インド、1日16万超と世界最多感染、ワクチン外交に浮かれ不足に(65)

【モハンティ三智江のインド発コロナ観戦記=2021年4月23日】インドは第2波真っ盛り、最速で倍増、まさしくTSUNAMI(ツナミ)状態で歯止めが効かない。4月13日の統計では、新規数が世界最多の16万人突破(累計1370万人)、死者数も17万人超と増えている。

恋人同士がマスクなしで、夕暮れの浜を手をつなぎながらそぞろ歩く平和な日常が戻って来るのはいつか。

予想通り、ブラジル(累計1350万人)をまたもや抜いて世界ワースト2位に不名誉の帰り咲き、トップのアメリカの新規数は7万2000人超、ブラジルも3万5000人超と減少している中、遅れて3月9日から第2波に入ったインドは、これからがピークで、最速ペースの再拡大がどこまで数字を伸ばすかが懸念される。

願わくば、アメリカのピーク数30万人台以下に抑えられることを祈るが、アメリカの4倍強の人口ゆえ、予測がつかない。

最悪州のマハラシュトラ(Maharashtra)の新規数は5万1000人超(累計346万人)、死者も5万8000人超と、全土の3分の1を占め、感染再爆発に歯止めがかからない。州政府は4月14日からの再ロックダウン(都市封鎖、15日間)を決定、パニック買いに走る住人や、帰省に殺到する移民労働者で大混乱している。

医療体制は逼迫、医者がワクチン接種と、レムデシベル錠剤(米国ギリアド・サイエンシズ社が開発生産している治療薬)の服用を、声高に勧めているが、肝心のワクチンや薬剤が品不足で憂慮される。

新規数が次点で急増しているのはウッタルプラデシュ州(Uttar Pradesh)の1万3000人超(累計70万人超)、チャティスガール(Chhattisgarh)が僅差で3位(累計45万人超)、4位の首都デリー(Delhi)も新規1万1000人超(累計73万人超)と、懸念される状況だ。

今や、西部に限ったことでなく、全土的にじわじわ増えており、当東部オディシャ州(Odisha)も、新規数が1700人超、実質陽性者数は1万人超、累計35万人を突破した(全国12位)。新規数1万3000人超と全国3位のチャティスガール州との境の西部が急増しており、隣州からの感染流入を防ぐため、州境は封鎖された。とはいえ、裏道から侵入する人々は防げえず、感染拡大が懸念される。

2017年7月、我が郷里・福井県の地元紙に紹介された息子、Rapper Big Deal(ラッパー・ビッグ・ディール)のインタビュー記事。第2の故郷福井への愛をラップに託したことが注目され、デジタル版にアップされた、アカプリのラップ歌唱も話題を呼んだ。

加えて、移民労働者の問題もあり、レッドゾーン州からの帰省が殺到することは予想済みだ。いわば悪夢の再現で、今回は前回をはるかに上回る規模だけに、どこまで膨れ上がのるか、誰にも予測がつかない。

脅威が迫る中、当州は4月5日から2週間の規制強化期間に入り、マスク着用、ソーシャルディスタンス遵守が義務付けられ、マスクなしの違反者は2000ルピー(約3000円)の罰金が課されることになった。

レッドゾーンは夜間外出禁止令が敷かれており、ガンジャム地方(Ganjam)では、寺院などの宗教機関も1週間の閉鎖が決まった。通りには、マスク顔が戻り、ついこの間まで賑わっていたのが、静けさが戻っている。

とにかく、1月16日のワクチン開始以来、楽観論が支配し、人々の顔からマスクが消え、人間(じんかん)距離も無視、冠婚葬祭の集会、州議選での大人数の集会と、緩みっぱなしだったので、当然といえば当然の結果だ。折悪しく、変異株もあるから、再爆発がコントロールされるまで、日数を要しそうだ。

喉元過ぎれば熱さを忘れる、お調子者のインド人だけに、手痛いしっぺ返し、ここまで爆発してから付け焼い刃的に行為を改めても遅すぎるんだが。

昨年9月末のピークを過ぎて以降も、用心深くマスクを手離さなかった日本人在住者としては、インド人のコビイディオット(Covidiot、新造語でコロナ規制を守らぬ愚か者を指す)ぶりには、ほとほと呆れ返るばかりだ。

