シャネルでK・ラガーフェルド「ヴェルサイユ」展、映画の様に

【銀座新聞ニュース=2017年1月26日】フランスの総合ファッション企業「シャネル」の日本法人、シャネル株式会社(中央区銀座3-5-3、シャネル銀座ビルディング)は1月18日から2月26日まで4階シャネル・ネクサス・ホールでカール・ラガーフェルドさんによる写真展「VERSAILLES A L’OMBRE DU SOLEIL太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影」を開いている。

シャネルが2月26日まで開いているカール・ラガーフェルドさんの写真展「ヴェルサイユ・ア・ロンブル・デュ・ソレイユ(VERSAILLES A L’OMBRE DU SOLEIL)太陽の宮殿 ヴェルサイユの光と影」に展示されている作品((C)Karl Lagerfeld)。

ドイツ出身のファッションデザイナーで、写真家でもあるカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)さんが光や影と戯れるような、ユニークな視点で捉えたヴェルサイユ宮殿の姿を、2008年にヴェルサイユ宮殿で開かれた展示会から選んで日本で初公開している。

プリントは、羊皮紙を模した紙を使い、スクリーンプリントによって制作されたもので、鑑賞者が紙の質感や画像の細部まで堪能できるよう、作品をガラスやフレームなどで額装しないで、直接壁に取り付けて展示している。

カール・ラガーフェルドさんは1987年にシャネルの広告キャンペーンを制作するため、カメラで撮影する側に立つことを決意し、その作品は、多くのファッション誌に掲載され、世界中で披露された。シャネルによると、「彼の撮影手法を導くのは直感と第一印象による被写体への愛情。自然の発露と偶然が重要な役割を演じ」ているという。

ヴェルサイユ宮殿については、カール ラガーフェルドさんからみると、「具現化されたおとぎ話の世界であり、過去のものでありながら私たちの想像力に語りかけてくるところ」で、クリエイティヴィティを高めてくれるとしている。写真家として、型破りで私的な宮殿の光景を、映画のような世界観で表しており、「それは光と影、遠近法やぼかしを用いて描写される禁断の寓話、時にドラマチックな物語をも思わせる荘厳な世界」という。

ウイキペディアと「ヴェルサイユ宮殿の移り変わり」によると、ヴェルサイユ宮殿(Palais de Versailles)は1624年にルイ13世(Louis13、1601-1643)によって煉瓦や石でできた狩猟の館として建てられ、1661年から1682年にかけて「太陽王(Roi-Soleil)」と呼ばれたフランス王ルイ14世(Louis14、1638-1715)が増築したフランスの宮殿(建設当初は離宮)で、パリの南西22キロに位置し、イヴリーヌ県ヴェルサイユにある。

ルイ14世の大蔵卿を務めたニコラ・フーケ(Nicolas Fouquet、1615-1680)が1658年から3年かけて1661年に「ヴォー=ル=ヴィコント城(Chateau de Vaux-le-Vicomte)」を完成させ、1661年8月に開かれたその披露パーティーに招かれたルイ14世がニコラ・フーケのそれまでの蓄財などと城の豪華さに激怒し、この城を手がけた建築家のルイ・ル・ヴォー(Louis Le Vau、1612-1670)、画家で装飾家のシャルル・ル・ブラン(Charles Le Brun、1619-1690)、造園家のアンドレ・ル・ノートル(Andre Le Notre、1613-1700)にヴェルサイユの拡張工事を命じた。

ルイ・ル・ヴォーは、2つの翼棟を持つ左右対称のバロック様式を採用し、内部を3階建てにし、王の大居室(正殿)や王妃の居室などは2階に設置し、宮殿の裏側には100万平方メートルの大庭園を置いた。具体的には、中庭に面する側には、同じ様式で厩舎や付属の建物の左右対称の翼棟を建設し、庭園に面する側には、石造建築物でもともとの城館を取り囲むことを選び、「アンヴロップ」(包囲)と呼ばれる建築様式を導入した。

中庭を見下ろすスレートぶきの屋根に対し、武器飾や火入れ壷で飾られた手すりに隠れるようにデザインされたイタリア様式の屋根を採用し、このスタイルは、1675年に彼の後任者となった建築家のジュール・アルドゥアン=マンサール(Jules Hardouin-Mansart、1646-1708)により、翼棟に取り入れられた。

ルイ・ル・ヴォーは宮殿の庭園内に、最初のオランジュリー(樹木群で1663年に建造)や動物園を建造し、大使の階段(王の大居室の壮麗な正面階段)や王の居室の装飾も行い、これらのプロジェクトは、1675年にアルドゥアン=マンサールが登場する前に、ル・ヴォーの主な協力者で短期間ル・ヴォーの後任を務めたフランソワ・ドルベ (Francois de Roubaix、1634-1697)によって完成された。

