ヴァニラで髙木智広、KCN、猫将軍、山本翔ら「世界の終わり」展

【銀座新聞ニュース=2022年9月30日】ヴァニラ画廊(中央区銀座8-10-7、東成ビル、03-5568-1233)は10月1日から16日まで「Breath in the End World」を開く。

ヴァニラ画廊で10月1日から16日まで開かれる「Breath in the End World(ブレス・イン・ジ・エンド・ワールド)」のフライヤー。

コロナウイルス感染症の拡大という災難が訪れて、早3年が経ち、目には見えないものの力で、日常がことごとく破壊され、終わりが見えない混沌の最中にある中で、アーティストたちは何を目撃し、何を信じ、そしてどんな世界を生み出すのか。16人の作家が作品を展示する。油彩、陶芸、彫刻、デジタルアートなど多彩な手法でこの世を象り、再生への道筋を示すとしている。

出品者の髙木智広さんは「当事者として見る世界の終わりとはどんな景色なのか。終わりとは何なのか。それは己の命が燃え尽きることか、肉体が朽ちることか、大切なものを失うことか、真っ暗闇か…だんだんと自分という概念が消えていくことは心地よくも感じ、恐ろしい」としている。

さらに、「このような暗黒の時代は長い歴史の中で幾度となく訪れ、芸術家はその時代に感じたことを作品に投影した」とし、過去の画家の例を挙げている。

16世紀のブラバント公国(現在のオランダ)の画家、ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude、1525-1530頃生-1569)は「ペストの流行を死の勝利という絵に描いた。それは現在の私達にはとてもリアルに感じられる」。

スペインのマラガ生まれ、フランスで制作活動をした画家、ピカソ(Pablo Ruiz Picasso、1881-1973)の「ゲルニカ」(1937年)や日本の画家、フジタ(レオナール・ツグハル・フジタ、Leonard Tsugouharu Foujita、1886-1968)の「アッツ島玉砕」(1943年)などは「戦争の悲劇を伝え続けている」。直接悲劇を描かなくとも、フランス人画家、ルドン(Odilon Redon、1840-1916)の「夢想的な絵はその時代の不穏さを伝える」。

「芸術作品は時代の鏡なのである。今の時代に何を作るべきか。この『世界の終わり』の展覧会ではこの時代を生きる作家たちが感じたリアルを展示」する。

今回、出品するのは画家の髙木智広さん、写真家の池谷友秀さん、画家のキジメッカさん、台湾のマンガ、イラスト、美術デザインを手掛けるイラストレーターのKCN(ケーシーエヌ)さん、アメリカ・サンフランシスコの4人のアーティスト集団「Cosmic Debris(創作したキャラクターが「コズミック・デブリ」)」、彫刻家の櫻井結祈子さん、イラストレーターの髙橋美貴さん。

「フォトスタジオ大羊堂」(新宿区新宿6-8-5、新宿山崎ビル、03-6302-1779)の代表で、写真家、女装コーディネーターの立花奈央子さん、彫刻家の千葉和成さん、イラストレーターの猫将軍さん、画家の福山フキオさん、造形作家の松岡ミチヒロさん、粘土造形作家の山本翔さん、画家の横野健一さん。

また、ベルギーの版画家、フェリシアン・ロップス(ス(Felicien Rops、1833-1898)、リトアニア生まれ、ドイツの画家、フリードリヒ・シュレーダー・ゾンネンシュターン(Friedrich Schroder-Sonnenstern、1892-1982)の作品も出品される。

髙木智広さんは1972年岐阜県生まれ、1992年に武蔵野美術大学短期大学部美術科を卒業、1995年にフランスにわたり、古典絵画技法を研究、パリ自然史博物館で動物骨格を研究し、1997年に帰国、2006年に個展を開き、2010年に第29回損保ジャパン美術財団選抜奨励展に出品、2012年に第15回岡本太郎(おかもと・たろう)現代芸術賞(川崎市岡本太郎美術館)を受賞、2015年にヴァニラ画廊で個展を開き、2017年にニューヨークのギャラリー小暮で個展を開いている。

池谷友秀さんは1974年神奈川県小田原市生まれ、1992年から1999年までレストランで働き、2001年に東京総合写真専門学校を卒業、2002年に「キャラッツ」勤務を経て、2002年に独立し、広告、CDジャケット、エディトリアル撮影を中心にムービーも手掛ける。2007年に「IPA」で1位、2008年に「PX3」で名誉賞、2010年に「xto」で1位、「PX3」で2位、2012年に「IPA」で2位などを受賞している。

キジメッカさんは1967年東京都生まれ、16歳より独学で油絵をはじめ、大学法学部を中退、さまざまな職を経て、1991年にアメリカ・レーベルのノイズコンピレーションCD、ビデオアートコンピレーションなどに参加し、その後、創作活動をやめて会社員となり、2000年に創作活動を再開した。

