丸善丸の内ではたこうしろう「二平方メートル」展、小学生の海音が文

【銀座新聞ニュース=2021年6月19日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・丸の内本店(千代田区丸の内1-6-4、丸の内オアゾ、03-5288-8881)は7月15日まで3階児童書売場壁面ギャラリーで、はたこうしろうさんによる「二平方メートルの世界で」原画展を開いている。

丸善・丸の内本店で7月15日まで開かれているはたこうしろうさんの「二平方メートルの世界で」原画展に展示される表紙。

絵本作家で、イラストレーターのはたこうしろう(秦好史郎)さんが絵を担当した「二平方メートルの世界で」(文章は前田海音=みおん=さん、小学館、1650円)が4月20日に刊行されたのを記念して、原画展を開いている。

「二平方メートルの世界で」は小学5年生の前田海音さんが3年生の時に書いた作文が福岡県北九州市主催の「第11回子どもノンフィクション文学賞」を受賞し、絵本作家のはたこうしろうさんが絵本に仕立てた。

前田海音さんは、脳神経の病気の治療で3歳のころから入退院をくりかえし、入院中のある日のこと、たまたまいつもとは頭と足を逆にしてベッドに横たわると、備え付けのオーバーテーブルのうらに、たくさんの落書きがあることに気がついた。

「みんながんばろうね」、「再手術サイテー」、「ママにめいわくかけちゃってる。ごめんね」・・・前田海音さんと同じベッドを使っていた、顔も名前も知らない子どもたちの言葉が書かれていた。

前田海音さんはその落書きを発見したときの思いや、入院中の孤独感、家族に対する気持ちなどを綴り、小学館編集部から本にしたいという願いを送ったところ、「病気と生きる仲間がいること、いたことを、わたしが代表してみんなに伝える役割なのかなと、覚悟を決めました」という手紙が届いた。

そこで、小学館編集部は作文を絵本作家のはたこうしろうさんに読んでもらうと、はたこうしろうさんは、「海音さんが気づいたことや感じたことは、みんなに覚えておいてほしい大切なことかと思う」と言って、絵を描くことを引き受けた。

はたこうしろうさんがはじめて海音さんと会ったのは、2020年の秋、感染症流行の第2波がやってくる直前のことで、その後もふたりは編集部を介して打ち合わせを続け、作品を完成させた。

内容は海音ちゃんが脳神経の病気の治療のために、3歳の時から定期的に入退院を繰り返している病室の中の出来事を描いている。

病室のベッドの大きさは、たて約2メートル、幅約1メートルで、その周りをぐるりと囲うカーテンの中が入院中の海音ちゃんの世界で、彼女は大抵のことは「わかっている」。なかなか効果の出ない治療だということも、もっと痛い思いをして検査を受けている子がいるということも、家族の住まいがバラバラになってしまう家があるということも。どうしてわたしだけ、とは思わない。

だけど、やっぱりつらい気持ちになることがある。孤独を感じたり、怖くなることだってある。そんなある日、彼女の目に思わぬ光景が飛び込んできた。

前田海音さんは2010年北海道滝川市生まれ、札幌市の小学校に通う小学5年生。

はたこうしろうさんは1963年兵庫県西宮市生まれ、京都精華大学美術学部を卒業、絵本、さし画、イラスト、ブックデザインを手がけ、「ちいさなかがくのとも」のロゴデザイン、シリーズの装丁、「こそあどの森シリーズ」の装丁、ブックデザインなども担当している。絵本に「クーとマーのおぼえるえほん」シリーズ(ポプラ社)、「あかちゃんとのあそびえほん」シリーズ(講談社)、「あかちゃんミニえほん」シリーズ(ポプラ社)、「ショコラちゃん」シリーズ(講談社)などがある。、

開場時間は9時から20時(最終日は19時)。