銀座で村上誠「宮古島の水」展

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【銀座新聞ニュース=2013年6月29日】ニコン(千代田区丸の内3-2-3、富士ビル、03-3214-5311)が運営する銀座ニコンサロン(中央区銀座7-10-1、03-5537-1434)は7月3日から7月16日まで村上誠さんによる写真展「水迎え『南島の“死”の光景』」を開く。

銀座ニコンサロンで7月3日から16日まで開催される村上誠さんの写真展「水迎え『南島の“死”の光景』」に展示される作品。

銀座ニコンサロンで7月3日から16日まで開催される村上誠さんの写真展「水迎え『南島の“死”の光景』」に展示される作品。

常葉大学健康プロデュース学部こども健康学科教授で写真家の村上誠(むらかみ・まこと)さんが沖縄県宮古諸島に古くから伝わる伝説と水の関係をさぐりながら撮影した作品カラー16点を展示する。

宮古諸島に伝わる伝説は「月のアカリヤザガマ」の神話で、太古の昔、宮古島にはじめて人間が住むようになったころ、月と太陽が人間に長命を与えようとして、節祭の新夜に「アカリヤザガマ」という人間を使いにやり、変若水(しじみず)と死水(しにみず)を入れた桶を天秤に担いで下界に行かせた。

月と太陽は「人間には変若水を、蛇には死水を与えよ」と告げたが、彼が途中で桶を下ろし、路端で小用を足していたところ、蛇が現れて変若水を浴びてしまう。アカリヤザガマは仕方なく、死水を人間に浴びせる。それ以来、蛇は脱尾して生まれかわる不死の体を得た一方、人間は短命のうちに死ななければならない運命を背負ったという。

天に戻り、そのことを報告すると、月と太陽の怒りを買い、罰としてアカリヤザガマは桶を担いで月の中に立たたされた。神は人を哀れみ、少しでも若返りできるよう、その時から毎年、節祭の祭日に「若水(おちみず)」を送ることにした。これが「若水」の行事の起こりとされている。

村上誠さんは宮古諸島を歩いても肝心なものが見えてこなかったが、多良間島のナガシガーと呼ばれるウリガー(降井泉)に降りていった時、「少しわかったような気がした。それは、南島の物語が島の地表で生起するのではなく、水の流れる足元、地面の下の方で紡ぎ出されていたからだった」としている。

ロシアの言語学者ニコライ・ネフスキー(Nikolai Aleksandrovich Nevsky、1892-1937)が1926年に初めて宮古島で、この島の「水」の物語と出会い、「月と不死」(平凡社東洋文庫)という中で記述した。

村上誠さんは「宮古諸島にたどり着いた人々が水を探すことから始まり、崖下の泉、自然の洞窟内の水、凹地の湿地帯の溜まり水など水は、人々の命をつなぐ大事な水であった」とわかり、しかし、伝説からその「水」には「最初から“死”の影が付置されていた」としている。

村上誠さんは1954年静岡県生まれ、1974年より写真作品を発表し、1977年に立命館大学を卒業、1988年より美術制作プロジェクト「天地(あまつち)耕作」を組織し(2003年に解散)、インスタレーションを発表、2003年から写真活動を再開、浜松学院大学短期大学部幼児教育科教授、名古屋柳城短期大学保育科教授を経て、現在、常葉大学健康プロデュース学部こども健康学科教授。

開場時間は10時30分から18時30分(最終日は15時)まで。無休。