馬鹿といえば、政府も然り、ワクチン生産大国ならではのワクチン外交と浮かれまくって、周辺諸国にばら撒き、肝心の自国のワクチン不足を招いた罪は大きい。マハラシュトラ州など、冷蔵不備で5万本の貴重なワクチンが廃棄処分に至った。インフラ未整備のインドでは起こりうる事態で、その分も含めた十分な備蓄をしておくべきだった。

世界の薬局などと豪語して、ばらまいたモディ(Narendra D.Modi)首相の失策だが、挽回するように急遽12日、ロシア製ワクチン、スプトーニクⅤ(ロシアのガマレヤ記念国立疫学・微生物学研究センターが開発)を承認、8月にはインドで月5000万回分の生産体制に入ることが公表された。なお、首相は今のところ、全土的な再ロックダウンは考えておらず、各州の政策に任せる方針のようだ。12日時点で、ワクチン接種回数は、9500万回超(1回のみ)に達した。

鑑みるに、膨大な人口(13億5000万人)、規律を守らぬルーズな国民性、宗教集会、移民労働者の移動、祭りの多さなどがインドのアキレス腱だが、州議選で連日の集会、大人数の支持者がマスクなしで浮かれまくってウイルスを広げた罪も大きい。コロナ征伐そっちのけで、パワー渇望の汚職政治家どもの責任でもある。コビイディオットの地元民が招いたカルマに、自国に帰りたくても帰れない私は、憤懣やるかたない思いだ。

ちなみに、ムンバイ株式市場は12日、再ロックダウンの脅威から1708ポイントの大暴落、4万7883指数と、コロナバブルで一旦は5万以上に急上昇した指数を大きく割った。

(「インド発コロナ観戦記」は「観戦(感染)記」という意味で、インドに在住する作家で「ホテル・ラブ&ライフ」を経営しているモハンティ三智江さんが現地の新型コロナウイルスの実情について書いており、随時、掲載します。モハンティ三智江さんは福井県福井市生まれ、1987年にインドに移住し、翌1988年に現地男性(2019年秋に病死)と結婚、その後ホテルをオープン、文筆業との二足のわらじで、著書に「お気をつけてよい旅を!」(双葉社)、「インド人には、ご用心!」(三五館)などを刊行しており、コロナウイルスには感染していません。

また、息子はラッパーとしては、インドを代表するスターです。13億人超と中国に次ぐ世界第2位の人口大国、インド政府は2020年3月24日に全28州と直轄領などを対象に、完全封鎖命令を発令し、25日0時から21日間、完全封鎖し、4月14日に5月3日まで延長し、5月1日に17日まで再延長、17日に5月31日まで延長し、31日をもって解除しました。これにより延べ67日間となりました。ただし、5月4日から段階的に制限を緩和しています。

2021年4月19日現在、世界の感染者数は1億4111万3721人、死亡者数が301万7412人、回復者が8055万0223人です。インドは感染者数が1478万8109人、死亡者数が17万7150人、回復者が1280万9643人、アメリカに次いで2位になっています。

ちなみにアメリカの感染者数は3166万8532人、死亡者数が56万7217人(回復者は未公表)、ブラジルの感染者数は1394万3071人、死亡者数が37万3335人、回復者数が1224万3464人です。日本は感染者数が53万5708人、死亡者数が9662人、回復者が48万1452人(ダイヤモンド・プリンセス号を含む)。インドの州別の最新の数字の把握が難しく、著者の原稿のままを載せています。

また、インドでは2020年3月25日から4月14日までを「ロックダウン1.0」とし、4月14日から5月3日までを「ロックダウン2.0」、5月1日から17日までを「ロックダウン3.0」、18日から31日を「ロックダウン4.0」、6月1日から6月末まで「アンロックダウン(Unlockdown)1.0」、7月1日から「アンロックダウン2.0」と分類していますが、原稿では日本向けなので、すべてを「ロックダウン/アンロックダウン」と総称しています。

ただし、インド政府は2020年5月30日に感染状況が深刻な封じ込めゾーンについては、6月30日までのロックダウンの延長を決め、著者が住むオディシャ州は独自に6月末までの延長を決め、その後も期限を決めずに延長しています。この政府の延長を「ロックダウン5.0」と分類しています。編集注は筆者と関係ありません)。