【銀座新聞ニュース=2024年3月3日】大手書籍販売グループの丸善CHIホールディングス(新宿区市谷左内町31-2)傘下の丸善ジュンク堂書店(中央区日本橋2-3-10)が運営する丸善・日本橋店(中央区日本橋2-3-10、03-6214-2001)は3月6日から12日まで1階、地下1階などで「第15回丸善 世界の万年筆展 展示即売会-心あたたまる手書きの時間」を開く。
丸善・日本橋店が2007年に全面改装し、3周年を記念して2010年から開いている恒例のイベントで、世界各国の名前の知られているブランドから国内の手づくり万年筆まで世界の万年筆メーカー21社の製品を展示販売する。また、ペンクリニックやインク作りなどのイベントも開く。
今回の限定品は、「仙台大橋堂」(宮城県仙台市青葉区中央3-8-5、新仙台駅前ビル、022-266-2332)が「本漆削り出し万年筆 星降夜」(税込16万5000円、限定15本)で、「3色の漆を重ね、最後に凹凸部分を削り出し、下地の色を見せた大橋堂らしい一本に螺鈿の輝きをもたせた納得の1本」としている。ペン先は21金、字幅はM(ミディアム、中字)のみ。
「セーラー万年筆」(墨田区江東橋4-26-5、東京トラフィック錦糸町ビル、03-3846-2651)が「キングプロフィット レッドアクア」(12万1000円、30本限定)で、セーラーのフラッグシップである「キングプロフィット」にマーブル樹脂で仕上げた丸善オリジナル万年筆で、「力強くうねるレッドマーブルと金色のパーツは堂々の風格」としている。ペン先は21金、字幅はM、B(ブロード、太)の2種類。
プラチナ万年筆の子会社、中屋万年筆(台東区東上野2-5-16、岩原ビル)が「ポータブル菖蒲廻り止め万年筆 日本橋」(12万6500円、限定20本)。深みと艶のある紫が特徴の菖蒲色に、初めて日本橋をモチーフとした廻り止めを取り付けている。ペン先は14金、字幅がMのみ。
「パイロットコーポレーション」(中央区京橋2-6-21、03-3538-3700)が「カスタムURUSHI(ウルシ)茜朱(あかね)」(15万4000円、限定70本)で、エボナイト軸に蝋色漆で仕上げたカスタムシリーズ最高峰の万年筆の丸善特製第4弾としている。前作の弁柄色と異なり、朱本来の落ち着きつつも際立つ赤みと、その中にある凛とした気品と艶を纏(まと)ったボディは圧倒的な存在感を漂わせている。ペン先は18金、字幅はFM(ファインミディアム、中細)、M、Bの3種類だが、すでにFMとBは売り切れ。
「笑暮屋(えぼや)」(荒川区荒川1-38-6、03-3891-5258)が「方舟型エボナイト万年筆Mサイズ 赤煉瓦」(5万5000円、限定20本)。笑暮屋の方舟型をベースに第15回を記念した日本橋オリジナルモデルで、日本橋のこの地にあった日本初、鉄骨建築の赤煉瓦作りの本社社屋をイメージし、軸には15個のレンガを刻んでいる。ペン先は14金、字幅がF(ファイン、細)、FM、M、Bの4種類。
2023年秋の万年筆フェアで発売した商品としては、「サンライズ貿易」(千代田区岩本町2-13-6、03-5833-7701)の「プロフェッショナルギア低重心モデル 舞いさくら」(6万3800円、限定100本、細い線から太い線まで強弱のある線が書ける太字のZは6万7100円)
)。同社のペンドクターの宍倉潔子(きよこ)さんが監修したオリジナルの配色を施した日本橋モデルの第5弾で、安定した筆記が魅力の低重心設計で、ラメ感も華やかに咲き始めから満開、桜舞う情景をペンに宿した。ペン先にはさくら通りの街灯をイメージした刻印が入る。ペン先は21金、字幅はEF(エキストラファイン、極細)、F、M、B、Z(ズーム、太字)の5種類。
また、丸善オリジナルインキで、1916(大正5)年から製造販売されている「丸善アテナインキ」の日本橋店限定の「日本橋 さくらもよう」(2200円、300個限定)を販売する。
ほかに、国内外の有名ブランド21社が特別の万年筆を販売する。ペリカンが朱漆に美しい光沢の螺鈿(らでん、貝を使った装飾技法)を市松模様に装飾した限定万年筆「市松」(26万4000円)を販売する。本体・キャップには、それぞれ作者名と限定番号を蒔絵の技法で描き込まれている。ペン先は18金で字幅はMのみ。
「デルタ」の後継ブランドとして2018年にイタリアに誕生したレオナルド オフィチーナイタリアーナ(LEONARDO OFFICINA ITALIANA)が「ブルーノクターン万年筆」(7万1500円)を出品する。「衣服を傷つけないように開発されたローリングウィールクリップや熟練の技術を持つ職人の手により1本ずつ情熱と手作りのぬくもりを感じさせ」る万年筆で、「ブルーノクターン」は夜の情景を表し、緩やかで夢想的な旋律が特徴の「夜想曲」から名づけられた。ペン先は14金で、字幅はF、M。
ドイツのディプロマットが「エクセレンスエーツー エバーグリーン万年筆」(6万9300円)を出品する。1922年にドイツ・ヘンネフにて創業したディプロマットは1958年にドイツでは初となるカートリッジ式の万年筆を導入し、今回は他メーカーにもあまり見られない深みのあるグリーンが特徴の万年筆を販売する。ペン先は14金で、字幅はF、M。
