息子のラッパーにインタビュー、抱負は福井でライブ(102、特別編)

(著者がインドから帰国したので、タイトルを「インドからの帰国記」としています。連載の回数はそのまま継続しています。今回は帰国記を休んで、特別編をお送りします)
【モハンティ三智江のインドからの帰国記=2022年7月22日】インドで人気の日印混血ラップスター、わが息子でもあるRapper Big Deal(ラッパー・ビッグ・ディール)がさる5月10日から22日、ドバイ在住のガールフレンド(エミレーツ航空のCA)に会うために、パンデミック(世界的大流行)下の海外旅行を試みたので、その顛末をお送りしたい(著者注:エミレーツ航空はドバイベースの81カ国144都市に就航する世界トップクラスの航空会社で、インド北東部出身のディールのガールフレンド、ケリー(Kheli)はインド国内航空のCAから世界で就職するのが1番難しいと言われるエミレーツへの転職に成功、今はドバイに住んでいる)。

ドバイにある世界一高いビルとして名を馳せる、ブルジュ・ハリファ。163階、828メートルという高さのみならず、壮麗なデザインが目を惹き、中東のハブ・ドバイの象徴。

以下、母であるインタビュアの私(M)と、チャットでやり取りした彼(D)との一問一答をお届けする。

M ドバイまで利用した航空会社と所要時間、値段、日程とともに、世界的にパンデミックが終息していない現状で、出入国に問題はありませんでしたか。陰性証明の有無、マスクの着用義務などについて教えてください。

D 僕がベースとしている南インドのIT都市バンガロール(Bangalore)の国際空港から、IndiGoエア(編集注:インディゴ、2006年設立の格安航空会社、2017年にインド最大の航空会社にまで成長)で約5時間、往復の航空券で2万5000ルピー(約4万2500円)、日程は5月10日から22日まで、出入国に陰性証明書は必須で、空港や機内ではマスク着でしたが、街中はマスクフリー、出入国にはなんの問題もなく、スムーズでした。ひとつには、僕か日本のパスポート所有者だったこともあると思います。インドに再入国するのも、至ってスムーズでした。

M ドバイの第1印象は?

D 空港のソフィスティケートされた威容、ベスト・アルコールコレクションともいうべき、名だたる洋酒が揃っている巨大免税店には圧倒されました。メトロで中心街と繋がっているのも印象的でした。街中は高層ビルやモールが林立していて、インドよりずっと発展し、インフラが整っていることに驚きました。インド移民が多くて、僕に言わせれば、ドバイは未来の発展したインドヴァージョンって感じ、アラブ文化、イスラム的なものは、あまり感じなかった。ただ物価がインドの10倍で超コスト高で、参ったよ。

M もっとも心に残った場所は?

エミレーツ航空の5スター級アコモデーション、彼女のコンドミニアムでは、ドイツの養命酒(56種のハーブ)イエガーマイスターと、ココナッツラムとパイナップルの手製カクテルがウエルカムドリンクに。

D 世界一高いタワービル(828メートル)、「ブルジュ・ハリファ(Burj Khalifa)」です。壮大で美しい、壮麗さに感銘を受けました。あと、世界最大級のショッピングモール、「ドバイモール」でも、摩天楼を背景に彼女とお茶を楽しんだよ(Joe’s cafe=ジョーズ・カフェ=の写真は前号に掲載)。

M 楽しかった思い出は?

D エミレーツ航空から割り当てられた彼女の職員用コンドミニアムが、5スター級のゴージャスさで、優雅で贅沢な時間を共に過ごせたこと。

M 食事はどうでしたか?

D アラブ料理にはトライしなかったけど、フィリピン料理レストラン「Dampa(ダンパ)」で食べたシーフードが最高だった。あと、ブルジュ・ハリファの122階にある世界一の高層クラブ「Atmosphere(アトモスフィア)」が夜景の美しさとカクテルで、カップルにはムード満点、よかったよ。ビーチももちろん、サイコーだった。インドからだと、5時間と、海外と言っても、比較的近距離だし、出稼ぎ移民が多いのも、納得だよ。

M ドバイの人口の90%は、インドやパキスタン、バングラデシュ、フィリピンからの出稼ぎ労働者、南のケララ州からの出稼ぎ者が主に建築現場の肉体労働に携わって、外貨送金、中東に一員を出稼ぎに送っている家族は成金、御殿が林立している一角があると聞いたけど(著者注:アラブ首長国連邦やサウジアラビア、クウェートなどの湾岸諸国へのインド・ケララ州からの出稼ぎ者は約350万人、インド本国への送金は年間68億ドル(1ドル=120円換算で約8840億円)にものぼる。1972年から1983年にかけてガルフブームが起こり、大挙してケララ州民が中東へ移民流出した)。

ブルジュ・ハリファの122階に入っている世界一の高層クラブ「Atmosphere(アトモスフィア)」にて、彼女と。ちなみにドリンク1杯、日本円にして約4250円と、値段も超高級!

