銀座教文館で後藤仁「犬になった王子」原画展、トークも

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【銀座新聞ニュース=2014年1月30日】銀座教文館(中央区銀座4-5-1、03-3561-8446)は1月29日から3月2日まで6階「ナルニア国」で後藤仁さんによる「岩波書店創業100周年記念企画『犬になった王子 チベットの民話』絵本原画」展を開いている。

銀座教文館で3月2日まで開催中の後藤仁さんによる「犬になった王子 チベットの民話絵本原画展に展示されている絵本の表紙。

銀座教文館で3月2日まで開催中の後藤仁さんによる「犬になった王子 チベットの民話絵本原画展に展示されている絵本の表紙。

1913年に岩波茂雄(いわなみ・しげお、1881-1946)が「古書店」として創業した岩波書店(千代田区一ツ橋2-5-5)が創業100周年を迎えたのを記念して、2013年11月15日に国立民族学博物館名誉教授の君島久子(きみじま・ひさこ)さんが文章、「アジアの美人画」をテーマに、日本やアジアの女性などを描いている後藤仁(ごとう・じん)さんが絵を手がけた絵本「犬になった王子 チベットの民話」(岩波書店、1890円)が刊行されたことから開く原画展で、絵本原画全26点とラフスケッチ、日本画画材を展示している。

ウイキペディアによると、「犬になった王子 チベットの民話」は君島久子さんが過去に訳した「犬になった王子」(民話集「白いりゅう 黒いりゅう」所収、1964年、岩波書店)を、君島久子さん自ら絵本用に書き直した。穀物のない国の勇敢で心の優しい王子が、美しくて思いやりのある娘ゴマンの愛によって救われ、苦難の旅を乗り越え、麦のタネを手に入れるまでを描く、壮大な冒険物語だ。宮崎駿(みやざき・はやお)さんの「シュナの旅」(徳間書店、後にスタジオジブリのアニメ映画「ゲド戦記」の原案となる)の原話にもなっている。

後藤仁さんは1968年兵庫県赤穂市生まれ、父方の祖父が指物大工、伯父が宮大工、からくり人形師という職人家系に生まれる。幼いころから水彩絵具による「空想画」や「創作マンガ」を描き、大阪市立工芸高校美術科を首席で卒業、東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業、在学時から「金唐革紙(きんからかわし、手製高級壁紙)」の復元制作をはじめ、以後約12年間に「入船山記念館」(広島県呉市)、「移情閣」(兵庫県神戸市)、「旧岩崎邸」(東京都台東区)などの国の重要文化財建造物の復元事業に携わった。

卒業後、大学時代の指導教授だった後藤純男(ごとう・すみお)さんに師事して、日本画家として制作活動に入る。当初は国内外の取材を元にして、プランバナン遺跡(インドネシア)などの古代遺跡や阿蘇山・斜里岳などの自然をテーマとした雄大な「風景画」を中心に描き、1998年頃から「アジアの美人画」をテーマに、アジアや日本の伝統文化、舞踊などを素材にした人物画を中心に描いている。

現在、金唐革紙制作の第一人者で、2006年より「金唐革紙保存会」を主宰している。「三渓日本画賞展2000」、「新生展」で入選、「北の大地展」で佳作、「F展」で大阪市立美術館館長奨励賞などを受賞している。

岩波書店は1913年8月5日に岩波茂雄が開いた古書店で、正札販売方法を採用し、注目を集め、1914年に夏目漱石(なつめ・そうせき、1867-1916)の「こゝろ」を刊行して、出版業に進出、夏目漱石没後に「夏目漱石全集」を刊行した。その後、多くの学術書を出版したほか、岩波文庫や岩波新書を出版し、古典や学術研究の成果を社会に普及させることに貢献し、文化の大衆化に多大な影響を与えた。

昭和時代にはしばしば、大衆的な路線を貫く講談社と対比された。戦前は、いわゆる共産主義講座派の拠点とされた。1933年にミレー(Jean-Francois Millet、1814-1875)の絵画「種をまく人」を題材にとったマークの使用をはじめ、1949年に株式会社化され、社長も岩波家の世襲から脱した。

2月2日14時から後藤仁さんによるトークイベントを開く。当日はおおこしきょうこさんが絵本を読み聞かせる。

開場時間は10時から20時。期間中は無休。入場は無料、トークイベントも無料。