試練を乗り越えた先に、最高に輝かしい第2の人生が待っているのだと信じたい。

著者の私から、日本の読者の皆さまに、来たる2021年が希望に満ちた、文字通りのニュー、輝かしい新未来となることを心から祈願し、2020年最後の観戦記としたい。

●本年のご愛読誠にありがとうございました。衷心より御礼申し上げます。来年も引き続きご愛読のほどくれぐれもよろしくお願い致します。各位ご自愛なさって、良いお年をお迎えくださいませ。A Happy New Year!2021

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

12月23日現在、インドの感染者数は1009万9066人、死亡者数が14万6444人、回復者が966万3382人、アメリカに次いで2位になっています。アメリカの感染者数は1823万0242人、死亡者数が32万2765人(回復者数は未公表)です。州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています)