【編集局日誌】競走馬が骨折すると、かつてはなかなか直りにくかったものだが、馬をプールで泳がせるようにしてから回復が早くなったといわれている。競走馬の足への負担は、人の比ではない。500キロの体重を細い脚4本で支え、あのすごいスピードで走りぬくのだ。
それだけに脚の故障は、競走馬にとって致命傷だが、今では多くの場合、回復している。プールを利用するになったことも要因のひとつだろう。馬にとっていいプールが、人にとってもいいことは間違いない。なので、走った後は、環境があれば、プールで歩くだけでもいいので、積極的に利用してほしい。
ただ、経験から10キロを走って、間をおかずに泳ぐことは大変だ。足が思うようにならないし、呼吸の面でもしんどく、100メートルを泳ぐのも苦行だ。過去に5キロで終えていたときは、すぐに着替えてプールに行ったことがあるが、500メートルを泳ぐのも大変で、顔見知りの女性に、その泳ぎのひどさを笑われてしまったことさえある。
ましてや10キロを走った後にすぐ泳ぐのは無理で、まずは30分程度の時間をおきたい。特別に休む場所がない場合は、マットやタオルをしいて静かに横になればいい。慣れないと、30分しても泳ぐのは大変かもしれないが、慣れれば、1000メートルぐらいは泳げるようになるし、泳げないなら、500メートルを歩いてもいい。
通常、プールは片道25メートルの短距離が一般なので、往復50メートルとすると、10周すると500メートルになる。500メートルを泳いだり、歩いたりしていると、足への負担が少し減り、10キロを走りぬいた後も、月曜日以降の仕事への影響はないだろう。不思議なのだが、泳がずに風呂で浴室に入って熱いお湯をかけても、足への負担は残ってしまう。
時間がない中でも、プールで100メートル、200メートルでもいいから歩いてほしい。そうすると、後で足が楽になり、次週、走るときには足が重いことがはないはずだ(ただし、何かあって、気分的に重くなるのは仕方ない)。
今回は、春から初夏にかけての時期を想定して10キロの走り方を書いたが、真夏のときは走ることが苦しくなる。夏場のマラソンがオリンピックを除くとほとんどないのは、あまりに汗をかくと、走るのが大変だからだ。実際、歩いているだけでも汗をかくような環境下で、走っても5キロぐらいが限界で、10キロまで走りぬくのはしんどい。
筆者のようにスポーツクラブで走っていても、走るコースは窓際なので、エアコンはほとんど効果がなく、暑くて苦しくなる。こういうときは走れるところまで走ってあとは歩くしかない。プロレベルのランナーでさえ、暑さにはかなわないのだから、素人ランナーにはとても10キロをがまんして走りきるのは厳しい。
真夏の時期は5キロぐらいをめどにして走り、9月にはいってから10キロを走ろうとすればいいのではないだろうか。もちろん、山に避暑に行く余裕のある人は、涼しい山の中を走るのも一案だが、わざわざ避暑に行って、朝10キロを走ろうとする人はなかなかいないだろう。つい、楽をしたくなるのが人間だろう。自宅にいるときと、レジャーに出かけたときとでは、気分が異なる。
無理はする必要はないが、2週間から3週間ぐらい間を置いて、久しぶりに走ると、再び翌日、足が痛くなるので、それはやむをえないと思ってほしい。
若いときは何もしなくても健康は天からの恵みのように感じられるが、年齢を重ねるうちに、健康は天からの恵みではなく、「自助努力の結果」になってくる。努力しないと、どんどん体力も劣るし、判断力も鈍るし、忍耐力まで落ちてくる。
もっとも悪いのは顔の表情から「若さ」が失われていくことだ。顔は年齢をもっとも映し出すひとつなので、顔を若々しく保つには、人為的な整形手術という方法を除くと、運動する以外にない。
そのため、筆者は何年か前から年齢をひとつ重ねるたびに、「運動量を少しずつ上げる」を目標とすることにした。それまではスポーツクラブでは誰でもできるエアロビクス中心の運動をしていたのだが、あえてエアロビクスをやめて、走りと水泳に専念し、少しだけ筋力増強運動をしている。今ではエアロビクスは1年に多くても2、3回程度しか参加しない。
実は筆者は走る前に水泳で準備体操を兼ねて1500メートルから2000メートルを泳ぐようにしている。それから10キロを走るようにしている。水泳の距離を伸ばす中で、走りをとりいれてみたのだが、最初は何度も書いたが、スポーツシューズをはいていたので、腰痛で5キロも走れなかった。はだしになってようやく5キロの壁を乗り越え、今では10キロを走れるようになった。
水泳をはじめたのはスポーツクラブに入ってしばくらくしてからで、それまではほとんど泳げなかった。15年ほど前からエアロビクスだけではもったいないので、プールで泳ぐようになったのだが、最初は25メートルがいい程度だった。それを繰り返しているうちに、いつの間にか3000メートルを泳げるようになった。
別に水泳のコーチに指導してもらったわけではなく、いろいろな人の泳ぎを見て、どう「手抜き」をして距離を伸ばすかを考え、慣れとともに1000メートル、2000メートル、3000メートルとノンストップで泳げるようになった。また、距離を伸ばすうちに、スピードも増して、今では50メートルを1分程度、500メートルを10分以内で泳げるようになっている。
500メートルまでなら、50メートルを50秒前後で泳ぐこともできるが、さすがにそれではその後、スピードを落としても1500メートルぐらいが限界で、3000メートルは50メートル58秒程度に抑えないと途中で息切れしてしまう。
この数年、日曜日には1回で3000メートル泳ぐようにしているが、走りも泳ぎも一緒で、最初の1キロは体調が悪いときが多く、そのときの自分の体調を知るための1キロと考えるしかない。とにかく、週末ランナー(スイマー)なので、走って(泳いで)みないと体調がわからない。
走りも、泳ぎもマイナスは存在しない。がまんすれば、いずれ1キロに達するのは間違いない。そう考えて、無理せずに、走ったり、泳いだりして、ゆっくりと100メートルずつ刻んで走ると、1キロにこぎつける。その結果、走りの10キロと水泳の3000メートルは相関関係があるのではなかろうかと思っている。
いずれも1時間程度かかるのが共通点で、水泳は呼吸器(肺活量)と手の動きが重要になり、ランニングも呼吸器が強くなると、走りが楽になってくる。つまり、両方とも呼吸器の強化がポイントで、3000メートル泳いでも呼吸が楽だと4000メートル、5000メートルが見えてくるし、ランニングも10キロ走っても苦しくないようだと、15キロも見えてくる。
となると、この双方を運動に取り入れることで、10キロを走れるなら、いずれは3000メートルを泳げるし、3000メートル泳げる人はそのうちに10キロを走れるようになるはずだ。多くの人は走りと泳ぎは別々と考えている。スポーツクラブを見ても、水泳をする人はあんまり器械体操や走りをしない。エアロビクス、器械体操や重量挙げ、走り中心の人が泳ぐことは少ない。
もし、あなたがスポーツクラブの会員なら、両方を存分に使わないともったいないし、そうすることで自分の体の可能性を見出せるのではないだろうか。それが健康への一歩につながるはずなので、無理をしてでも、泳ぎと走りを日常の運動の中に取り入れてほしい(「編集局日誌」は不定期に掲載します。ランニング入門は番外編を入れて13回で、2月から3月にかけてメルマガに掲載した文章に加筆修正しています)。