資生堂でアートエッグ展、石原海、菅実花、中島伽耶子が競う

【銀座新聞ニュース=2021年9月10日】国内最大の化粧品メーカーの資生堂(中央区銀座7-5-5、03-3572-5111)は9月14日から12月19日まで資生堂ギャラリー(中央区銀座8-8-3、東京銀座資生堂ビル、03-3572-3901)で「第15回shiseido art egg展」を開く。

資生堂ギャラリーで9月14月から12月19日まで開かれる「第15回shiseido art egg(シセイドウ アートエッグ)展」で、9月14日から10月10日までの個展に出品される石原海さんの「ローズシティ」(2016年、HDビデオ、薔薇、3面モニター)。

「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」は資生堂が2006年からはじめた若手作家を対象にした公募展で、応募者の中から3人を選んで、例年は1月から3月にかけて、2018年から6月ころから8月にかけて個展を開き、最終的に「アートエッグ」賞(賞金20万円)を決めていた。しかし、2020年は当初、4月から6月にかけて開く予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、延期し、10月から12月に開き、2021年は9月から12月に開く。

最終審査に挑む3人を選ぶのは、彫刻家の金沢健一さん、、彫刻家で多摩美術大学美術学部情報デザイン学科メディア芸術コース非常勤講師の小田原のどかさん、作家、マンガ家の小林エリカさんの3人で、最終審査の「アートエッグ」賞は毎年変わる3人の特別審査員が決める。

15回目は243人の応募があり、その中から1993年東京都生まれ、2018年に東京芸術大学美術学部先端芸術表現科を卒業、2021年に英国ロンドン大学ゴールドスミスカレッジファインアート学科アーティストフィルムに在学(現在、休学中)している石原海さん、1988年神奈川県生まれ、2021年に東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程を修了した菅実花(かん・みか)さん。

1990年京都府生まれ、2013年に京都精華大学洋画コースを修了、2015年に東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程を修了、2020年に同大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程を修了した中島伽耶子(かやこ)さんの3人が入選した。

同じく10月19日から11月14日まで展示される菅実花さんの「A Happy Birthday(ハッピーバースデイ)」(2019年、インクジェットプリント)。

9月14日から10月10日まで石原海さん、10月19日から11月14日まで菅実花さん、11月23日から12月19日まで中島伽耶子さんがそれぞれ個展を開く。

石原海さんについては「愛、ジェンダー、個人史と社会をテーマに、実験的な映画作品やビデオインスタレーションに取り組んで」おり、「現実の出来事を軸に、独自のセンスでフィクションや物語的な要素を加えて構築する作品は、現代社会の一面や心の機微を丁寧に捉えている」という。今回は、北九州の教会に集う人々と行う演劇を通して、苦しみや生の意味を追求するとともに、インタビューを交差させることで、根源的な問いを提示している。

石原海さんは「映像作品は、色々な人の助けや協力があって成立するもので、たった一人きりで成り立つものではありません。波乱万丈な旅を一緒に歩んできてくれた才能のある人たち、そして人生の中で何度も出会っては許されてきた友人たちのおかげです」としている。

菅実花さんについては、ヒューマノイドロボットや高度生殖医療など、テクノロジーの進歩によって変遷しつつある新たな身体感や生殖のあり方をテーマとし、写真・人形・映像などのメディアを用いて「人間とは何か」を問うている。視覚認識を揺さぶる作品は、近未来の価値観の変化を予感させ、鑑賞者に新たな世界を提示してくれる、としている。

菅実花さんは「人形という、人間ではないものを写真に撮ることによって、レンズを通した世界の中でリアリティを探究してきた」という。「それは単に本物/偽物や実像/虚像といった二項対立ではなく、それらが複雑に混ざりあった近未来の身体観を予測したものでした。私たちの生活や行動が変化することによって、想像していた未来は思ったよりも早く訪れるのかもしれない」としている。

同じく11月23日から12月19日まで展示される中島伽耶子さんの「light dress(ライト・ドレス)」(2019年、アクリル樹脂、電球、自然光、LED電球、色紙、ボタン、配線コード)。

中島伽耶子さんについては、壁や境界線をモチーフとして人と場所との関わりについて問う作品を制作している。今回はギャラリーを巨大な壁で分断し、鑑賞者の動きによって光と音のみが行き来する空間をつくる。「壁の反対側に送られる光や音は、受け取る側の状態によっては暴力的になるかもしれないし、希望となるかもしれない。実際に会うことなく容易に他者とつながることができる今の時代、コミュニケーションについて改めて考えさせられる」としている。

中島伽耶子さんは「自分と自分以外の対象との距離感は今回の作品のテーマ」としている。

恒例の作家本人が会場で自作について解説するギャラリートークについては、各個展開始後にオンライン配信する。

開場時間は11時から19時(日曜日、祝日18時)、毎週月曜日が休み(祝日でも休み)。入場は無料。