D なるほど。インドより10倍物価高だから、送金した外貨で成金御殿も建ち並ぶだろうね。

M 2年以上のダークイヤー(コロナ禍で音楽活動停止、オディシャ州プリー=Odisha Puri=に退避帰省を余儀なくされた)の後で、楽しい思いができてよかったね。またひとつ海外渡航歴が増えて、いい経験になったね。次にドバイを再訪する機会があったら、富裕エリアだけでなく、オールドスーク(マーケット)、貧しい出稼ぎ者用の旧態依然の市場も覗いてみると、楽しいかもしれないね。リッチな表の顔の裏でプアが共存している、それも超リッチと思われているオイル国家・アラブ首長国連邦の最大ハブ・ドバイの別の一面、旅の醍醐味だよ。いつか、ドバイでショーもやってよ。楽しみにしてます。

D そうなることを祈るよ。まずはもうひとつの母国・日本で。我が愛する福井でライブにトライしたい。日本のラッパーとのコラボも考えています。僕の夢は、インドと日本の掛け橋になって、インド人には日本旅行を、日本人にはインド旅行と、双方の観光促進、交流に貢献できるブランドアンバサダーになること。日印混血ラッパーだからできる、音楽を通しての交流、僕の日英ミックスラップが、双方の友好を深める手立てとして使えたら、こんなうれしいことはないよ。

M グレイト!素晴らしい夢が実現するよう祈っています。最後に、日本のファンに一言。

フィリピン料理レストラン「Dampa Seafood Grill(ダンパ・シーフード・グリル)」(Centurion Star Hotel=センチュリオン・スター・ホテル=の1階)にて、ボリュームたっぷりのシーフードを前に、がつがつ食べるぞといわんばかりにポーズをするRapper Big Deal。ちなみに、手で食べるのはインド人なら、お手のもの。

D 今、日本語を学んでいるので、日英ミックスラップの新作にも期待してください。来年こそは、我が愛しのFukuiでのライブが実現するよう祈っていてください。インバウンド(海外から日本への旅行客)向けの観光需要が回復するように、名所振興のラップを作って、打撃を受けた地元の観光業者を応援したいです。コロナ後の復活ライブ、期待していてね。いつも応援ありがとう。これからも、御支援のほどくれぐれもよろしくお願いします。サンキュー!!

※ディール・メモ

1989年インド東部のオディシャ州プリー生まれ、13歳の時、インド北東部の避暑地ダージリンの寄宿舎へ。そこで英語力を磨き、先輩からラップ洗礼、アメリカの有名ラッパー(Eminem、1972年生まれ)に心酔する。

大学は南インドのIT都市バンガロールに進み、IT専攻、続いて大学院で修士課程を修了、卒業後は米外資系IT企業に勤め、2年で辞職、プロのラッパーの道を目指す。2017年に初のCD「One kid with a dream(ワン・キッド・ウイズ・ア・ドリーム)」をリリース(全7曲の作詞作曲は本人)、インドのラップブームの波に乗って人気が急上昇した。

特に地元オディシャ州では人気が高く、母州語オリヤラップが大ヒット、英語のみならずヒンディー語、一部日本語ミックスのラップも公開、インドならではのマルチ言語ラップと、特に作詞(リリツクス)には定評がある。

〇「Are you Indian?」、視聴回数371万突破の快挙、スーパードゥーパーヒットを記録!
数あるディールのラップ動画で最高視聴回数を記録した「Are you Indian?」は、インド国内の民族差別問題を扱ったメッセージ性の高い作品で、インド国内のみならずアジアはじめの世界各国の視聴者にも人気絶頂のグローバルラップ、ぜひ覗いて頂きたい(映像はyoutu.be/SrE615BLB20、いずれもURLの前に「https://」を入れる)。

〇MTV Indiaのパフォーマンス
日本でもポピュラーなニューヨークベースの音楽専門チャンネル、MTVのインド版に出演した動画も根強い人気(映像はyoutu.be/o3WvEvhRukY)。

〇新作リリース
7月2日にリリースした「Kalia Remix」は、翌3日にはInstagramで30万突破の視聴回数をマーク(www.instagram.com/reel/CfavpYQpYbq/?igshid=YmMyMTA2M2Y=)。

〇3万人ライブ
4月に地元オディシャ州のアングル(Angul)で、初の3万人ライブを達成、コロナ終息後のファンに熱狂的に迎えられた。ちなみに、日本の武道館の収容人員が1万5000人弱なので、その2倍という、ディールにとってもビッゲストショーだったことになる。パンデミックでせき止められていた若者のラップ熱が一気に噴き出した感じだった。
以下、3万人ライブの中継ビデオ(youtu.be/zQaZx92wLmY)。

〇今後のライブ予定
オディシャ州を中心に全土で、勢力的に展開、2年間の停止の穴埋めに待ちかねたファンには大サービス!