【銀座新聞ニュース=2023年11月7日】MEDEL GALLERY SHU(千代田区内幸町1-1-1、帝国ホテルプラザ、03-6550-8111)は11月7日から19日まで稲葉朗さんによる個展「ヨソユキ」を開く。
彫刻家の稲葉朗(あきら)さん「ヨソユキ」と題して、「Half(ハーフ)シリーズ」と「Phone(フォン)シリーズ」の作品を展示する。「ヨソユキ」というタイトルは人は外見だけでなく、内面においても「ヨソユキ」になることがあり、その「ヨソユキ」では隠しきれない溢れ出る気持ちを女性像に投影した作品を展示する。
「Halfシリーズ」は、実際には見えない複雑な内面を半身部分や服装に組み込み、心や気持ちを具現化もしくは抽象化した作品で、外見とは違う、不安定でありながら力強い部分もある矛盾した女性像を表現している。「泥ハーフ」や「ヌルハーフ」など、テクスチャーや触感を表現するディテールを持つ作品も特徴的としている。
一方、「Phoneシリーズ」は、生活の中で必需品となっている「Phone」が付く電化製品(例えば、電話や音楽再生機)を身に着け、一見独りぼっちのようであっても実は他人と繋がっている様を表現している。現代を象徴する電化製品と若者の存在をモデルにして、移り変わっていく「現代」も表しており、動き自体は少ない代わりに、屋外でたたずんでいることを連想できるように風が吹いている場面も表現している。
稲葉朗さんは「元々アートと呼ばれている物との距離を感じていた」という。「子どもの頃から母親が図工の教師だったこともあり、アートは身近で、母親の授業の実験台のようにいろいろな課題をやらされてきたが、その反動からか、アートは得意ではあったが、自分にとっての勉強のような少し億劫な存在でもあった」と過去を振り返っている。
しかし、「アートの中でも好きなものもあった。それは漫画やアニメのような生き生きとした動きや表情をした人物が出てくる作品」で、「その頃から人間という最も身近な存在こそが一番惹かれる存在」だった。「このような経験から人間の顔や身体の美しさと木材の持つ温かみや力強さを持った人物像を制作し始めた」という。
稲葉朗さんの作品にとって「感情や思い」は顔と仕草にあり、「リアルな作品を作りたいのではなく、理想像であり、心象像を目指している」としている。
稲葉朗さんは1980年東京都生まれ、2003年に東京造形大学彫刻専攻を卒業、2007年に同大学大学院彫刻専攻を修了、同年に茨城県芸術祭で特賞(2008年に特賞、2013年に会友賞)、ZOKEI(ゾウケイ)展でZOKEI賞、2008年に水戸市芸術祭で市長賞(2010年に市長賞)、2014年に二科展で彫刻の森美術館奨励賞(2017年に二科賞、2021年に会友賞)、2017年に「IAG Awords(IAGでアワード)2017」でアトリエムラギャラリー賞、「見参展2017」でIIDギャラリー賞を受賞している。2013年から個展を開き、2020年には台湾の「ART TAICHUNG 台中芸術博覧会」などに出品している。
開場時間は11時から19時(最終日は17時)。会期中は休みなし。