ギャルリー志門30年記念で達和子展、香川檀が企画

【銀座新聞ニュース=2017年9月4日】ギャルリー志門(中央区銀座6-13-7、新保ビル3階、03-3541-2511)は9月4日から14日まで「ギャルリー志門30周年記念特別企画」の第9弾として、達和子さんによる個展を開く。

ギャルリー志門で9月14日まで「ギャルリー志門30周年記念特別企画」の第9弾として開かれる、達和子さんの個展に出品される「花になる」(2017年)。

美術史学者で武蔵大学教授の香川檀(かがわ・まゆみ)さんが企画した「ジェンダー/女たちが展(ひら)く新しい風景」シリーズと題して、その第1弾として、おもに鉛筆を使って描く達和子(だて・かずこ)さんが新作を中心に展示する。

ギャルリー志門で香川檀さんが企画して、達和子さんが個展を開くのは2008年以来のことで、当時は「ジェンダー/女・もうひとつの美」とし、今回は「女たちが展く新しい風景」とした。

香川檀さんはこれまでの達和子さんの作品について、「生命(いのち)の芽を孕(はら)んでぼってりと膨れた胎嚢(たいのう)のようなものが小刻みに震えている。『胞』と名付けられたその袋状のものから、いままさに時が満ちて、胞子(ほうし)たちが一斉に飛び散っていく。身籠(みごも)りと、万物の芽立ち、そして生命を明日につなぐ営(いとな)みが、あるときは激しくエネルギッシュに、あるときは愁いをおびてメランコリックに、さまざまに異なる情景のなかで繰り返し描かれてきた」とみる。

これに対して、最近の作品については少しちがってきていると指摘する。「種を孕む容れ物であった『胞』が、それじたい自足して、なにやら華やいできた。つまり、「花になった」のだ」という。

香川檀さんによると、達和子さんは、海外で子育てに専念しているさなかに絵を描くことに目覚め、帰国後に40歳を過ぎて美術の勉強を始め、「コラージュや版画などの試みを経て、アクリル絵の具による有機的な抽象絵画に辿りつく。即興的に線を描きこみ、砂をまぶし、絵の具を掻き落としたりして、イメージの到来を待つ。こうして生み出された『胞』のシリーズは、十年以上にわたる探求のテーマとなってきた」とし、「作家自身の背負ってきたもの、家と親子、愛と葛藤、女性であることの悦びと息苦しさが、鮮やかな傷痕として浮かび上がってくる」としている。

香川檀さんはこの例えについて、みずから「胞」が「花」になるのは、生物の理(ことわり)からすると、理屈に合わないかもしれない。ふつうは、花開いて、それから実をつけるのが順序なのだから、とした上で、「ここまで走り続けてきて、もうそろそろ命をつなぐことからも自由になって、誰のためでもなく自分のために『花になる』、そんな円熟の恩寵(おんちょう)のようなメタファー(暗喩、隠喩)をついに手に入れたのではないだろうか」と分析している。

達和子さんは1947年滋賀県生まれ、1969年に武蔵野大学を卒業、1975年から1990年まで香港に在住し、1991年に武蔵野美術学園に入学し、1999年から絵画の制作をはじめ、2000年に武蔵野美術学園造形芸術研究科を修了、2001年から個展を開いている。2008年にはギャラリー志門で香川檀さんの連動企画「ジェンダー/女・もうひとつの美」と銘打って個展を開いている。

2000年にモダンアート協会展で50周年記念山口薫特別賞(2001年に奨励賞、俊英作家賞、2002年に優秀賞、安田火災美術団体奨励賞)、2001年に第18回上野の森美術館大賞展で優秀賞(2002年にも大賞入賞者展に出品)、2003年に損保ジャパン美術団体奨励賞展などに出品している。

4日17時からオープニングパーティを開く。

開場時間は11時から19時(最終日は17時)、入場は無料。