笑暮屋が棗(なつめ)Lサイズの軸色「神龍(しんりょう)」(5万2800円)を出品する。「神龍」はベージュ色と黒色のマーブルエボナイトが全体にあしらわれ、丁寧に磨き上げられている。ペン先は14金で、字幅はF、MF、M、Bから選べる。
パーカーが「デュオフォールドプレステージ アローGT センテニアル万年筆」(28万500円)を販売する。パーカーの伝統と革新のDNAを宿した製造期間限定の「アローコレクション」で、最高峰モデルの「デュオフォールド」は、キャップとクリップに磨き上げられた23金ゴールドプレートを採用している。ペン先は18金で字幅はF、M。
さらに、ウォーターマンの「メトロポリタンエッセンシャル ブラックブルーCT 万年筆」(2万3100円、ペン先はステンレススチール、字幅はFのみ)、呉竹の「万年毛筆千本桜」(3万6300円、ペン先は鼬毛=いたちけ=、字幅はFのみ)、パイロットコーポレーションの「カスタム会限定グランセマーブル万年筆」(2万7500円、ペン先は14金、字幅はF、M)、セーラー万年筆の「CYLINT万年筆パティナ ブラウンパティナ」(6万6000円、ペン先は21金、字幅はF、M、B)などもある。
ほかに、スペシャルモデルとしてONOTO(オノト)、丸善155周年記念万年筆「オノト マグナ ヘリテージ エボナイト マホガニー(レッドブラウン)、ナイトブルー(ダークブルー)」(14万3000円、各色50本ずつ限定、ペン先は18金、字幅はF、M、B)なども出品される。
ウイキペディアによると、「万年筆」は1809年に英国人がペン軸にインクを貯蔵するペンを発明し、特許を取得したのが最初とされ、1883年にアメリカの保険外交員ルイス・エドソン・ウォーターマン(Lewis Edson Waterman、1837-1901)が、調書にインクの染みを作ってしまい、契約を取り逃がしたことをきっかけとして、毛細管現象を応用したペン芯を発明したことが万年筆の基となった。
万年筆が日本に入ってきたのは1884(明治17)年で、横浜のバンダイン商会が輸入し、東京・日本橋の丸善などで販売された。当時は「針先泉筆(しんせんせんひつ)」と呼ばれ、「万年筆」と命名したのは、1884年に日本初の国産万年筆を模作した時計商の大野徳三郎(生没年不詳)と言われている。戦前は日本の万年筆製造が盛んで、1940(昭和15)年には世界生産量の50%を日本で生産したといわれている。
万年筆はペンとともに1960年代頃まで、手紙やはがき、公文書などを書くための筆記具として主流であったが、徐々にボールペンに取って代わられ、1970年代に公文書へのボールペンの使用が可能になり、また水性ボールペンが開発されたことにより、万年筆は事務用、実用筆記具としては利用されなくなっている。
英国のパーカー(Parker)などによると、パーカーは1888年にアメリカ人のジョージ・S・パーカー(George Safford Parker、1863-1937)がペンの特許を申請し、アメリカで筆記具の製造をはじめ、1894年にインク漏れを防止するインク供給システム「ラッキー・カーブ」を発明し、2件目の特許を取得、1906年に金とスターリングシルバーを使った「スネークペン」を発売、1914年に戦場の兵士のために作られた、乾燥した固形インクが装着され、水に浸すだけでインクの役割を果たし、すぐに書き出せる「トレンチペン」が誕生し、1918年に売上高100万ドルを達成した。
1921年にオレンジ色と25年保証の最高ライン「デュオフォールド(Duofold)」が発売され、1931年に3年間で1021回もの実験を経て開発した速乾性インク「クインク(Quink)」が発売され、1933年に「矢羽クリップ」(1957年からブランドの正式なアイコンとなる)を初採用し、当時の一般的なペンの2倍以上のインク容量とインク残量を目で確認できる「バキューマティック」が発売され、社長を引き継いだケネス・パーカー(Kenneth Parker)が1941年に創業51年を記念して「パーカー51」を発売し、1945年5月7日にドイツの降伏文書の調印にドワイト・D・アイゼンハワー(Dwight David Eisenhower、1890-1969)が「パーカー51」を使用した。
1954年にパーカー初のボールペン「ジョッター」が発売され、初年度に350万本を販売し、1962年に英王室から「ロイヤルワラント(王室御用達)」の称号を授かり、パーカーが英王室御用達となる。1987年にスターリングシルバーを使った4つの「パーカー75」モデルがカスタムメイドで登場し、12月8日に中距離核戦力全廃条約への調印の際に、アメリカ大統領のロナルド・レーガン(Ronald Wilson Reagan、1911-2004)と旧ソ連書記長のミハイル・ゴルバチョフ(Mikhail Sergeevich Gorbachev、1931-2022年8月30日)が「パーカー75」を使用した。
1987年に英国資本が入り、本部を英国に移転し、1993年にプロクター・アンド・ギャンブル傘下のジレット社が買収し、2000年にニューウェル・ラバーメイド・グループのオフィス用具部門のサンフォードの傘下になり、2009年に英国工場が閉鎖され、生産拠点がフランスとなっている。
開場時間は9時30分から20時30分(最終日は16時)まで。ほとんどの商品は電話で予約できる。