M84でシーフ、イオネスコ、田原桂一、服部冬樹ら「ヌード」展

【銀座新聞ニュース=2017年10月2日】Art Gallery M84(中央区銀座4-11-3、ウインド銀座ビル5階、03-3248-8454)は10月2日から11月4日まで「エロスの競演」を開く。

アートギャラリーエムハッシー(Art Gallery M84)で10月2日から11月4日まで開かれる「エロスの競演」に出品されるヤン・サウデックさんの作品。

チェコの著名な写真家、ヤン・サウデック(Jan Saudek)さん、フランスを代表する写真家で、自然な美しさと透明で乾いたエロティシズムを感じさせるジャンルー・シーフ(Jeanloup Sieff、1933-2000)、フランスの女性写真家で本能的な女性の姿を捉えたベッティナ・ランス(Bettina Rheims)さん、バロック調の退廃的な雰囲気漂う作品を発表しているイリナ・イオネスコ(Irina Ionesco)さん、先日他界した写真家、田原桂一(たはら・けいいち、1951-2017)、服部冬樹(はっとり・ふゆき)さんのヌード写真約30点を展示する。

また、11月20日から12月16日まで、写真家と作品点数を増やして「エロスの競演」を開く。上記の6人のほかに、中村立行(なかむら・りっこう、1912-1995)、フランスの写真家、アラン・フレイグ(Alain Fleig、1942-2012)、リン・ビアンキ(Lynn Bianchi)さん。

ジャンルー・シーフの妻で写真家のバルバラ・リックス(Barbara Rix)さん、ルース・バンハート(Ruth Bernhard、1905-2006)、エルネスティーン・ルーペン(Ernestine Ruben)さん、ジャン-フランソワ・ボーレ(Jean-Francois Bauret、1932-2014)、マーチィン・シャライバー(Martin Hugo Maximilian Schreiber)さん。

ジャンルー・シーフは1933年11月30日パリ生まれ、両親はポーランド人で、スイスで写真を学んだ後、1954年にフリーのジャーナリストとして写真撮影をはじめ、1954年に「マグナムフォト」に参加(1959年まで)、1955年にフランス「エル」誌の写真リポーターとしてデビューし(1958年まで)、世界各地でルポルタージュ写真を撮影し、1959年に「ニエプス賞」を受賞した。

1958年に「決定的瞬間」を求めるアプローチに共感できず、「保存された瞬間(Moments Preserved)」に共感し、1959年にフリーの写真家として、スイスの雑誌「レアリテ」に参加、1959年から1961年まで「ジャルダン・デ・モード」と契約、1961年から1965年までアメリカ・ニューヨークに在住し、アメリカの「ルック」をはじめ、「グラマー」や「エスクァイヤー」、「ハーパス・バザー」などに掲載し、ヨーロッパでも「ヴォーグ」をはじめ、「ツイン」や「クイーン」などと契約し、初めての広告写真「ロジー(Rosy)」を制作した。

1966年にパリに戻り、スタジオを開設、1970年代から1980年代には個人的な作品の方向性を見つけ、モノクロ写真と広角レンズを多用して、立体的な感じの風景、ヌード、ファッションを探求し、透明で乾いたエロチシズムを感じさせる作品で注目された。1972年にリヨンのフランス写真財団委員に任命され、フランス財団(旧名はローマ賞)の審査員、1980年にフランス写真財団理事を辞職し、「旅ジャーナル」シリーズのアートデレクションも辞退した。1984年にイタリア・パレルメでカプチン会修道院のカタコンブを発見、1980年にシュバリエ芸術文化賞顕彰、1984年にフランスのレジオン・ドヌール・シュバリエ勲章を受賞した。

1990年から1991年にかけて 第2次世界大戦の戦場地ソンムの写真ミッションに参加し、1991年に第1回写真航海巡船プロジェクトの名誉招待作家となり、1992年に第1次世界大戦(1914年から1918年)の戦地、ヴェルダンでの写真レポートを完了し、2000年9月にがんのため活動中に急逝した。1967年に「ノヴァ」掲載ファッション写真がロンドンアート・ディレクターズ・クラブ銀メダル、1980年にシュバリエ芸術文化賞、1984年にフランスのレジョン・ドヌール・シュバリエ勲章、1992年にフランス文化省写真家芸術賞などを受賞した。

ベッティナ・ランスさんは1952年フランス・パリ生まれ、1972年からアメリカ・ニューヨークで過ごし、その後、パリに戻り、1976年にモデル、写真家のアシスタントなどを経て、モデル、ストリッパー、アクロバット芸人や周りの友人を被写体として写真を撮りはじめ、1978年に雑誌「エゴイスト」に大道芸人やストリッパーのヌード写真を発表し、1982年にパリ・ポンピドーセンターで初個展、1983年に生と死を表現した動物のはく製シリーズを制作した。

