劇場で観てほしい、今最もインパクトのある映像「シン・エヴァ」(311)

【ケイシーの映画冗報=2021年3月18日】「今、アニメの世界に一つの現象が起こっている。『新世紀エヴァンゲリオン』がそれだ。ギリシャ語で“福音”という名のこのアニメは、(中略)2000億円以上の経済効果を達成。また、完結していないかに見えるストーリーに、ファンが独自の解釈を加えたり、内向的で傷を引きずっているキャラクターに『現代人の自分探し』を絡めて、作品を熱く語り、取り上げる評論家、メディアが引きも切らない。『エヴァ』の何がそうさせるのか?」(「ダカーポ」1997年5月21日号)

3月8日(月)から一般公開されている「シン・エヴァンゲリオン劇場版」((C)カラー)のフライヤー。興行通信社によると、土日2日間で動員76万1000人、興収11億7700万円をあげ、初登場1位。初日から7日間の累計では動員219万人、興収33億円を突破している。

1995年10月、1本のテレビアニメが放送を開始しました。圧倒的な世界観、印象的な映像表現、散りばめれられた隠喩や伏線が話題となりましたが、全26本の作品の最後半部分において、“破綻”あるいは“放擲”ともとれる情景がつづき、唐突とも思えるラストを向かえ、視聴者に強烈な体験を与えた「新世紀エヴァンゲリオン」です。

放送終了の翌年に2本の劇場版が制作されたころ、雑誌媒体での特集の作品紹介が冒頭の引用になります。

この作品の生みの親である庵野秀明監督は、一躍時代の寵児となりますが、その一方で、毀誉褒貶にもさらされ、否定的な意見も散見されました。そんななか、2007年に新たな「エヴァンゲリオン劇場版」(当初は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」と表記)のシリーズがスタートします。

この新シリーズは、2012年までに3作が産み出されましたが、最終の本作の劇場公開には足かけ9年を費やしています。2020年の公開が予定されていましたが、コロナの影響による2度の延期を乗り越え、この3月8日にようやく公開されることとなったのです。

テレビアニメにはじまり、今回完結する「エヴァンゲリオン」という作品は、実に25年間、4半世紀にわたって描き続けられた「アニメーションによる一大叙事詩」だと、個人的にとらえています。

これだけの長時間、創造主である庵野監督の手を離れることなく(危機はあったやも知れませんが)、描かれ続けたことは、毀誉褒貶と栄枯盛衰が常態であるエンターメイメント界では“僥倖”といってもよいのではないかと感じます。もっとも庵野監督自身の奮闘努力や周辺のバックアップが不可欠ですし、なによりも“待ち望む観客”の存在が大きかったに違いありません。

25年間という時間は、多くの事象を変えてしまいます。日本のみならず、世界のアニメ制作はフィルムではなく、デジタルでの作画作業が中心となっています。“紙とエンピツ”で産み出されるアニメは激減しているのですが、その一方で原点回帰も見受けられます。

本作「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で庵野監督は、アニメーション作品の設計図ともいうべき“絵コンテ”で映像をさだめず、デジタル画像で創った舞台上で俳優の動きを取り込み、仮想の映像を組み立ててから、アニメの映像化するという技術を用いているそうです。

いまでこそ、日本アニメの評価は世界的に確立していますが、もともとは大作を予算的に作ることができなかったため、「いかに作画枚数と手間を節約して作品の質を向上させるか」に全力で取り組んだのが日本のアニメ=ジャパニメーションでした。

アメリカ産アニメの筆頭であるディズニーでは、“ロトスコープ”という技術でアニメ作品を作っていました。これは人間が演技するシーンを普通の映画のように撮影し、1コマ1コマ、トレースして作画していくというもので、実質的には実写とアニメという、2本の映画をつくることになっています。当然ながら手間と費用ががかかるので、多用されなくなって久しいのですが、技術の発達が、こうしたクラシカルな技法を、最新のアニメーション技術に引き戻したといえるでしょう。

現状で望みうる最上の技法が駆使されたであろう本作は、アニメーション作品や映画ではなく、「現在もっともインパクトのある映像」だと強く感じます。“映像体験”として、ぜひ劇場での体験をお勧めいたします。

「すべてに決着をつけるため、出撃するミサトとヴィレ・クルー。すべてに決着をつけるため、満身創痍のエヴァを駆るアスカとマリ。すべてに決着をつけるため、父ゲンドウと対峙する碇シンジ。そしてシンジは決断する。さらば、すべてのエヴァンゲリオン。次回、シン・エヴァンゲリオン劇場版。さあて、最後までサービス、サービス」

ストーリー紹介を最後にさせていただきました。放擲と思われるかもしれませんが、テレビCM15秒のナレーション以上の、的確な梗概は出せませんでした。降参です。「まず観ていだき、すべてはそれから」。次回は「アウトポスト」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。当分の間、隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、大災害「セカンドインパクト」後の世界を舞台に、人型兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとなった少年少女たちと、第3新東京市に襲来する謎の敵「使徒」との戦いを描いたテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」(1995年から1996年)を、新たな設定とストーリーで「リビルド」(再構築)したものが「ヱヴァンゲリオン新劇場版」シリーズだ。

「シン・エヴァンゲリヲン劇場版」は2007年に公開された第1部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」、2009年の第2部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」、2012年の第3部「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」に続く第4部で完結編となっている。

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