ミキモトで、庫淑蘭の独自の世界観を描いた切り紙展

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【銀座新聞ニュース=2013年7月31日】ミキモト(中央区築地1-8-9、03-5550-5678)は8月1日から9月17日までミキモト本店(中央区銀座4-5-5、03-3535-4611)の6階ミキモトホールで「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」を開催する。

ミキモトが8月1日から9月17日まで開催する「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」。31日に行われた内覧会で、庫淑蘭について語る台湾の黄永松さん(右)。生前に庫淑蘭を評価し、作品集を刊行した。「夫の暴力と無理解に苦しんだ」と庫淑蘭の悲惨な生活について語った。

ミキモトが8月1日から9月17日まで開催する「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」。31日に行われた内覧会で、庫淑蘭について語る台湾の黄永松さん(右)。生前に庫淑蘭を評価し、作品集を刊行した。「夫の暴力と無理解に苦しんだ」と庫淑蘭の悲惨な生活について語った。

中国の農家の一主婦だった庫淑蘭(くー・しゅーらん、1920-2004)は伝統的な剪紙(せんし、切り紙)の枠を超えた、斬新でエネルギーに満ち溢れた色鮮やかな作品を制作し、中国内でさまざまな賞を受賞し、ユネスコより「中国民間美術大使」の称号を授与された、中国を代表する剪紙の作家だった。

庫淑蘭が生前、四季折々の生活、子ども、動物といったモチーフから、神話性や宇宙性を秘めた女神像、生命樹など独特の大画面、ダイナミックな構図で表現された作品数百点の中から約30点を「花珠爛漫(かじゅらんまん)『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』」と題して展示する。いずれも日本初公開としている。

「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」に展示される「剪紙娘子」。色使いから娘や草花の描き方まで庫淑蘭の表現が鮮明に出ている。

「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」に展示される「剪紙娘子」。色使いから娘や草花の描き方まで庫淑蘭の表現が鮮明に出ている。

中国では「剪紙」は古来より主に農村のお祭りや節ごとの屋内の飾りとして用いられており、庫淑蘭も小さいころから学び、1980年から評価され、本格的に制作に取り組み、苦労しながら集めた紙を使って、切り絵作品を発表し、社会的評価を高めた。台湾で「漢声雑誌社(かんせいざっししゃ)」を経営する黄永松(ほぁん・よんそん)さんが庫淑蘭の作品収集に取り組み、今回はその中から選んで作品を展示し、同時に、一部の作品を大判の布にプリントし、公開する。

黄永松さんは庫淑蘭の作品について「一番単純なものは時にはもっとも偉大なものになれる」と評し、「苦しいときは楽しく、醜いものは美しくなれる」という表現で庫淑蘭の世界を語った。

庫淑蘭は1920年中国陜西省(せんせいしょう)旬邑県(じゅんゆうけん)生まれ、9歳で母親にてん足をさせられ、12歳で学校に通い、15歳からは通学せずに、母親から刺繍、剪紙などを花嫁修業として習い始め、17歳で農家に嫁ぎ、6男1女の母となる。その後、夫と離婚し、生まれた村に戻り、窯洞(やおとん)に住み、わずか20畝(うね、約1983平方メートル)の畑を耕し、生活をはじめ、薬草採取により生計をたて、仕事の合間に剪紙や刺しゅうを作った。

「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」の会場。農婦だった女性が、貧しく苦しい中で描いた切り紙が独自の世界観をつくりあげ、ユネスコから「中国民間美術大使」という称号を贈られた。

「花珠爛漫『中国・庫淑蘭の切り紙宇宙』展」の会場。農婦だった女性が、貧しく苦しい中で描いた切り紙が独自の世界観をつくりあげ、ユネスコから「中国民間美術大使」という称号を贈られた。

1980年に旬邑県文化館美術研究員によって剪紙の才能を見い出され、県で剪紙指導をはじめ、1985年に帰宅の際に、自宅近くの深い溝に落ち全身を打撲、2カ月近く寝たきりとなり、その後、剪紙に全身全霊を傾けて取り組み、以来、独自の世界観と宇宙観を表現し、1992年に第2回中国民族文化博覧会民間美術大展で特別賞、1994年に中国美術一絶大展で金賞、1996年にユネスコより「中国民間美術大使」の称号を贈られ、1997年に台湾の漢声雑誌社より、作品と生活をまとめた「剪花娘子 庫淑蘭」が刊行され、2004年に死去した。

2005年にアメリカ・ボルチモア美術館で「剪花娘子 庫淑蘭大展」が開かれ、2009年に中国版「剪花娘子 庫淑蘭」が上海で出版される。

3日15時からミキモトギンザ(MIKIMOTO GINZA)2(中央区銀座2-4-12)の5階ミキモトアトリウムで黄永松さんとグラフィックデザイナーで神戸芸術工科大学名誉教授の杉浦康平(すぎうら・こうへい)さんによる「庫淑蘭の切り紙宇宙」と題したトークショーを開く。

開場時間は11時から19時。入場は無料。トークショーはすでに締め切っており、問い合わせはミキモトまで。