1986年に雑誌「ヴォーグ」や「フィガロ」や広告用のポートレートを撮影、1990年に二重の性、転換する性、男性の妄想など混迷する現代の性をモチーフに作品を発表し、1990年に初めてカラー写真「シャンブル・クローズ」でヌード写真を披露し、1994年にパリ市写真大賞、1995年にフランス大統領公式カメラマンに抜擢され、1997年にレジヨン・ドヌール勲章を受賞した。

1998年に2年がかりでイエスの生涯を現代の設定で撮影した「I.N.R.I」を出版し、フランスのキリスト教サークルとのスキャンダルに発展し、2000年に小田急美術館で写真展「イエスの生涯」を開催し、2002年に中国でアバンギャルドな上海女性を捉えた上海シリーズを制作、2004年にフィンランド・ヘルシンキ市立美術館で初の回顧展を開いた。

2005年に「写真と彫刻の融合」をテーマにリメイクされたオートクチュールのビンテージドレスをまとった女性たちを、石の台座を小道具に撮影されたシリーズを発表し、2010年にセルジュ・ブラムリー(Serge Bramly)さんと一緒に自叙伝的な物語を発表し、2012年にインタビューをして撮影した若い男女27人のポートレートを発表し、2013年に最新のパリのオートクチュールをまとった有名人のポートレートを発表した。現在は雑誌、広告、ファッションの仕事を手掛けるとともに、個人プロジェクトに取り組んでいる。

イリナ・イオネスコさんは1935年フランス・パリ生まれ、両親はルーマニア移民、幼年期をルーマニア・コンスタンツァで過ごした後、再びフランスに戻り、1965年から写真撮影をはじめ、1977年に娘のエヴァ・イオネスコ(Eva Ionesco)さんをモデルにしたヌード写真集「鏡の神殿」(Temple aux miroirs)を発表し、話題を集めた。

2012年に娘のエヴァ(Eva)さんから子どもの頃のヌード写真撮影と出版について、20万ユーロ(約2800万円)の損害賠償と写真返却を求める裁判を起こされ、イリナさんが敗訴し、1万ユーロ(約140万円)の損害賠償支払いと写真のネガフィルムの引き渡しを命じる判決が下された。

田原桂一は1951年京都府生まれ、写真家の祖父の影響で中学時代に写真の技術を習得し、高校卒業後に劇団の「レッド・ブッダ・シアター」に参加し、照明と映像を担当、1972年に劇団のヨーロッパ公演に同行してフランスに行き、日本の柔らかい光とは異なる、ヨーロッパ特有の鋭い光に衝撃を受け、パリにとどまり写真家として活動をはじめた。以来、2006年までパリを拠点とし、「光」をテーマに写真、彫刻、インスタレーション、建築と幅広く活動した。

1973年から1976年の最初のシリーズ「都市」でパリの街をモノクロームで写し、日本とは違うパリ独特の光をとらえ、1973年から1980年のシリーズ「窓」で、「アルル国際写真フェスティバル」で新人大賞を受賞し、1978年に世界の巨星の肖像写真を撮影したシリーズ「顔貌」を発表、1979年から1983年の「エクラ」、1984年の「ポラロイド」などがある。

1978年にコダック主催フランス写真批評家賞、1984年に日本写真家協会新人賞、1985年に東川賞、木村伊兵衛賞、1987年にポルトガルのグルベンキア美術財団給費、1988年にフランスのニセフォール・ニエプス賞、1989年に日本のADC賞、1990年にフランス文化庁ヴィラメジチ給費、1993年にフランスと日本のシャトーベイシュヴェル財団大賞、フランス芸術文化勲章シュバリエを受賞している。

1994年に日本のADC賞、1995年にパリ市芸術大賞、1999年にリオン市化学工業地帯の「バレー・ドゥ・ラ・シミエ(Vallee de la Chimie)」プロジェクトを受賞、リオンの光のフェスティバルコンクール、2003年にパリのタラン・デゥ・リュックス オリジナリティー賞などを受賞している。

2009年に「株式会社KTP」を設立、2017年3月から8月までプラハ国立美術館で舞踊家の田中民(たなか・みん)さんを被写体とした個展を開いており、4月からはポーラ提供でテレビ朝日系「白の美術館」で出演者のポートレートを撮影していた。6月6日未明に肺がんのため東京都内の病院で死去した。

服部冬樹さんは1955年北海道札幌市生まれ、1978年に日本大学芸術学部写真学科を卒業、在学時にチェコスロヴァキアの写真家、ヨゼフ・スデック(Josef Sudek、1896-1976)の静物写真から影響を受け、花や花瓶を題材として制作し、その後、ヌード作品のシリーズを手がける。

在学中の1977年に初の個展を開き、1980年代からは主としてツァイト・フォト・サロンなどで作品を発表し、タゲレオタイプからチバクロームまでさまざまな技法を再現し、「写真とは何か」という問いを投げかけている。

開場時間は10時30分から18時30分(最終日は17時)まで。入場料は1000円。日曜日は休み。