ヴァニラで椋陽児「被虐美」展

【銀座新聞ニュース=2017年3月18日】ヴァニラ画廊(中央区銀座8-10-7、東成ビル、03-5568-1233)は3月20日から4月1日まで「椋陽児展『春琴抄』」を開く。

ヴァニラ画廊で3月20日から4月1日まで開かれる「椋陽児展『春琴抄』」に展示される作品。

1960年代から1990年代にかけて活躍した椋陽児(むく・ようじ、1928-2001)は「類まれなる画力で描く被虐美」が画風で、「緻密な鉛筆の濃淡の表現により独特の艶と湿り気を持ち、多くの人々を魅了」してきた。今回は、未発表作品も含めて50点以上の作品を展示販売する、。また、劇画作品も共に閲覧できるように展示する。

「春琴抄」は谷崎潤一郎(たにざき・じゅんいちろう、1886-1965)が1933(昭和8)年6月に「中央公論」に発表した中編小説で、同年12月に創元社より単行本化された。盲目の三味線奏者・春琴に、丁稚の佐助が献身的に仕える物語で、春琴が第三者により熱湯を顔にかけられ、大きなやけどを負うと、佐助も近づけなくなり、佐助は自ら両目を針で刺して失明してまで春琴に仕えるという物語だ。マゾヒズムを超越した本質的な耽美主義を描いたといわれている。

椋陽児は1928年大阪府堺市生まれ、1943年ころに学徒勤労動員で大阪金属工業(現ダイキン工業)や南海電鉄などで労働に従事し、1945年ころに南海電鉄の変電所に技師として勤務、1953年ころに大日本文具(現ぺんてる)に転職し、学校への画材販促のモデル写生会開催時に待ち時間を利用してクロッキーに参加し、1956年ころに日本通信美術学園のさし絵科で学んだ。

1962年ころに大日本文具を退職、雑誌投稿をはじめ、1963年ころに投稿した小説やさし絵が久保書店(旧あまとりあ社)の「裏窓」編集の美濃村晃(みのむら・こう、本名・須磨利之=すま・としゆき、別名・喜多玲子=きた・れいこ、1920-1992)、濡木恥夢夫(ぬれき・ちむお、本名・飯田豊一=いいだ・とよかず、1930-2013)に認められ上京、久保書店に「裏窓」の編集者、執筆者として入社した。

1968年ころに「椋陽児」として独立、小説、さし絵以外に「実話雑誌」や「土曜漫画」をはじめ、「漫画天国」、「漫画エース」、「劇画悦楽号」、「漫画ジャンボ」などで劇画の執筆をはじめ、「ムク・アトリエ」から写真集を発行した。1970年代にサン出版、新星社、東京三世社、土曜出版社、日本文華社、ミリオン出版、三和出版、芳文社などの雑誌に作品を掲載し、サン出版と松文館から劇画の単行本を刊行した。1978年に刊行された「推理クイズ ルパンからの挑戦状」(学習研究社)にさし絵画家として参加している。

1980年代に画集発行のための鉛筆画による執筆をはじめ、「SMコレクター」別冊の画集が発行、1990年代に「SM秘小説」や「SMマニア」でさし絵、鉛筆画を掲載、アートビデオから原作のビデオ化作品、「若妻奴隷市」をはじめ、同社作品のパッケージを手掛け、2000年に青林工芸社やソフトマジック(現マガジンファイブ)、まんだらけから新作と旧作を最収録した単行本、画集を発行し、2001年7月31日に亡くなる。

没後も、マガジンファイブ、マイウェイ出版、大洋図書から単行本、画集が発行され、2006年にはトレジャーワークスよりガシャポン用のフィギュア「えろポン」が発売されている。

開場時間は12時から19時(土・日曜日、祝日、最終日は17時)で、入場料は500円。会期中は無休。