日本橋三越で出口雄樹「北斎漫画」展、生誕260年でオマージュ作品

【銀座新聞ニュース=2021年8月4日】国内最大手の百貨店グループ、三越伊勢丹ホールディングス(新宿区新宿5-16-10)傘下の三越伊勢丹(新宿区新宿3-14-1)が運営する日本橋三越(中央区日本橋室町1-4-1、03-3241-3311)は8月4日から16日まで本館6階コンテンポラリーギャラリーで「Plop Hokusai Manga×Yuki IDEGUCHI」を開いている。

日本橋三越で8月16日まで開かれている「Plop Hokusai Manga×Yuki IDEGUCHI(プロップ・ホクサイ・マンガX出口雄樹)」に出品されている「Re-Hokusai 栗鼠(りす、Re-Hokusai Squirrel)」(2021年、 新聞、墨、缶スプレー)。

現代美術家の出口雄樹さんは「北斎漫画」を絵手本に新たな解釈を加えて描いたオマージュ作品「Re-Hokusai(リホクサイ)」シリーズを発表している。また、葛飾北斎の水の表現をモチーフにした新作や、出口雄樹さんの代表的なシリーズのひとつでもある「Waterfall Mansion(ウォーターフォール・マンション)」の新たな連作も併せて、約30点を展示している。

2020年に生誕260周年を迎えた葛飾北斎を記念して、本来であれば2020年に開かれることになっていた展覧会や映画などのエンターテインメントが、コロナ禍で延期となり、2021年の開催となっており、今「北斎」に注目が集まっている。本展も2020年に開かれる予定だった。

出口雄樹さんは、2017年に英国ロンドンの大英博物館で開かれた「Hokusai:Beyond the Great Wave(ホクサイ・大きな波を超えて)」という大規模な北斎展で上映されたドキュメンタリー映画「British Museumpresents : Hokusai(大英博物館提供:ホクサイ)」に、北斎に影響を受けていたアーティストの一人として出演している。

また、2021年8月にポーランド・クラクフ国立美術館で開かれる北斎展にも、唯一の現代作家として作品を出品する予定だ。

今回は「北斎漫画」を絵手本に新たな解釈を加えて描いたオマージュ作品「Re-Hokusai(リホクサイ)」シリーズを発表し、会場では絵手本になった「北斎漫画」の実物も並べて展示する。

ウイキペディアによると、北斎漫画は江戸時代後期の浮世絵師、葛飾北斎(1760-1849)による絵手本で、全15編ある。第12編のみ墨摺で、それ以外は墨と薄い朱が用いられる。英語圏では「ホクサイ・スケッチ」と呼ばれる。

初編の序文によると、1812(文化9)年秋頃、名古屋在住の門人、牧墨僊(まき・ぼくせん、1775-1824)宅に逗留し、300点余りの下絵を描いた。1814(文化11)年に、名古屋の版元、「永楽屋東四郎」から初編が刊行され、各地の門人や私淑する者の指南書で絵手本、職人の発想源として企画し、版行されたと考えられている。だが、庶民から武士まで広い層に好評で、江戸時代のベストセラーとなった。

同じく出品されている「夜釣りは最高! (Night Fishing is Awesome!)」(2021年、キャンバス、顔料、膠、アクリル絵具、缶スプレー)。

当初、1巻完結の予定だったが、好評だったため、版元を変更しながら版行が続き、葛飾北斎死後の1878年(明治11)年、第15編で完結した。本書の企画は、師である勝川春章(1726-1793)の友人であった鍬形蕙斎(くわがた・けいさい、1764-1824)の「諸職画鑑(しょしょくえかがみ)」(1794年)や「略画式」(1795年から1799年)などから着想を得たと言われている。

一枚摺の浮世絵は安いものと巷間言われるが、半紙本は決して安いものではなかった。北斎研究家の永田生慈(1951-2018)が、版元の名古屋の永楽屋東四郎に、値段を伺ったが、「当時(幕末明初)の出版物は猛烈に高くて、普通の人が簡単に本を買いましょうという値段ではなかった」と証言している。

シーボルト(Philipp Franz Balthasar von Siebold、1796-1866)が1832年にオランダで発刊した「Japonica(ジャポニカ)」に「漫画」が紹介されており、それ以前からオランダには、北斎による日本人男女の一生を描いた巻子が伝わっている。

出口雄樹さんは1986年福岡県生まれ、2011年に東京芸術大学美術学部絵画科日本画専攻を卒業、2013年に同大学大学院美術研究科日本画専攻修士課程を修了、2013年から2019年までアメリカ・ニューヨークを拠点に制作し、現在は京都にスタジオを移し制作している。

2012年に三菱商事アートゲートプログラム奨学生に選ばれ、2015年に朝日新聞文化財団の助成を受け、2015年に国際交流基金の助成を受け、2018年に吉野石膏美術振興財団の国際交流の助成を受け、2021年に野村財団の助成を受けている。2020年より京都芸術大学専任講師、神奈川歯科大学特任教授を務めている。

開場時間は10時から19時(最終日は17時)。