2003年より国内外のグループ展に参加し、ヴァニラ画廊での個展は2004年から2015年の間に複数開き、「SMスナイパー」の巻頭連載を経て、2007年に劇場映画「探偵物語」内で作品が使用される。2014年に活動を中止し、再度会社員となり、2020年にコロナ禍による社会不安に触発されて創作意欲が出てきて、4月よりキジメッカを再度始動している。

KCNさんは台湾で生まれ育ち、マンガ、イラスト、美術デザインと幅広く手掛け、独学で幼少時より制作を行う。KCNは科学元素を引き合いに出しながら、多文化社会の中で受けた直感的なフィーリングとその社会が孕む暗黒面を強調した世界観を創作している。

2007年に「周期表」展、2010年に「エッジ(edge)アニメとマンガ芸術展@台湾特展」、2012年に「台湾青酸カリ」展、2013年に「霊啓武徳印 (れいけいぶとくいん)」連展、2016年にスチームパンク芸術:過去への未来世界 スペシャル展に出品、2016年に個展「帝国の曙」、2017年に「スチームバッグ展:二千年後の君へ」に出品、2018年にヴァニラ画廊特別企画展「幽霊画廊4-百物語」に出品している。

「コズミック・デブリ」はロブ・リーガー(Rob Reger)さんが設立したグループで、ジェシカ・グルーナー(Jessica Gruner)さん、「エミリー・ザ・ストレンジ」のコミック本、絵本、小説のイラストを描いているバズ・パーカー(Buzz Parker)さんら4人がメンバーという。いずれもカリフォルニア州に在住している。

桜井結祈子さんは1993年長野県生まれ、2016年に愛知県立芸術大学美術学部彫刻科を卒業、2018年に同大学大学院美術研究科彫刻領域を修了、2020年にヴァニラ画廊のグループ展に出品している。

髙橋美貴さんは東京都生まれ、1995年に武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科を卒業、ソニー・インタラクティブエンタテインメントにアーティストとして在籍し、日本を舞台にしたホラーゲームシリーズで「屍人・闇人」のデザインに携わり、2014年よりオリジナル作品を発表、「ベハンス・ワコム(Behance Wacom)」賞を受賞し、2016年にヴァニラ画廊大賞展に参加、2017年にヴァニラ画廊で個展を開いている。

立花奈央子さんは1982年千葉県生まれ、20歳頃からLGBT業界に携わり、特にトランスジェンダーや女装について造詣が深く、2009年3月に個展を開き、2010年に「コスプレイヤーのための2.5次元フォトレタッチガイド」を刊行、2011年に個展を開き、男の娘写真集「トラップ(TRAP)」を刊行、2013年に男の娘写真集「ゆりだんし」を刊行している。2010年から2013年まで合同展「ポートレート専科」に出展している。

千葉和成さんは1967年神奈川県生まれ、東京造形大学彫刻科を卒業、2000年ごろから制作を開始、2012年に福島第一原発の事故を描いた「ダンテ『神曲』現代解釈集」で、第15回岡本太郎現代芸術賞・敏子賞を受賞した。

猫将軍さんは1982年和歌山県生まれ、2004年にFM802の若手アーティスト発掘プロジェクト「ディグミーアウト(digmeout)」のオーディションを通過し、2006年に大阪で個展を開き、アメリカ・サンフランシスコなど海外でも活動し、2007年からニコニコ動画に「ライチ(laich)777」という名で、2次創作作品やその過程を動画として投稿し、氷室京介(ひむろ・きょうすけ)さんのアルバムCD「ウォリアーズ(WARRIORS)」のジャケットやロリポップチェーンソーのメインキャラクター、武器のデザインなどを手がけている。

福山フキオさんは1973年愛知県生まれ、1998年から個展を開いており、2002年に刈谷展(刈谷市美術館)で入選、三郎賞を受賞(2005年も入選)、2009年に第39回アメリカ美術賞展で入選し、2011年からヴァニラ画廊のグループ展に参加、2012年と2015年、2019年にヴァニラ画廊で個展を開いている。

松岡ミチヒロさんは1969年愛知県一宮市生まれ、非現実的な物でありながらも「実在しているかの様な」と錯覚させる不思議な作品を制作する。

山本翔さんは1982年福岡県福岡市生まれ、美術系の大学にてデザインを専攻、Macを使用したCGアートをはじめとして、学生時代はおもに昆虫など生物をモチーフとした平面作品を制作、大学院を修了後、CG会社にデザイナーとして勤務する傍ら、UMAや妖怪、幻獣など、架空の生物の立体作品を制作する粘土造形作家として活動している。

横野健一さんは1972年石川県生まれ、1997年に金沢美術工芸大学芸術学専攻を卒業、2003年に「GEISAIミュージアム」で逢坂恵理子賞、2005年に「GEISAI#7」で審査員特別賞(トム・エクルス賞)などを受賞している。

開場時間は12時から19時(土・日曜日、祝日、最終日は17時)。入場料はオンライン予約で800円、当日券1000円。会期中は無休。