オランジュリーはその後、1684年から1686年にかけてジュール・アルドゥアン=マンサールによって建て直され、長さ150メートルのアーチ型天井の中央回廊が、百段階段の下に位置する横手の2つの回廊へと続くようにし、4つの芝生部分と円形の池からなるオランジュリーの花壇は3ヘクタールにもおよぶ広さで、花壇はルイ14世時代には彫刻(現ルーブル美術館所蔵)で装飾され、夏には植木箱に入った1055本の樹木(ヤシ、キョウチクトウ、ザクロ、ユーゲニア、オレンジなど)が配置され、冬にはこれらの木は室内に戻される。

宮殿の建設には2万5000人が投入され、噴水庭園は造園家のアンドレ・ル・ノートルが設計し、造営には3万6000人が投入された。バロック建築の代表作で、豪華な建物と広大な美しい庭園で知られ、1979年に世界遺産に登録されている。

ルイ14世をはじめとした王族と、その臣下が共に住むヴェルサイユ宮殿において、生活のすべてが絶対王政の実現のために利用され、その結果、さまざまなルール、エチケット、マナーが生まれ、その噴水にはルイ14世の3つの意図が込められている。

1)が「水なき地に水を引く」で、ヴェルサイユには近くに水を引く高地がなく、10キロ離れたセーヌ川の川岸にマルリーの機械と呼ばれる巨大な揚水装置を設置し、堤の上に水を上げさせ、古代ローマに倣って水道橋を作って、水をヴェルサイユまで運び、巨大な貯水槽に溜め込み。水なき地で常に水を噴き上げる噴水庭園を完成させ、自然をも変える力を周囲に示した。

2)が「貴族を従わせる」で、ルイ14世は10歳の時にフロンドの乱(1648年から1653年に民衆と貴族が氾濫した事件で、後にヴェルサイユ遷都につながったとされている)で、貴族たちに命を脅かされたことがあり、ルイ14世はこの体験を忘れず、貴族をヴェルサイユに強制移住させた。

庭園には2つの噴水があり、「ラトナの噴水」はギリシャ神話に登場するラトナ(レートー)が村人に泥を投げつけられながらも、息子の太陽神アポロンを守っている銅像と、その足元にある蛙やトカゲは神の怒りに触れて村人たちが変えられた像を、模った噴水で、ラトナとアポロンはフロンドの乱の時、彼を守ってくれた母と幼いルイ14世自身を示し、蛙やトカゲに変えられた村人は貴族たちをあらわしている。王に反抗をする者は許さないという宣言を示している。

「太陽神アポロンの噴水」は、アポロンは天馬に引かれて海中から姿をあらわし、天に駆け上ろうとしているものを模った噴水で、アポロンはルイ14世自身をあらわし、彼が天空から地上のすべてを従わせることを示している。

3)が「民衆の心をつかむ」で、ルイ14世は民衆の誰もがヴェルサイユに入るのを許し、民衆に庭園の見方を教える「王の庭園鑑賞法」というガイドブックを発行した。それには「ラトナの噴水の手前で一休みして、ラトナ、周りにある彫刻をみよ。王の散歩道、アポロンの噴水、その向こうの運河を見渡そう」と書かれている。

民衆は、ガイドブックに従って庭園を鑑賞することで、貴族と自然を圧倒した王の偉大さを刷り込まれていった。夏、ヴェルサイユでは毎晩のように祭典が催され、訪れた民衆はバレーや舞劇に酔いしれた。

儀式や外国の賓客を謁見するために使われた鏡の間は、1871年にドイツ皇帝ヴィルヘルム1世(Wilhelm 1、1797-1888)の即位式が行われ、第1次世界大戦(1914年から1918年)後の対ドイツとの講和条約であるヴェルサイユ条約が調印された場所でもある。鏡の間には多くの銀製品が飾られていたが、ルイ14世は晩年になって、スペインとの王位継承争いが続いて戦費の捻出に困り、破産を免れるためにこれらを売って戦費に充てたといわれている。

カール・ラガーフェルドさんは1938年ドイツ・ハンブルク生まれ。3つの言語環境で教育を受け、1952年にフランスの高校に進学し、1954年末に国際羊毛事務局(現ザ・ウールマーク・カンパニー)主催のアマチュアファッションコンクールで優勝したのを機に退学し、1955年にピエール・バルマン(Pierre Balmain、1914-1982)のアシスタントとして働き、ファッションデザイナーとしての国際的なキャリアと並行して、1987年に写真家として活動をはじめた。

受賞歴に1993年にラッキーストライク・デザイナー・アワード、1996年にドイツ文化功労賞(ドイツ写真協会)、2007年に国際写真センターの特別功労賞(ニューヨーク)があり、2000年には出版人ゲルハルト シュタイデルと共に出版社「エディション(Edition)7L」を創立し、パリに書店を開店し、2010年にドイツ文学とノンフィクション専門の出版社、「L.S.D.( Lagerfeld, Steidl,Druckerei Verlag)」を設立した。

開場時間は12時から20時、入場は無料。期間中、無休。