ウルトラマン好きには”ラブレター”となる「シン・ウルトラマン」(342)

【ケイシーの映画冗報=2022年5月26日】巨大不明生物“禍威獣=かいじゅう”が幾度となく現れ、国土を脅かされている日本。政府はその対策として、禍威獣特設対策室、略して“禍特対=かとくたい”を少数精鋭のチームとして発足させ、防衛省から出向したきた田村君男(演じるのは西島秀俊)を責任者に据えて、対応させていました。

現在、一般公開されている「シン・ウルトラマン」((C)2021「シン・ウルトラマン」製作委員会(C)円谷プロ)。初代ウルトラマンのデザインを担当した成田亨の意に反して、カラータイマー、瞳と言われるのぞき穴が作られた。成田は粘土造形による形出しにし、試行錯誤の後、日本初の巨大宇宙人ヒーロー「ウルトラマン」は、1尺サイズの粘土原型の形で完成したため、デザイン決定稿は存在しない。

禍威獣ネロンガの猛威によって、日本の電力供給に危機が迫ったとき、宇宙からあらわれた銀色の巨人がネロンガの前に立ちふさがります。人知を超えたパワーでネロンガをたおした巨人は、空の彼方へ消えていくのでした。

“禍特対”に新たに加わった公安局出身の浅見弘子(演じるのは長澤まさみ)はその銀色の巨人に“ウルトラマン”の仮称をあたえます。やがて、驚異の存在は“禍威獣”だけでなく、宇宙から訪れた“外星人”も日本に降り立ち、“禍特対”や日本政府と接触することになります。

圧倒的な“外星人”のテクノロジーを訝しみながらも積極活用しようとする政府の思惑に振り回されながら、“外星人”の真の目的を探る“禍特対”のメンバーたち。地球の人類が全宇宙にとって、どのような存在なのか。そして、ウルトラマンと同化した“禍特対”の神永新二(演じるのは斎藤工)の運命とは。そして、地球人類に迫る絶対の危機。

1966年に放送が開始された「ウルトラマン」は、日本だけでなく、世界中にファンを生み出しています。1980年代のプエルトリコで、一番有名な日本人は“ウルトラマン”(テレビ放送されていたので)だったそうです。

放送開始から55年を過ぎ、いまや親子3代のファンもいる「ウルトラシリーズ」は、現在も新作が放送されていますが、その原典はやはり、最初の作品です。

「シン・ゴジラ」(2016年)をヒットさせた企画・脚本の庵野秀明と監督の樋口真嗣による「空想特撮映画」(初期のウルトラシリーズは「空想特撮シリーズ」と称していました)、その根幹はどこにあるのでしょうか。

庵野によれば、「ウルトラマンにさほど興味もなく、名前を知っているだけの人にも興行的に届く可能性を上げた企画内容と脚本を目指しました」(「シン・ウルトラマンデザインワークス」より)というものだそうです。

本作で描かれるウルトラマンは、デザインした成田亨(とおる、1929ー2002)が理想とした“真実と正義と美の化身”であり、まさに原典回帰といえます。

初期ウルトラシリーズで全体の構成や脚本を手がけた金城哲夫(1938-1976)のもとめる“スマートな格好いい宇宙人”を具現化するために、「単純化の極致」をもとめたのでした。結果的には当時の映像表現のレベルやテレビ番組としての要求から、妥協点としてのキャラクター表現となったのですが。

「成田享氏の描きたかった本来の姿に出来るだけ近づけてみたい」(「前掲誌」)という庵野の狙いどおりのウルトラマンが登場した予告編を見たとき、素直に感嘆しました。CGで造形された表現なので、過去のウルトラマンとは異なった映像でしたが、成田享に伺ったとき、
「理想とする作品はまず、できない」と語っていたことを想いだしました。成田が理想としたウルトラマンは、「要らないものを削って削って(中略)単純でなければならなかったのです」(「成田享作品集」より)

55年の時を経て、ようやく本来の姿を見せてくれたのです。その戦い方も、ウルトラマン第1作(ウルトラ作戦第1号)の脚本にこう記されています。
「岩をブッつけ合ったり・・・その岩が強力電気でコナゴナにフッとんだり・・・ガッチリと組み合って、ゴロゴロと転げ廻ったり・・・それにつれて立木が雑草の如くなぎ倒される」(「金城哲夫シナリオ選集」より)

こちらもさまざまな理由により、十全な映像とはなっていなかったのですが、本作では存分に披露されます。

こうした状況を充分に理解されているはずの庵野・樋口コンビの作品なので「シン・ウルトラマン」は自分にとって、純粋に楽しく鑑賞することができました。白状しますと、かつて「ウルトラマン」関連のお仕事に関わっていたことがあり、当時のスタッフさんから貴重なお話を伺っております。

前述のように“生みの親”の成田享ともお話をさせていただきました。ほとんど本編に触れてはおりませんが(いわゆる“ネタバレ”が続出しそうなので)、ウルトラマン好きとして、単なるラブレターとなっているやもしれません。そしてそれは、本作の製作陣にとっても同様なのだと空想しています。次回は「トップガン マーヴェリック」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。

編集注:ウイキペディアによると、「ウルトラマン」は1966年7月17日から1967年4月9日まで、TBS系列で全39話が放送された、TBSと円谷プロダクション制作の特撮テレビドラマで、その作中に登場する巨大変身ヒーローの名称でもある。TBSにて最初にカラーで放送された特撮テレビ番組で、「ウルトラQ」(1966年1月2日から7月3日まで放送)放送中の1966年4月1日にマスコミに公開された。

「ウルトラQ」に続く「空想特撮シリーズ」の第2作として、「ウルトラQ」の世界観を継承する番組として制作・放映された。

物語の骨子は科学特捜隊のハヤタ隊員は小型ビートルで青い球体と赤い球体を追跡するが、赤い球体と衝突したうえに墜落死してしまう。赤い球体の正体はウルトラマンで、M78星雲人の彼は、宇宙の墓場への護送中に逃亡した宇宙怪獣ベムラー(青い球体の正体)を追って地球までやって来た。

自分の不注意でハヤタを死なせたことに対する罪の意識からウルトラマンは、ハヤタに自分の命を分け与えて地球の平和を守るために戦うことを決意。こうして、ウルトラマンとハヤタは一心同体となった。以後、ハヤタはベーターカプセルを点火させてウルトラマンに変身し、怪獣や宇宙人と戦う。

本作品の企画が始動したのは、1965年8月ごろのことで、TBSプロデューサーの栫井巍(かこい・たかし)と円谷特技プロ企画文芸部室長・金城哲夫(1938-1976)が中心となってさまざまなアイデアを出している。

「シン・ウルトラマン」は1966年に放送された特撮テレビドラマ「ウルトラマン」を現在の時代に置き換えた「リブート」映画であり、タイトルロゴには「空想特撮映画」と表記されている。また、登場するウルトラマンのデザインは、成田亨が1983年に描いた絵画「真実と正義と美の化身」がコンセプトとなっている。