東洋大創立者、妖怪博士の井上円了展、神作光一ら講演

【銀座新聞ニュース=2012年5月29日】丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ内、03-5288-8881)は5月30日から6月5日まで4階ギャラリーで「存在の謎に挑む哲学者井上円了」を開催する。

東洋大学が創立125周年を迎えたのを記念した大学図書館の特別展示で、現在の東洋大学(当時は哲学館)を創設した井上円了(いのうえ・えんりょう、1858-1919)を取り上げる。

井上円了が収集した資料や井上円了と親交の厚かった勝海舟(かつ・かいしゅう、1823-1899)より寄贈された「文殊菩薩像(もんじゅぼさつぞう)」や、近代日本の洋画家である岡田三郎助(おかだ・さぶろうすけ、1869-1939)の「井上円了肖像画」、大学図書館所蔵の貴重書などを展示する。

会場は3章構成で、第1章が「学祖井上円了の目指したもの-哲学と教育に捧げた生涯」、第2章が「不思議庵主人・井上円了-迷信打破の黎明(れいめい)」、第3章が「東洋大学の『知』の資産-貴重古典籍への誘(いざな)い」とし、それぞれのテーマごとに関連資料を展示する。

井上円了は仏教哲学者、教育家というだけでなく、迷信を打破する立場から妖怪を研究し「妖怪学講義」などを著し、「お化け博士」や「妖怪博士」などと呼ばれた。

ウイキペディアによると、井上円了は妖怪について、当時の科学では解明できない妖怪を「真怪」、自然現象によって実際に発生する妖怪を「仮怪」、誤認や恐怖感など心理的要因によって生まれてくる妖怪を「誤怪」、人が人為的に引き起こした妖怪を「偽怪」と分類した。

「真怪」は超理的妖怪であり、宇宙の万物で「妖怪」でないものはなく、水も小石も火も水も「妖怪」とした。「仮怪」は自然的妖怪であり、物理的妖怪(人魂や狐火など)と心理的妖怪(幽霊や憑霊など)とがあり、「偽怪」は人為的妖怪であり、利欲その他のために人間が作り上げた妖怪とした。

「誤怪」は偶然的妖怪であり、たとえば暗夜に見る石地蔵(鬼)、枯尾花(幽霊)を妖怪と見るものである。世間でいう妖怪の5割は偽怪、3割が誤怪、2割が仮怪である。この3種は科学的説明ができ、「真怪」の研究によって宇宙絶対の秘密が悟得(ごとく)できる、と考え、「仮怪」を研究することは自然科学を解明することにつながり、妖怪研究は人類の科学の発展に寄与するものとした。

井上円了は1858年越後長岡藩(現新潟県長岡市)にある真宗大谷派の慈光寺に生まれ、1874年に16歳で長岡洋学校に入学、1877年に京都・東本願寺の教師学校に入学、1878年に東本願寺の国内留学生に選ばれ、東京大学予備門に入学、その後、東京大学に入学、文学部哲学科に進んだ。

1885年に同大学を卒業、著述活動をはじめ、1887年に哲学館(その後、「哲学館大学」を経て東洋大学)と哲学館の中等教育機関として京北中学校(戦後は東洋大学から独立、学校法人京北学園となり、現在は東洋大学の付属校)を設立した。

さまざまな理由で大学教育を受けられない「余資なく、優暇なき者」でも学べる場を作るべきであると考え、1888年に「館外員制度」を設け、「哲学館講義録」を発行した。これは日本における大学通信教育の先駆けとされている。

1902年に私立大学卒業生への中等学校の教員免許認可をめぐる「哲学館事件」によって活動方針を見直し、1905年に哲学館大学学長と京北中学校校長の職を辞し、その後、中野に建設した哲学堂(現中野区立哲学堂公園)を拠点とし、生涯を通じて巡回講演活動を行った。1919年に遊説先の満州・大連において62歳で急死するまで、哲学や宗教についての知識をつたえるとともに、迷信の打破をめざして活動した。

6月3日に3階日経セミナールームで東洋大学教授による講演会を開く。13時から14時が東洋大学教授の三浦節夫(みうら・せつお)さんが「井上円了と勝海舟-時代を創った男たち」と題して講演する。

15時から16時まで元東洋大学学長で、現在、東洋大学名誉教授の神作光一(かんさく・こういち)さんが「百人一首の裾野のひろがり」と題して講演する。

三浦節夫さんは1952年生まれ、1975年に東洋大学社会学部社会学科を卒業、1982年に同大学大学院社会学研究科博士後期課程単位修得、1983年に国際音楽学校講師、1990年に東洋大学井上円了記念学術センター専任研究員(助教授)、2000年に同大学井上円了記念学術センター専任研究員(教授)を務め、現在、同大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科教授。

神作光一さんは1931年千葉県生まれ、1956年に東洋大学文学部を卒業、1961年に同大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程を満期退学、東洋大学文学部講師、その後、教授などを経て、1985年に同大学学長に就任し、1991年9月に退任した。

学長時代に創立100年記念事業として「現代学生百人一首」を発起、2002年に東洋大学名誉教授、2006年から2008年まで日本歌人クラブ会長、2011年春の叙勲にて瑞宝重光章(ずいほうじゅうこうしょう)を受章した。

開場時間は9時(初日は10時)から21時(最終日は16時)まで。入場は無料。ただし、すでに講演会は締め切っている。