非現実的ながらアクション俳優が魅せる「ジョンウィック4」(377)

【ケイシーの映画冗報=2023年9月28日】2014年、ひとつのアクション映画シリーズが生まれました。引退した伝説の殺し屋が、愛犬を失ったことから復讐の鬼となり、相手のロシアン・マフィアを全滅させてしまうという「ジョン・ウィック」(John Wick)です。

現在、一般公開中の「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(R),TM&(C)2023Lions Gate Entertainment Inc.All Rights Reserved.)。

ハリウッドのアクション作品としては製作費2000万ドル(当時の邦貨で約20億円)とリーズナブルでしたが、孤高で寡黙な主人公ジョン・ウィックを魅力的に演じたキアヌ・リーブス(Keanu Reeves)の体を張ったアクションと、ケレン味たっぷりながら不思議な説得力のある“ガン・フー”という射撃と格闘技を融合した戦闘シーンが融合し、これまでに3作品が生まれました。

そして、この4作目「ジョン・ウィック:コンセクエンス」(原題・John Wick:Chapter 4)の製作費は1億ドル(およそ150億円)とスケール・アップしています。伝説の殺し屋ジョン・ウィックは、裏社会の組織“主席連合”のルールを破ったことで賞金首となり、若き野心家であるグラモン侯爵(演じるのはビル・スカルスガルド=Bill Skarsgard)から執拗に狙われます。

世界各地にある殺し屋専門の高級ホテルのひとつ“大阪コンチネンタル”の支配人である旧友のシマヅ(演じるのは真田広之)を頼ったジョンでしたが、侯爵はそこにも暗殺部隊を送り込みます。そのなかには、ジョンと同じく引退していた盲目だが戦闘の達人ケイン(演じるのはドニー・イェン=Donnie Yen)もいました。

奇しくも血戦の場で相対するジョンと彼を狙うケイン、そしてホテルとジョンを守ろうとするシマヅ。ジョンはシマヅの手引きで大阪を脱出しますが、凄絶な一騎討ちでシマヅはケインに討ち取られます。娘のアキラ(演じるのはリナ・サワヤマ)の目の前で。

「グラモン侯爵を決闘で斃(たお)すことができれば自由となる」ことを知ったジョンは、彼のいるパリに向かう決意を固めるのでした。

1作目からつづけて監督を務めるチャド・スタエルスキ(Chad Stahelski)は、スタント・マン出身で、過去作でキアヌ・リーブスのスタントを担当したことから強いきずなで結ばれたそうです。両人ともアクション映画や日本のエンターテインメント作品に造詣がふかく、まさに両輪の関係で本シリーズを生み出しています。

「チャドが料理長で、僕は副料理長。ふたりして食材を掻き集めるところから作っていく」とキアヌは語っていて「特に今回は、ご馳走だよ」とも述べています。

本作の上映時間は2時間49分とアクション映画としては長尺となっていますが、戦闘シーンは64分、クライマックスの決闘シークエンスが14分と、全体の3分の1以上がアクションとなっています。

主な撮影はドイツだったそうですが、前半ではメインの戦いとなる“大阪コンチネンタル”で使用するシーンのために、公開時期を延伸させても大阪でのロケを組んだという、スタエルスキ監督の日本への気持ちは本物でしょう。監督は自身の志向をこう語っています。
「僕は旅が好きだし、人が好きだし、ファッションも、武術も、犬も好きだ。そういう自分の好きなものを片っ端から映画に放りこんで見せびらかしているんだよ」と。これでは“独りよがり”のようですが、続きがあります。
「そして世の中にはきっと、同じようなものが好きな人が大勢いるということじゃないかな」(いずれもパンフレットより)

主演のキアヌやスタエルスキ監督の好みがこのシリーズに色濃く反映されていることは、大阪での戦いで襲ってくる武装集団は黒づくめで、エンターテインメントにおけるニンジャのイメージが感じられます。迎え撃つシマヅの配下は銃も使いますが、カタナや手裏剣が登場しますし、ニンジャを力士がなぎ倒したり、シマヅの娘アキラは弓矢と格闘技で銃弾に立ち向かいます。実際の戦闘となると、銃器が圧倒的に有利なはずですが、本シリーズの世界は充分に戦えるのです。

そして、これまで近代的な銃器から博物館の展示品、はてはエンピツまであやつってきたジョンは今回、ヌンチャクまで駆使しています。こちらも“実用性”という意味では有用ではありませんが、映画のアクション・シーンとしては充分に見栄えがありました。

こういったファンタジックな要素がある一方で、主演のキアヌは本格的に格闘技を学んでおり、シマヅ役の真田広之、ケイン役のドニー・イェンはともに最高峰に位置するアクション・スターとして見事な戦いをみせています。アクションというジャンルにかぎらず、映画好きならなら楽しめるに違いありません。次回は「イコライザー THE FINAL」の予定です(敬称略。【ケイシーの映画冗報】は映画通のケイシーさんが映画をテーマにして自由に書きます。時には最新作の紹介になることや、過去の作品に言及することもあります。隔週木曜日に掲載します。また、画像の説明、編集注は著者と関係ありません)。