蔦屋書店で松井えり菜展、池袋アトリエを銀座に、化粧品を絵の具に

【銀座新聞ニュース=2021年11月65日】書店やレンタル店、フランチャイズ事業などを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(渋谷区南平台町16-17、渋谷ガーデンタワー)グループの銀座 蔦屋書店(中央区銀座6-10-1、GINZA SIX、03-3575-7755)は11月27日から12月17日までアートウォール・ギャラリーで松井えり菜さんによる個展「池袋だよ!アトリエ ドゥ マツイ エリナ」展を開く。

銀座 蔦屋書店で11月27日から12月17日まで開かれる松井えり菜さんの個展「池袋だよ!アトリエ ドゥ マツイ エリナ」展に出品される「私とあの子のオートマツィスムー食物連鎖」(紙、化粧品、メディウム、クレヨン、2021年)。

今回は、銀座 蔦屋書店が気鋭アーティストを特集する展覧会シリーズ「銀座 蔦屋書店ART PARTY(アートパーティ)」の第13回目の個展で、画家の松井えり菜さんを取り上げる。

松井えり菜さんは絵画における自画像をコミュニケーションツールとして用いながら、自画像表現の可能性を模索し続けており、直接的に顔を描写する表現に留まらず、幼少期に油絵に触れるきっかけとなった西洋画と少女マンガをコマ割りで繋ぎ合わせる「古典回帰」シリーズ、今を生きる女性の感情を可視化する層を描いた「レイヤー」シリーズ、自身の分身ともいえるウーパールーパーをモチーフにしたシリーズなど、幅広く制作している。

今回は松井えり菜さんのアトリエをイメージした新作展で、現在アトリエを構えている池袋に、90年前に「池袋モンパルナス」と名付けられたアトリエ村があり、そこからインスピレーションを受けた、過去と現在の観念が混ざり合う松井自身のアトリエを、銀座の地に創出している。

また、今回の新作では廃棄される化粧品の顔料を元にした絵の具を使用するなどSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みも行っている。「食物連鎖など環境に関する作品を制作することも多く、絵を描くという一見個人的とも捉えられる行為から、少しでも地球環境保全に貢献したい」という松井えり菜さんの願いが込められているとしている。

ウイキペディアによると、池袋モンパルナスは大正(1912年7月30日から1926年12月25日)の終わり頃から第2次世界大戦(1939年9月1日から1945年9月2日)の終戦頃にかけて、東京都豊島区西池袋、椎名町、千早町、長崎、南長崎、要町周辺にいくつものアトリエ村(貸し住居付きアトリエ群)が存在し、多くの芸術家が暮らし、芸術活動の拠点としていた地域の呼称であり、この地域に暮らした画家、音楽家、詩人などさまざまな種類の芸術家が行った芸術活動もさす。

アトリエ村文化が栄えた場所が池袋を中心とした繁華街であった。岡本一平(1886-1948)が「新宿オンパレード」(1933年8月30日)の中で、1929年から1932年にかけてのヨーロッパ滞在の経験に基づき、「銀座をモンマルトルとすれば、新宿はモンパルナス」と述べ、小熊秀雄(1901-1940)が「サンデー毎日」1938年7月31日のエッセイ「池袋モンパルナス」と書いている。

しかし、「池袋モンパルナス」の名は一般化されず、1925年にはパリのモンパルナス地区で、のちの独立美術協会となる1930年協会のメンバーによって、その会名に「モンパルナス会」などが候補としてあがったが、結局1926年に「1930年協会」として発足した。

1940年頃にこの活動は頂点に達するが、戦況の悪化により、多くの芸術家が戦争で召集され、疎開し、さらに1945年4月13日の空襲で打撃を受け、終息していく。戦後は、戦争で家を失った人々が入居し、残存した芸術家に新たな芸術家も加わり前衛美術運動の拠点ともなる。安部公房(1924-1993)、勅使河原宏(1927-2001)、瀬木慎一(1931-2011)らが出入りした。

近年、豊島区立熊谷守一美術館やアトリエ村資料室などができ、新たな芸術観光スポットとして「池袋モンパルナス」という言葉も使われるようになっている。劇団「銅鑼」が1997年に舞台化し(1999年、2016年再演)、池袋演劇祭大賞を受賞し、この公演をきっかけに「池袋モンパルナスの会」が結成されている。

松井えり菜さんは池袋モンパルナスと名付けられた地で、2021年現在、そのエリアで制作をしている。「以前から小さな発見や面白さをモチーフに自画像を描いてきましたが、アトリエのある土地を取りまく歴史を考えながらの制作は、私の創作の幅を広げてくれる」と考えている。

「息子が描いた無意識の線に私の意識を介入させて一つの絵画にする試み、シュールリアリズムのオートマティスムならぬ“オートマツィスム”を実践したドローイングシリーズ、日本独自の洋画の祖とも言える高橋由一(ゆいち、1828-1894)の絵画と私の意識が混入するオマージュ作品シリーズなど、数十年前の観念と現在の意識が混ざり合い、新しいものと古いものが同時に混在するタイムカプセルのような池袋のアトリエを銀座に再現」するとしている。

松井えり菜さんは1984年岡山県生まれ、2004年に「GEISAI#6(第6回ゲイサイ)」で金賞、シェル美術賞展で入選、2006年にフィンランド・ヘルシンキ芸術デザイン大学に短期留学、2008年に多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻を卒業、福沢一郎賞を受賞、2010年に東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻油画を修了、岡山県新進美術家育成「I氏賞」大賞、2012年から2013年に24年度文化庁新進芸術家海外研修員としてドイツ・クンストラーハウス・ベタニエンで研修し、クンストラーハウス・ベタニエンで個展を開いている。

開場時間は10時30分から22時30分(最終日は20時)まで。入場は無料。